脱衣場にて
「前から思ってたけど、ユージンちゃんってスタイルいいわよね」
ブラウスのボタンをぽちぽちと外して脱ぎ捨て、上下ともに下着姿になったところで、隣で同じように下着姿となったアルファさんが声をそう掛けて来た。
「そうね。そういえばユージンちゃんメディア出る時はわりとゆったりめの服が多いけど、もしかして目立たないようにしてる?」
続けて反対側のロッテさんもこちらを見て、そう口にしてくる。
その二人の言葉を受けて、俺は目を細めて二人に言い返した。
「いや、貴女達が言いますか……」
俺のスタイルに対して口にしてきた二人は、ミズホと同じようにモデルのような仕事もしているだけあって当然スタイルも抜群だ。
アルファさんはフェアリスで激しいダンスとかもしていることもあり、均整の取れたバランスのいいスタイルをしている。
それに対してロッテさんは……なんというか、迫力のある? スタイルをしている。胸は豊満といっていいレベルであり、それでいて腰はきっちり括れている。ぶっちゃけロッテさん日本のアニメとかで登場したら確実に聖女の通称のせいで性女ってネットで呼ばれるアレだよな。無論最低な事を考えている自覚はあるので、絶対に口に出す事はないが。
なので、そんなヤバめな事より、先ほどのロッテさんの問いに対する答えを返す。
「ちなみに服は別にそういった事を意識してはいませんよ。まぁあんまり胸元開いた服とかは着る気ないですけど。視線が鬱陶しいんで」
「あ、そういう視線わかるんだ?」
アルファさんの言葉に俺は頷く。
「もうこの体になって2年立ちますし、そもそも視線に関しては割とすぐ気づくようにはなりましたね。……ああ、昔の俺の視線はもしかしてこんな感じで気づかれてたのかと思ってアレな気分にはなりましたが」
その俺の告白を聞いて、ロッテさんが笑いだした。
「アハハハハッ、それはユージンちゃんしかわからない気分よねぇ」
どうだろう、性転換手術受けた人間ならわかるのか? ただ俺の場合は元が完全に男の意識だったからやっぱり俺だけが感じる感覚?
……まぁどうでもいいか、そんな事。
「何にしろ、スタイルに関しては二人に言われる事じゃないと思います」
「でもユージンちゃんってさ、顔は幼いし体も小さいのに、体型は幼児体型じゃなくて出るとこ出てるじゃない。何ならリゼッタより大きいし」
そこでリゼッタさんの名前を出す必要はなかったのでは?
「しかも、きっちりバランスが悪いと感じさせるほどではない奇跡の体型なのよね。しかもお肌は外見相応にぷるんぷるんだし。ユージンちゃん、グラビアモデルとかやったらトップも狙えるんじゃない?」
「絶対にやりません」
撮影とかはもう完全に慣れたけど、自分の体をそういった対象として晒すのはさすがに抵抗がある。大分女っぽくなってきているとはいえ、俺の意識の根幹はあくまで男なので。過去にそういったものは当然見てたりするけど、だからこそ自分がそれになるのは厳しいだろう。というかそういった対象で見られるのはアングラでそういったイラストが出回ってるのを聞いているので今更感はあるが、どちらかというとみられる事より撮影でそういう煽情的なポーズを取る事がきついわ。
「ま、ユージンちゃんって基本露出少ない恰好だしね。アイドルの中で一番ガードが堅いんじゃないかって言われてるし」
「アイドルじゃないですけど? 後夏場のプライベートは軽装ですよ、俺」
「その恰好見たいわぁ。今度写真送ってよ」
「まぁそれくらいなら」
自分で撮らなくてもミズホが撮ってる奴とかあるから、そっち送ればいいかな。
というか、だ。
「とりあえず話すにしても後は風呂入ってからにしません? 秋葉ちゃん待ってますし」
実は秋葉ちゃんは一人だけ先に着替えて、すでにお風呂に入っているハズだ。彼女だけ別に着替えたのは単純で、俺と一緒に着替えるのが恥ずかしかったようである。
「秋葉ちゃんは照れ屋さんよねぇ」
「秋葉ちゃんは元の姿の俺と何度もあってますし、さすがに抵抗があると思いますよ」
エルネストの関係者を除けば、毎週それほど長時間ではないとはいえ顔をあわしてたからな。やはりそんな相手に裸を晒すのは恥ずかしかったのだろう。
というか貴女達ももう少し恥ずかしがるべきでは? 特にロッテさん、すでにブラも外しているのに結構喋るたびに体を動かすから、目の前でデカいのがやたら揺れるのが目に入るんだけど? ロッテさん割と身長あって20cm以上の差があるので、丁度こっちの視線の高さで胸が揺れるんだよ!
まぁ胸自体はもう完全に自分ので見慣れたし、なんなら最近はサヤカやミズホと風呂に入ってるから完全に見慣れているわけで今更それで興奮するというわけではないけれど、それはそれとしてこんなもん目の前で揺れていたらさすがに気になるだろ!
「もうちょっと、二人は気にしてもいいんじゃないですかね」
とりあえずそんな風に口にしてみたが、返って来た答えは
「私達からみたらユージンちゃんは可愛い女の子でしかないからねぇ……」
「正直同性としか見てないから今更よね」
……まぁ二人は俺がこの体になってしばらくたってから顔合わせしてるから、そうなるのか。最初の頃の仕草とかが完全に男だった頃にあってたら違ってたのかも。まぁそれどころか元の姿での付き合いも長いのにこの体になってからはそれを忘れたように扱ってくるミズホという女もいるが、アレは例外。
「というかさ、そういう意味だとユージンちゃんがこっちの裸を見て照れたりしないかなーってちょっと体揺らしてたんだけど、眼で追うだけで照れてる感じはなくてちょっと残念なのよね」
おいまてさっきから妙に体揺らしてたのわざとなのかよ!
「痴女なんですか?」
「ちょっと!?」
思わず酷い言葉が口からでてしまったが、俺は悪くないと思うんだ。
ちなみにロッテさんは悲鳴なような声を上げた後、やや焦った調子で言葉を続ける。
「こんな事するのユージンちゃんだけよ?」
「そんな事でオンリーワンでも嬉しくないなぁ……」
ようは揶揄ってるだけって話だし。
「だって、結構いろんな人から話聞いたのよ? 一緒の場所で着替えしようとしたりすると滅茶苦茶焦ったり照れたりして凶悪に可愛いって」
「あー、それ割と聞きましたね、私も」
ロッテさんの言葉に、アルファさんも同意してくる。
……あー、思い返せばこの姿になって、少し経った……丁度Bに上がったあたりかな、結構そんな感じで女性精霊使いに揶揄われてたなー。多少いろいろな事に慣れてきて距離感もわかってきたあたりだったから普通に女性陣の会話に混ざったりすることもあったんだけど、その時に一緒に着替えにいこうよとか明らかににまにましながら誘ってくる人とか何人かいたから、その辺りからの情報だろう。うん、当時はちょっと過剰反応してしまっていた気がする。
ちなみに同時期にミズホも誘って来ていたりしていたが、アイツの場合は揶揄いじゃなくてガチなので……
「さっきもいいましたけど、俺がこの姿になってどれだけ経つと思うんですか。というからこれから一緒にお風呂入ろうとしてるくらいなのに、今更では?」
「それはそう」
「というかさすがに肌寒いですし、ほんとそろそろ行きましょうよ」
「いや、ユージンちゃん待ってるのよ? 私達はとっくに脱ぎ終わってるし」
言われて見てみれば、二人とも確かにもう一糸まとわぬ姿だった。というか、全く隠そうともしないんですね……まあいい、俺もとっとと着替えなければとブラを外し、それから膝下まで降ろしたショーツを足を上げて抜き取る。
その脱いだものをまとめて脱衣籠に放り込んで視線を上げると、ロッテさんがじっとこちらを見降ろしていた。
「なんですか……?」
というか視線が低いな、視線が合わない。胸でも見てるのか?
「ユージンちゃん」
「はい?」
「貴女、やっぱり見た目相応に生えて──」
「いやさすがにそれセクハラですからね!? ライン超え!」
実は中身おっさんか何かじゃないのか、聖女様!?




