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週末の精霊使い  作者: DP
4.カオスの楽園
333/346

これから①


ミズホが身を離した事で背後に回された彼女の手も離れたため、支えを失った俺の体は力の抜けた足では支えきることができず、ペタンと尻もちをついてしまった。


火照った体にスカート越しにコンクリートの冷たさが浸透してくるが、それにも反応できずにぽーっとしてしまう。


「……ユージン、大丈夫?」


ミズホが膝をつきこちらの顔を覗き込んで来たので、ジト目でその視線を見返す。


「なんだよ、今の……」

「何って、キスだけど? キスするの初めてだった?」

「いや、初めてではないけどさ……」


一応学生時代にキス位は経験してるけど、こんな噛みつかれるようなキスは当然経験なんてしていない。

後こっちに来て以降は彼女なんて作っている余裕もなかったため、キス自体久々ではあるけれども。


「最初はもっと触れる程度のが良かったかしら?」

「……正直予想していたのはそっちだった」

「でもしたいのずっと我慢してたのだから、仕方なかったと思わない? それを加味してギリギリセーフラインだと思うの」


それを言われると文句が言いづらくなる。正直べったりしてくるようになっても半同棲になっても、確実にあるラインは超えずに守ってたもんな。


「立てる?」

「……まだちょっと無理」

「初心すぎないかしら。と思ったけど、ユージンまだ2歳になったばかりだから初心でも仕方ないか」


確かに女性としての年齢はまだ2年とちょっとだけどな。


「……よこに座っていい?」


コクリと頷くと、ミズホはペタンと地面に座り込んだ俺の横に腰を落とした。それから俺の肩に手を回すと緩く抱き寄せてくる。……これ、男の意識持ちとしては逆のことしたいんだけど、体格差考えると悲しい事にこっちの方が絵になってそうなんだよな……。


肩越しに、ミズホの柔らかさと温かさを感じる。……性別の事は当然そうだが、そもそもこっちの体になるまではミズホとこんな関係になるなんて欠片も考えていなかったと考えていたらある事を思い出して、少しだけ悩んで口にした。


「前に聞いた事だけどさ?」

「何かしら?」

「前の時は元の体に戻ったとしてもって話だったけどさ。それは無くても年を取って外見が変わったってもう捨てる事は許さないからな」


そう言ってミズホの方を見ると彼女は一瞬きょとんとした顔を見せてからふわりと笑って、


「大丈夫よ。今はもう好きなのは外見だけじゃないもの」


そう口にした。その答えを聞いて、俺は自分の顔が火照るのを感じて顔を逸らす。

以前、ミズホとサヤカの話を盗み聞きした時に知っていた情報ではあるけれど、やはり直接自分に向けて口にされると違うものがある。


そんな俺の顔を再び自分の方に向けさせると、ミズホがもう一度唇を合わせてきた。今度は軽く触れるだけのキスだったけど。


「あんまり可愛い所見せちゃ駄目よ? 今のアタシはブレーキが壊れかけだから」

「早めに直してくれ……」

「そもそも、ユージンって外見老けてくるのかしら。2年立ってまったく変わってないけど」

「ちゃんと変わっているところだってあるだろ」

「胸はまた少し成長してたわね」


──これ本当になんでだろうな。そこは成長しないでいんだよ、身長が伸びてくれよ。

まあそれはそれとして別に不老不死になったわけではないので、年老いてはいくはずだ。……行くよな? さすがに年齢的に老人になってこの外見はしんどいものがあるぞ?


「でもそっか、一緒の未来の事を考える間柄になったのね」

「ここから先ずっと一緒にいるって決めたからな」

「ふふ、嬉しい」


ミズホにしては珍しい、まるで幼い少女のような笑顔を見てドキリとすると同時に少し罪悪感を感じる。


しかし、未来の事か。あ、そういえば……


「サヤカの事、どうするんだ?」

「何が?」

「その……俺達、付き合うんだよな?」

「ええ」

「それを別段隠さないよな?」

「ええ。大っぴらに公言はする必要ないけど、身の回りの人間にはね?」


元々ミズホが俺の事を大好きなのはチーム内では知れ渡っている話だし、身近な人間に隠す必要はないと思う。ただ特に一緒に行動している人間で、レオは──あいつは多分喜ぶだけだしなんならもっといちゃつくことを望んでくるだけだからどうでもいいとしても、同じく半同棲しているサヤカはちょっと状況が違う。


「さすがにそういう関係になった相手と一緒って、アイツは一緒にいづらくない?」


少なくとも外見的には全員女で普通に男1人で女2人で片方と付き合ったとかとはちょっと違う特殊な状況だから、そういった時にどう感じるかはわからないけどさ。


俺の問いにミズホは先ほど俺に触れた唇に人差し指を当てて、少しだけ考え込んでから口を開く。


「そこら辺はサヤカ次第でいいんじゃないかしら。サヤカが気にするなら別に一緒に住むのは私は構わないけど……あの子、ユージンに割とべったりじゃない」

「お前ほどではないけどな」


ただサヤカは向こうでも住居が同じ建物の中だし、食事の面倒とかを見ていたりもするので一緒にいる時間はなんならミズホより長くなってる可能性もあるが。


「でも、ミズホは構わないのか?」

「アタシは別に構わないわよ? 前に言ったかもしれないけど、アタシはユージンの側にずっといたいし触れていたいだけで、自分が独占したいって気持ちはあまりないから」


それは聴いた事があるようなないような……ただミズホは男女問わず俺の交友関係や付き合いに口を出してくることはないから、その言葉は割と納得できる。


「ユージンはサヤカと一緒はいやなのかしら?」

「そんなことはないけど」


というかさっきのキスを考えるとミズホと他の人の目に触れないところで長時間二人っきりになるのはまだ今の時点ではちょっと怖いところがあるので、いてくれた方が助かる気もする。ストッパー的な意味で。ただ


「関係性を進めた以上、家でもキスとかしたくなったりするんだろ?」

「それはそうだけど、さすがに常にしていたいとまでは思ってないし、別に建物の中でもサヤカの見えないところでキスは出来るじゃない? べたべたは元々してるから対して違わないし。あ、今後は胸も揉むけど」

「突然なんだよ!?」

「ずっと揉みたかったので」

「いままでも触ってきてたろ……」

「揉みしだくまではあんまりしてなくはない?」

「そもそもロリコンなのに胸に興味あるのか」

「ロリ巨乳は性癖の範囲内です」


そんなカミングアウトいらん。後巨乳ではない。体のサイズを考えると大き目なのは事実だけど……

やっぱりサヤカさんいてくれませんかね? なんか二人だけで同棲とかしてたら無茶苦茶にされそうな気がしてきた。


「同意がない事はしないわよ?」


心を読むな!


「まぁその話はおいておいて。とにかく私はサヤカと一緒で構わないわ」

「お前が構わないならいいけどさ」


それならサヤカの意思で判断してもらえばいいし、それに今すぐでもいずれはサヤカも恋人とか出来て別に暮らす事もあるだろうしな。あまり深く考えすぎないでいいか。


「ま、あの子はこのままになると思うけどね」

「そうかな……」

「さっきも言ったけどあの子ユージンにべったりじゃない」

「それは否定しないけど……」


ただアイツの場合はミズホから俺に向けている感情と違って、懐かれているって感じではあるのだよな。ミズホよりアイリ的な感じ? アイツもこっちの世界で最初に拾ったのはある意味俺だしな……あとさっきも言った通り向こうでの生活の面倒も見てるし。


最近はミズホが俺にくっついているとアイツもべたべたくっついてくるけどミズホほど普段からべたべたという感じではないから、仲間はずれがいやなんじゃないかなって思ってる。


「そうかな? ちょっと考えが甘い気がするけど」

「ねえ、それ何に対する返答なの?」


やっぱり俺の心読んでない? ちょっと怖いんだけど!








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― 新着の感想 ―
ミズホとくっついたか… 最終回までどうするかぼやかして欲しかったがしょうがないか…
おめでとう!ユージン、ミズホ!(^O^) そしてサヤカさんも入るのかな!?
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