アイリとお風呂
向こう側での仕事も一つの節目を迎え、当初予定した通り向こうでの仕事量はセーブする方向にシフトした。当然それに伴い収入は落ち込むが、気持ち的にはもう将来的にはこちらで過ごす事に決めているので老後の貯金とかしないでいいと考えればなんとでもなる感じだ。食費も消耗品も向こう側で使うのは月の半分くらいになるしな。それでまだ予算が足りないようならアキツの金を日本円に換金すればいいし。こっちは精霊使いの収入にさまざまな広報活動でも収入あるからめちゃくちゃ余裕がある。レートはくっそ悪いけどな。
ちなみに完全移住は少なくとも現時点では考えていない。浦部さんみたいにアキツ側に完全移住しちゃうと、日本の方にいくのにいろいろ手続きが面倒になるからな。今みたいにあくまで日本側から通っているという形式の方が都合が良い。
アキツ側だと俺は有名人だからなかなか外では落ち着けないし、後、親の墓参りとかはちゃんとしたいしさ。将来的には完全移住するかもしれないけど……
でまぁそんな感じで週の半分は大体休みに当てられるようになったので、当然これまでのように試合が終わったあとあせあせと向こう側に戻る必要がなくなった。今回なんかはアスヴァーンとの決戦でがっつり疲労するのがわかっていたのもあり、火曜日まで休みにしてある。
で、だ。
そうすることによってアキツ側でのスケジュールに余裕が出て来たため、いろいろとやれることが増えてくる。
まぁその際たるものはトレーニングになるんだけど、それ以外にもこれまではオフシーズンだけだったちょっとした広告撮影の仕事をこなしたり、後は家に(いや、ミズホの家だが)アイリを泊めたり、とかね。
アイリだが、例の一件が片付いた事もあり、(当然職員さんが同行するが)自由に動き回れるようになった。
ちなみに、里親探しは取りやめたらしい。
その理由として、アイリがどのような成長をするかわからないため。彼女はアキツに来てから孵化して産まれているため当然元の世界の知識は全くないし、アキツに同じ世界から来たと思われる同種族も存在しないそうだ。なので、将来的にはもしかたら姿が変わったり、サイズが巨大になるかもしれない。
その可能性を考えると、出来るだけ論理解析局かあるいはその側にいた方がいいだろうと判断が出たみたいだ。
まぁ何かイレギュラーな事があった場合に一番柔軟に対応できるのは論理解析局だろうからなぁ。
なのでアイリは当面は論理解析局にいる事になりそうだ。
であれば、構ってやりたいなとは思う。
インプリンティングとはいえ、アイリは相変わらず俺の事を凄く慕ってくれている。あそこまで慕われると(さすがに母親的なものではないが)愛情も湧いてくるし、姪っ子のような感じもしてくるし。
アイリは角があるから日本サイドには連れていけないし、こっちの世界にしたって俺は大分多忙でさすがにアイリくらいの年齢の子供を引き取って育てる事は無理があるが、親戚のおじさんくらいには可愛がってやりたい。可愛がるだけのいい所どりになっちゃうのは解析局の人には申し訳ないが。
そう考えて、ミズホやサヤカと相談の上で一晩泊めるかという話となり打診してみたら、即OKが来た。
というわけで月曜日の夜、ミズホ邸にアイリが泊まりに来ていた。
「ママ、きもちい?」
「ママじゃないけど気持ちいいよ」
今日は一日休みにしていたため昼過ぎくらいにアイリを迎えに行き、その後街で少し過ごした後早めにミズホ邸に戻ってきていた。
そうして俺お手製の料理を振る舞い、今はアイリのご希望で一緒にお風呂に入り、彼女に背中を洗われている。
さっきまでは俺がアイリの髪や背中を洗ってやっていたんだが、それが終わったら「私もやりたい」と言い出した。
流石に髪は時間かかるし湯冷めしちゃうといけないから自分でやる事にしたけど、背中位はいいかとお願いする事にして今の状況である。
……しかしまぁ、こんな幼い女の子に背中流してもらう事になるとは思わなかったなぁ。
いや、こんな体にならないで普通に男として暮らしていたのであれば、いずれ自分の娘が出来てこういったことをしたのかもしれないけど。こうなった以上は最早俺が子を持つことはなくなったので、その未来はもうない。自分で産む気はないからな。
「ねぇママ」
アイリの精神面は成長が普通の人間より早く(種族特性なのかはわからないが)最初の頃に比べて大分落ち着いてきた感じがあるが、何故かママ呼びは継続している。というか最近ではちゃんと公共の場では控えてくれるようになってきたので(たまに口にしちゃうことはあるが)、解ってやっている節がある。
それを親御さんがいない(というか同族がいない)アイリに強く言ってやめさせるのもアレだし、最近は身内の場ではあまり気にしなくなっていた。さっきみたいに軽く返す事があるくらいだ。
そのアイリは、言葉と共にペタンとその体を俺の背中に押し付けて来た。
「……どうしたアイリ?」
「ままおっぱい大きいよね?」
「はい!?」
突然の発言に振り替えると、アイリは俺の肩に手をかけ前を覗き込んでいた。その視線の先にあるのは言葉の通り、明らかに泡にまみれた俺の胸だ。
「いいなぁ……」
アイリはじっと見つめたまま、そう言葉を漏らす。
……これくらいの女の子でも、そう言う事気にするもんだろうか?
今日一緒にいた3人は、全員巨乳とはいわないまでもそこそこのサイズを持っているので気になっちゃったのだろうか。あと家だとラフな格好になる分胸も目立つもんな。俺も体のサイズに対してはそこそこご立派なサイズのものを抱えてるし。本人的にはいらないものだけどな! 揺れるし重いし割と汗掻くし。
「アイリも大きくなったらこれくらいの大きさになるかな?」
……どうなんだろう? アイリの親の姿を知っていればそうだねと頷けたけど、わからんからなぁ。根本的に育たない種族って可能性もあるわけだし。
でも、あまり現実的な事を考えてこんな小さい子供の夢を壊す事はないよな、と俺はアイリに頷きを返す事にした。
「うん、きっと大きくなると思うよ」
「そっかー」
アイリはその答えににんまり笑う。それから何故か俺の前の方に回り込んできて、正面に座り込みじっと胸を見つめてきた。
……いや、いくら相手が幼い女の子だとしても、正面からガン見されると恥ずかしいんだけど?
なにがしたいんだろうと思いつつ体を洗っていると、ふとアイリが前に体を倒し……
「ちょ!?」
胸に顔を埋めてきた!
いやアイリは確かに俺の胸に顔埋めてくるの好きだけど、なんでこのタイミングで!?
俺は慌ててアイリを体を引き離すと、泡まみれのアイリの顔が現れた。当然の結果である。
「あーもー、何してんの」
泡を洗い落としてから顔を拭いてやると、アイリが目を開けて口を開いた。
「ママにおっぱいパワーを分けてもらおうと思って。服の上より直接の方が効果あるかなって」
おっぱいパワーって何? というか、普通これくらいの年頃の子ってここまで胸に対して興味持つもの? 聞ける相手がいねぇ……というか相手がいても聞けねぇ……
「とりあえず直接は駄目、わかった? 次したらもう一緒にお風呂入らないからね?」
「はぁい」
若干不満気だが、とりあえず納得したみたいなのでよし。
「ねぇママ?」
「うん」
「どうしたらおっぱいって大きくなるのかなぁ?」
「……それは後でサヤカかミズホに聞いてくれ」
俺の場合寝て目が覚めたらこの胸になってたので、答えようがありません。




