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週末の精霊使い  作者: DP
1.女の子の体になったけど、女の子にはならない
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後期リーグ戦初戦④


「レオ! 左の二機が出てきたら抑えてくれ。片方は虫の息だから強引にいけばあっさり落とせるはずだ」

「了解っス!」


ガウルの残り体力なら、レオが被弾覚悟でどつきあいに持ち込めば簡単に落とせる。俺が狙うよりそっちの方が効率的だろう。そして残る一体もこのレベルの相手だったら、まだ技術は未熟なレオでも一対一でも負けることはない。近接戦闘であればその豊富な霊力で押し切れるはずだ。


そしてもう片方、さっきビル越しに命中させた方に関しては、


「ミズホ、ビルから出てきた方には……もうやってるか」

「勿論。ところでユージンにセクハラしたのってこの子?」

「いや最初にぶち抜いた奴」

「なーんだ。……まいっか、連帯責任で!」


すでにミズホが中距離用の兵装で攻撃を叩き込んでいる。俺のような少ない手数でのスナイプとは異なり、連射性能のある武器も含めて立て続けに攻撃を叩き込んでいた。


本来なら霊力を浪費する戦い方で、俺と大差ない霊力しか持たないミズホが使うべき手段ではない。だが相対する相手と上手く距離を取り攻撃を叩き込み続けているミズホのゲージは殆ど減っていない。


当然だ、霊力を込めなければいくら攻撃したって霊力が減るはずがない。だがその攻撃を受けた相手機の残霊力はガリガリ減っている。何故か? 当たる弾には霊力が籠っているからだ。


単純な話だ、彼女は相手を追い詰める為の攻撃には霊力は使わず相手を削るための攻撃には霊力を込めている。


先程俺も使ったように中・遠距離戦闘をする際には普通に使われる技術ではあるが、これに関してミズホは突出していると言える技術を持っている。彼女は霊力の精密な制御に長けており、霊力の無駄な浪費が最小限になるように適宜切り替えているのだ。単発の攻撃ならともかく連射系の武器ですらほぼ浪費なく切り替えているのだから恐れ入る。ただそのせいで霊力を込めていない攻撃を読まれてそこから突撃を喰らうのはご愛敬だが。そうなれば後は読みあいで勝った方が勝者だ。


まぁ割と弾をばらまくせいで費用はかさむのだが、ウチについてるスポンサーは彼女が取ってきている部分も多いので自分で稼いだ金でばら撒いているわけで何ら問題ない。


俺にしろミズホにしろ、基本的な霊力の関係で総合的なパラメータを伸ばす成長では上の方に上がるのは難しい。弱者の兵法というわけではないが、少しでも上に行くために生み出した一芸特化の技術だった。


尚今回の相手は読みあいに持ち込むでもなく、味方の支援を受けて一気に突撃するわけでもなく、ビルなどの遮蔽を使って機体を隠しながら距離を縮めようとしていた。──が、今回の遮蔽物のパターンはウチは過去に何度も経験しているのでどの場所はどこから狙いやすいかの情報なども頭に入っているのでいい的だ。あれならあっちは任せといて問題ないだろう。そっちの支援に回ろうとした中距離戦機に対しては俺が至近弾をいくつか打ち込んでいるので上手く距離を詰めれないでいるしな。


そして残りの2機は──


「お」


崩壊するアニメーションと共に、ビルの一角が崩れていく。レオが、唯一持っている射撃武器である機関銃をその場所に叩き込んだのだ。

この表示されているARのビル群、どういう判定方法をしているのかわからないが攻撃を受けたり吹っ飛ばされた精霊機装が衝突したりして一定以上のダメージを観測すると、律儀に崩壊するアニメーションが流れた後消失する。それを狙って(そしてよしんば向こう側にいる敵機に当たる事を祈って)攻撃を叩き込んだであろうレオの狙いは、上手く正解を引き当てていた。


「見つけたっスよ! 突っ込みます!」


倒壊するビルの向こうに二機の姿を認め、レオは躊躇いもなく突っ込んでいく。


レオは猪突猛進型の精霊使いだ。


俺やミズホに比べればまだまだキャリアの浅いレオは自分自身がまだまだ戦術も読みも未熟な事を理解している。だからこそ彼は俺やミズホから指示がない限りはその豊富な霊力を生かし、多少のダメージを覚悟で一気に距離を詰め近接での打撃戦に持ち込むのがアイツの普段の戦い方だ。なのでたまに突出しすぎてボコられたりする(それでもなかなか落ちないためその場合はいい囮になったりもするんだが)


そんなレオだが、常に一つだけは守っていることがある。


それは必ず俺かミズホの支援を受けられる、ようは射線の通ったポジションを取るということだ。どんなに相手が誘っていても、そこだけは彼は外さない。


ベルクダインの2機はレオが真っすぐ突っ込んできているのを認め、ガウルが大きく傷んでいることもありビルの向こう側で迎撃するつもりだったのだろう。無傷の機体が前衛としてガウルが支援に回れば充分戦える──そういう判断だったんだろうが、その思惑は脆く崩れ去った。


それでも、ガウルの同僚の方は無理やりこじ開けられたルートに突っ込んでくるレオに対してなんとか反応を見せた。機体に装着された機銃で弾をばらまき、レオの動きを止めようとする──が、レオの機体は止まらない。ミズホのような技術持ちならともかくキャリアの短い精霊使いの機銃では一発に込められた霊力が小さくてそこまで脅威にならない。そしてレオはまるでそいつが存在しないように目もくれず、機体を真っすぐに走らせガウルの機体へと突進する。


これまで常に狩る側であった獣は、逆の立場に立った時の術を知らなかった。


なんとか迎撃のために手にした長剣を構えるが、遅すぎた。突進の勢いに更に捻りによる回転の勢いも加えたレオのメイスの一撃に長剣は耐え切れず跳ね飛ばされ、そのままメイスがガウルの機体自体に叩きつけられる。


勢いを乗せた一撃。それにガウルはなんとか耐えきったが、高い位置に直撃を受けた奴の機体は大きくバランスを崩し、後方へ倒れこむ。


それで終わりだった。


倒れた機体に向けてレオは機銃を発射。その直後、ガウルのゲージがグレーアウトした。戦闘不能だ。


そしてレオは即座に体を捻ると、再びメイスを振り上げて残りのもう一機へと殴りかかって行った。……はたから見ているとバーサーカーみたいだな。


しかしまぁ、これで大勢は決した。いや最初の一撃後の連中の反応で決まっていた節はあるが。


レオの方は突撃の際に多少削られたものの、まだまだ充分ゲージは残っている。

ミズホは敵の支援機が俺からの攻撃を多少被弾するのを覚悟で援護に回ったため攻撃を加えた相手に接近されたが、ミズホは別に俺と違って近接戦闘ができないわけではない。支援機を俺が抑えれば問題ないだろう。


であれば、もうここから先は残量を気にした戦い方はしなくて良さそうだ。一気に決めに行こう。そう判断して俺は構えていた実弾のライフルを格納し、代わりに霊力をそのまま弾丸として射出するもう一方のライフルを取り出す。例の”異界映し”に対して使った奴だ。


「コイツをまともに扱うのも3週間ぶりか……」


何せ無茶な使い方をしたので大幅なメンテが必要になり、更にその後なにやら解析を行いたいということで一時的に論理解析局の施設送りになっていた。それが先日帰ってきて調整が完了したばかりだ。


とはいえ、使い慣れた武器だ。大規模なパーツ交換が行われたわけでもないので霊力の馴染みは問題ないだろう。俺は機体にそれを構えさせると、戦場で浮いている機体──今はミズホ側の戦闘に介入しなんとか戦況を戻そうとしている敵方の中距離支援機に狙いを付けた。







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