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週末の精霊使い  作者: DP
4.カオスの楽園
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どうにもなりません。


「やっぱりこうなるよなぁぁぁぁぁ!」


初めての体験となるバトルロイヤルが始まって、わずか1分程度経過した頃の事。操縦席……外界と遮断された(コクーン)の中には俺の悲鳴が響き渡っていた。


すぐ側で鳴り響く爆音。モニターに映る後方の映像にはこちらへ向かって掛ける精霊機装が2体。その2体から逃げ回りつつ、中・遠距離型の精霊機装から砲撃をもらっている──それが今の俺の状況だった。


ぶっちゃけ、この状況は予測できていた。


まず、そもそも組み分けが悪かった。


こういったバトルロイヤルでまず真っ先に狙われるのは、一番強いチームか、一番落としやすいチームだろう。


今回の組み分けは、リーグ戦の上位から5チームずつで分けられている。くじ引きでS上位とA下位とかが一緒の組み合わせになっても試合にならないからな。なので俺達の組はA組の6位から8位、それにBクラスからの昇格組2チームで構成されている。


んでBの昇格組は当然ウチ、エルネストと、そして──アスヴァーンである。そう、レザントのいるあそこ。


うん、まぁ彼らはウチ狙ってくるよね! リーグ戦では彼らは完全に俺達に翻弄されたわけで、いろんな意味で真っ先に潰したいだろう。


そして、残りのチーム。そっちは6位のチームを狙うのではと普通は思うだろうが、ここで思い出して欲しい。アスヴァーンはレザントが負傷欠場しなければ本来Bクラスに落ちてくるようなチームではなかった。彼のワンマンチーム的なものではあるものの、チームとしては元々A級中位くらいの実力はあるチームなのである。


そんなチーム対してにエルネストは作戦がハマったとはいえ、4-0と数字上は圧勝という結果を残してしまっている。その結果、"最も警戒すべきチーム"とみなされるのは仕方なかった。


更にである。


俺とミズホはご存じの事ながら霊力量は低い。技術面や作戦面などでは大きく成長はしているものの、この魔力量だけは一朝一夕に増やせるものではないので、Bランクでみても下の方なのは変わらない。なので近距離での打撃戦には向かないし、集中砲火を喰らえば一気に落ちる。


そう、落としやすいのである。


更に言えば、俺とミズホは残して置くと増幅と妨害という非常にいやらしい魔術を使ってくるというリスクもあるわけで。


──チームとして最も強い可能性があり、個としては最も落としやすく、そして残して置けば面倒な事になる。真っ先に狙われるのは当然といえば当然であった。


勿論、俺達もこの展開は予測していた。そもそもステージでのインタビューでどこのチームもエルネストへの警戒を口にしていたしな。なので予測できていた。予測できていただけだが。


予測可能回避不可能とやつである。


いやだって、無理だよ根本的に! 


以前のCランクにいた頃のエルネストは3機構成だったため、4機構成のチームの場合は俺が詰め寄られてあっさり落とされ、そのまま負けるというのがよくあるパターンだった。その後前衛でかつ機動性が高いサヤカが加入したことによりその負けパターンを引くことは殆どなくなったわけだが……


さすがに、この数をサヤカとレオだけで防げるハズがない。何せ敵は4チーム全16機いるわけなので。いや別に全員が俺達の方を狙ってきているわけじゃないけど。現状俺の方へ向かって来ているのは2機。ぶっちゃけレザントは絶対来ると思ってたけど、もう1機別のチームの機体が来やがった。それにプラスして遠距離攻撃を掛けてきているのがもう1機いる。全員別チームだし、示し合わせたというよりそれぞれが当初狙うターゲットを俺に定めていただけだろう。その結果合計3機に狙われている状態だ。ちなみにミズホの方に2機行ってる。サヤカは6位のチームのエースとタイマンでレオは4つ巴の乱戦に巻き込まれていた。助けは期待できない。


救いは、やはりエキシビジョンという事を意識しているのか、向かって来ている2機の攻めが温いということだろうか。チームが違う事もあり連携もとれていないため、まだなんとか逃げに回れていた。ぶっちゃけこれが連携されて、更に攻勢も激しかったら速攻で落ちてる。


「うぐっ……」


とはいえ、賞金も出るし罰ゲームもあるので(これ以上罰ゲームを俺達に受けろと? まあこっちは大した内容じゃないけど)手を抜きまくってくれるというのも期待はできない。そして動ける範囲が狭まっているのは否定しようのない事実であり、そのせいで俺の動きも予測しやすいものとなっているため遠距離攻撃の方がガンガン至近弾が来る。今もすぐ側に着弾した。射出タイミングが見えていたので()()()()()()で回避はしたが、実弾だったため爆風は来たので揺れる機体にくぐもった呻き声が漏れる。


同時に爆風も上がるが逃走方向もばれてるし逃げるための煙幕にもならない。そもそも逃げているだけなのも情けなさ過ぎるので逆に爆風で上がる砂埃をブラインドとして、数発射撃を行っておく。


……あ、追ってきている内の1機のゲージが減ったな。命中したっぽい。ちょっと俺の事甘く見過ぎじゃない? と思ったら即座に反撃が来た。


「っ、あっ!」


よく考えたらこっちも向こうの射撃見えないわけで、()()()普通に喰らってしまった。まぁ逃げ回っていたってジリ貧だから攻撃はすべきなんだけど……


今回のエキシビジョン、正直優先ターゲットにされるという予測があたった時点で生き残りは諦めている。情けない話と思われるかもしれないが、現実的にこの状況は無理。


とはいえ、ただ情けなく逃げ回って落とされるだけで終わるつもりがない。今回の試合、実戦経験を積む場とさせてもらうつもりである。


サヤカ加入以来、チームの戦力があがったのは当然として俺の個人としての能力も大分上がったのは実感している。こないだのB1天王山などその上がった能力を充分発揮できたと思っている。


だが、それは守られた状態での話だ。サヤカ加入以降、数の不利がなくなったのに加え大体の試合ではこちらが優勢という状態が殆どで、俺が激しい攻撃に晒された状態での戦闘になったことが殆どない。だが、今後Aランクに上がったらそこまで温くはいかないだろう。特にアスヴァーンとの試合は後からかなり注目されたらしいので、間違いなく狙われる事は増える。そうそう前線が抜かれることはないだろうが、攻撃には晒される事になる。その状態でもこれまでのような動きができなければ意味がない。


ならばこの乱戦を、数少ない実戦経験の場として利用させてもらう。さすがに近接されてしまった場合は今更どうにもならないが、実戦はトレーニングに比べても大きな経験となるはずだ。攻撃に晒されている中で、出来るだけいつもの動きが出来るようにしていく──


つもりだったんだけど、三人掛かりはちょっときついですわ!


後カメラ! さっきからちょこちょことランプがついているけど俺の事映しすぎだろ! 状況的に俺を映すのが一番受けそうなのはわかるけどさ! 20機もいるんだからもっとまんべんなく映せや!


「んっ……!」


また至近弾。この遠距離への攻撃には上手く対応できていると思うけど、どうしても衝撃で声が漏れる。素材提供になるからこのタイミングにカメラこっちに回すのやめて欲しい。なんか俺の声いろいろ集めて音MADとか作られてるって聞いてるんだからな! 悲鳴とか呻き声とか、ろくな事に使われる気がしないんだけど!? 


って今はそんな事考えている場合じゃねぇ! 昔の俺から成長はしているんだ、無様な姿だけを見せる気はない。この状況を糧にして成長し、一機くらいは道連れにしてやるんだ!





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