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週末の精霊使い  作者: DP
4.カオスの楽園
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みんなであそぼう①


結局またしても試合スケジュールは変更となった。ここ2年間、スケジュール変更多いよな、致し方ない事だけど……今回も上位レベルの精霊使いが軒並み疲労している上、いくつかのチームは機体にもダメージが入っている。深淵の侵攻の時のように機体自体を失ったわけではないけれど、さすがに今回の延期は致し方ない。


よって、事件から一週間が経過した今週末は試合がない。そして元は試合の予定だったからそれ以外の仕事も当然入れていないんだけど、俺はいつも通りアキツにやってきていた。


別に仕事がない時でもこっちには来てるけど。トレーニングとか機体の調整とかあるしな。だけど今日に限って言えば、その目的でもなく、エルネストの施設とは全然関係ない場所にいる。


という訳で今俺はある場所を目指して歩いている。……歩いているんだけど。


「なあ、ミズホにサヤカ」

「何かしら?」

「なんだ?」

「そろそろ離さないか? この手……」


現在、俺はミズホとサヤカに挟まれて歩いている。それはいい、それはいいんだが。


右手の掌はミズホに。

左手の掌はサヤカに。


きっちりホールドをされていた。


そのせいで、今俺の見た目は某有名な宇宙人の写真……にはさすがにそこまで身長差がないから見えていないだろうけど、これはた目から見たらお姉ちゃんに連れられてる親戚の子か何かに見えてるだろコレ。


先週の一件後からの過保護がまだ続いているんだよなー。まだべたべたしてくる。……いや実は最初の頃は不安と心配でそうしていたのはわかっているんだけど、今はもうそれを口実にくっついてきているだけじゃね? という気もしなくもないが……その件もあり、この程度だと強く拒絶しづらい。


「んー、もうちょっとね」

「もうちょっとだな」


やっぱり駄目でした。


はぁ。まぁいいか。もうお尻気にする事もなくなったしな。


そうそう、実は一ついい事があったのだ。長々と残っていた猫耳と尻尾がようやく消えてくれたのである。本当に長かったぜ……論理崩壊(ロジカルブレイク)の効果期間の最長に近いくらいじゃないの?ってくらい長かったが、ようやくこれで尻尾を足に固定しなくてよくなったのである。あれ地味に気になる奴だったからな。かといってそうしないと油断したらスカート捲れちゃうしさ……あと何よりズボンが普通にはけるようになったのがデカい。尻尾があるとローライズ気味になっちゃうからなかなか穿きづらかったしな。


というわけで今日の俺はこっちでは久々にするパンツルックである。なんかすごく久々感があってちょっと違和感があったり。昔は毎日穿いていたんだけどなぁ……慣れていくって怖いね。最早スカートには何の違和感も感じないし。


ちなみに久々ズボンなのは今向かっている目的地の為だ。


今日は俺たちはとある場所に招待されており、そこに向かっているのだ。結構動き回るって聞いたので、だったらとズボンなわけである。ズボンならどんな動きしても問題ないからな。


ちなみにチームで招待されているので、レオもちゃんと来ているぞ。俺の視界には入らないけど、後ろを歩いているハズ。……この状態の俺達からアイツが目を離すわけがないからな。


ちなみに今回確認の上許可をとって、チーム所属の精霊使いじゃない子も呼んでいる。現地合流の予定だけど……もう来てるかな?


「あ、入り口ここよね?」


しばらく歩くと、かなり横幅のある入り口らしきものが見えて来た。上の方には施設名が掛かれた巨大な看板もある。……うん、聞いている施設と同じ名前だ、間違いないな。


「到着っスね」


入り口の前に立ったら自然と左右の二人は手を離してくれたので、それに合わせてレオも前の方にやってきた。そのまま並んで中に入ると、入ってすぐの所で座っていた二つの人影がこちらに気づいて立ち上がる。そしてそのウチの一人、小柄な人影はすぐにこっちへと駆け寄ってきて、


「ユージンママ!」


喜色満面の表情と共に、俺に向かって飛びついてきた。そしてそのまま俺の胸に顔を埋め、ぐりぐりと顔をこすりつけてくる。


そんな少女の頭にポンポンと軽くふれながら、俺は彼女に声を掛ける。


「久しぶり、アイリ」


元々週末の一定時間しか直接はあえなかったアイリだが、最近は特に会えていなかった。先週は例の件とそれにともなう疲労でそれどころではなかったし、その前もアイリは行動範囲が制限されていたので。特に先週は論理解析局の方もドタバタしていたせいでオンラインでの会話すらできていなかった。なのでアイリとして寂しかったのだろう、いつにもまして強く体を擦り付けてくる。


外見はまだ小学生低学年くらいのアイリだ、その行動は可愛らしい。可愛らしいんだけど。


「んっ……」


思わず口から変な声が漏れてしまい、俺は慌ててアイリの方を掴みその動きを止めさせた。


「「ユージン……」」


ええい、妙な目で俺を見るな!


一応俺だって今の体は女なんだから、そういう感覚はあるんだよ! 出来るだけそういった事には触れないようにしてるけど! いろいろ引けなくなる気がするし!


……いや最初っから引けない事にはなってるけどな?


てかここまで強くされるとちょっとブラがズレる。アイリなんでかこれ好きだけど、もう少し抑えてやってくれるようにいっておかないとな。


とりあえず動きは止めてくれたけどまだ離れようとはしないので仕方なくそのままにしておくと、いつもの引率の職員さん……ルッテンさんもこちらへとやってきていた。


彼女がペコリとこちらに頭を下げてきたので、俺も答えるように頭を下げた──胸元にアイリが貼り付いているから中途半端な感じにはなってしまったけども。


「ルッテンさん、アイリを連れてきていただいてありがとうございます」


俺の言葉に彼女はクスリと笑う。


「ふふ、私のお役目ですので。ちなみに連絡頂いてからはアイリちゃん興奮しちゃって結構大変だったんですよ。ユージンさんと直接会うのも久しぶりでしたし、そもそも局の施設から大きく離れるのも久々でしたから」


そういいながら彼女は優しい目つきでアイリを見る。


……うーん、母親って雰囲気はどう見たってルッテンさんの方が出てるよなぁ。一緒に過ごしている時間も彼女の方が遥かに長いはずだし、そもそも俺はたまに遊んであげているくらいだ。せいぜい親戚のお姉ちゃんポジションのはずである。


インプリンティングってすごいなぁ……まぁ普段の様子を見る限りアイリはルッテンさんをちゃんと慕っているようなので、母親としては俺を見ていても、保護者としては彼女の方を見ているかもしれない。


俺が完全にこっちで暮らしているなら金銭的な余裕もあるし、アイリの引き取り先として立候補してもいいんだろうけどな。自分の子供を持つ事は絶望的というか今となっては100%ありえない事だし。


人から注目をされるようになって2年近くだ、さすがに多少は視線に対する上手い対応の仕方もわかってきてる。


会社の勤務体系も今後変更する予定だし、一応今後俺は徐々に生活の拠点をこちらに移すつもりではいる。ぶっちゃけ向こう側の人付き合いは会社関連以外の相手は疎遠になっているし、今の俺にとって強い繋がりを持つ相手は殆どこっちにいるからな。ただ浦部さんのようにフルに移住しない限りは、さすがに引き取るのは無理だろう。アイリの年齢が10代半ばくらいだったらまだ検討の余地があったんだろうけど、さすがに今の年齢だと不味い。


それにだ。そうするなら。他にちょっと決断しなきゃいけない事もあるしな。事実上もうそうなっているし、心も大部分は固まっているんだが……


アイリは年齢が低い事とこちらの世界の人間とはちょっと異なる器官があるのもあってまだもうしばらくは解析局の方で面倒を見るみたいだけど。いずれは引き取られるとしたら、やっぱりルッテンさんが引き取るのかな? 彼女なら安心だけど……今は髪の中に隠れたちっこい角が今後成長して大きくなったり人と離れた特徴が出てくるなら、亜人と呼ぶべき人種が数多くいるロスティアの人間に引き取られた方が過ごしやすいかもしれないな。


まぁその辺は論理解析局の方で上手く考えてくれるだろう。


そうして最近のアイリの様子とかをルッテンさんと話していると、施設の奥の方から複数の人影がやってくるのが見えた。今日俺達を招待してくれた相手だ。





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