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週末の精霊使い  作者: DP
4.カオスの楽園
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年末イベント会場③


というか、だ。


イラストの中には、似た絵柄どころではなく、明らかにリゼッタさんがこれまでに送ってきたイラストがいくつか混ざっている。


ここから導き出される答えは──


「リゼッタさんが送って来たイラストって、知り合いのイラストレーターさんの奴だったんですか?」


友人のイラストを宣伝したかった的な。でも俺別にこっちではSNSのアカウント持ってないし、宣伝とかできないんだが?

チームの広報誌に乗せるとか? いや、公私混同すぎるだろ。あと下手に乗せると他にもイラストがぶん投げてこられそうだ。


うーん、何が目的なんだろう?


そう思いつつ本の方からリゼッタさんへ視線を戻すと、本業(副業?)アイドルの美少女がクスクスと笑っていた。


「フフ……ユージンさんは本当に可愛らしいですね」

「本当よね。これ相手に理性保っているアタシは褒められていいと思うわ」

「話の流れが相変わらず読めないけど、それはそれとして理性保ってあの行動なのかお前」


公共の場はともかく、チームの施設やミズホの家ではかなりベタベタされていると思うんだが。


「そうよ。理性が保ててなかったら──押し倒しているわ」

「ごめん急いで他所に部屋借りるわ」

「そう言い出すと思って意地でも理性は保つから安心して大丈夫よ?」

「大丈夫かなぁ……」


そう言いつつ、特に心配はしていない。週末同居生活始めてそれなりに立つけど、無理やりどうのとかはされたことないし、サヤカもいるし。見られたりある程度のスキンシップまでなら別に、だし。


「あの」

「ん?」

「お二人は一緒に住んでいらっしゃるんでしょうか?」


あー、そういやこの件あまり人には話してなかったっけ。別に大っぴらに話す事じゃないし。エルネストのチーム関係者が知ってればそれでいい話だしな。俺のアキツでのスケジュールの都合上、自宅に誰かを招いてどうのってこともないしさ。


何にしろ、友人相手であれば別に隠す事もないので頷く。


「週末だけだけどね。ミズホの家に間借りしてる」

「えっと……聞いていい事なのかな、これ」

「いいわよ」


俺の言葉を聞き、何かを口にしようとしつつも逡巡したリゼッタさんに対して、何の話かもわからないのに何故かミズホが即答で許可を出した。


リゼッタさんはその言葉にコクンと頷くと、何故か一度ごくんと唾を飲んでから口を開き


「お二人は、お付き合いして同棲してるんですか?」

「そうよ?」

「違うよ!?」


二人とも真顔でやりとりするのやめてくださるかしら!?


「違うんですか?」

「そう、週末だけ寝床貸してもらっているだけ。大体サヤカも一緒だよ」

「そうなんですか?」


リゼッタさんに視線を向けられたミズホは肩を竦めて頷いた。


「うん、ま、そういうこと」

「ほら、リゼッタさんに以前連絡したと思うけど、俺誘拐されたことあったじゃん?」


あの件に関しては大っぴらに公開はしていないけど、心配して連絡してきた一部の人たちには事の次第を伝えてある。


「それ以降、あんまり一人で長い時間を過ごすのがちょっと問題じゃないかってことでさ、当面はこっちに泊まる時はミズホやサヤカと一緒に行動することにしてるんだ」

「成程……でもサヤカさんやミズホさんのような魅力的な女性と週末限定とはいえ同居生活しているとなると……もう女性に対して抵抗はなくなったんですか?」

「いやちょっとそれ語弊のある言い方じゃ……元々抵抗はないですよ」

「それじゃお風呂も一緒に入れるように?」

「それは……無理ですけど。ラフな恰好で一緒に過ごすくらいなら別に……」

「成程成程」


リゼッタさんは俺の話を聞いてコクコクと頷いている。よくわからん反応だ。


というか、話が逸れすぎた。こっちが聞いてたはずなのに、なんでこっちが質問受ける側に変わってるんだ。戻そう。


「それで、イラストの件なんですけど」

「はい」

「正直俺に渡しても宣伝にならないですよ? 紹介するような場所ないですし」

「ああ、それは全然別に構いませんよ。──貴女に見てもらうのが目的なので」

「へ?」

「以前伺いました通り、ユージンさんってSNS……というかこちらの世界のウェブサイトはほぼ見られないんですよね?」

「あ。はい」


誤爆怖いので。自分のエロイラスト……くらいならまだしも、男に組み敷かれているイラストとか見たら間違いなく心に傷を負う。


「だとすると、SNSに流しても他の方々のようにイラストを当人に見てもらえる可能性なんて万に一つもないじゃないですか」

「ええ、まぁ……」


実際の所はウチのメンバーがたまに見せてきたりするので、万に一つってことはないんだけど。


そんな俺の思考を他所に、リゼッタさんはその小さく白い手を胸の前でぎゅっと握りしめて、強い調子で力説した。


「絵描きにとってね、一番アガるのは自分のイラストを推しに見て貰えた時なんですよ! あ、いえこれは私の個人的意見ではありますが」


……はい?


「せっかく友人としての付き合いもあるんですし、ちょっとズルさせてもらっちゃいました」


そういってリゼッタさんはペロりと舌を出した。可愛い。


ではなく。


「思考が追い付いてないっぽいから補足するけど」

「ミズホ?」

「そのイラスト集のイラスト書いたの、リゼッタちゃんって事よ」


ミズホの言葉にリゼッタさんを見ると、彼女はコクリと頷く。


……えーと。


さっきから思考の遅延が起きているが、なんとか俺は言葉を紡ぎ出す。


「……リゼッタさん、絵を描くの滅茶苦茶上手いですね」

「え、そんな反応なの?」


ミズホうるさい。

だって本当に上手いし。可愛くて精霊使いで歌とダンスも出来てイラストまで上手いとか、天は彼女に二物どころかいくつ才能を授けているんだろう。


「でもなんで俺ばっかり書いて」

「さっきリゼッタちゃんが答え言ったじゃない。彼女にとってユージンは推しだからよ」

「推し?」

「ラムサスさんと同類って事よ」

「それは違いますよ」


ミズホの言葉に間髪入れずリゼッタさんから否定が入った。そうだよな、俺が推しなんて……

だが次の言葉は期待したものではなかった。


「あの人の場合は推しどころから崇拝に近いので……私は普通にファンとしての推しですよ?」


あ、周囲から見てもあの人の俺に対する反応ってそういう扱いなんだ。てか、推し? この超絶美少女アイドルの推しが俺?


意味わからんのだが!!


「そういえばリゼッタちゃんって、ユージンに直接会う前からファンだったの?」

「いえ、直接会うまでは興味はありましたけどそこまでは。なのでお友達になるのと推しになったのはほぼ同時期ですね」

「待って待って待って」


さっきからずっと思ってる事だけど、俺を置いてかないで。


「改めて確認するけど……リゼッタさんにとって俺は推しなの?」

「ですよ。大切なお友達兼推しです」

「おかしくない? リゼッタさんって推される側の人間では?」

「あら、推される側の人間が推しを持っちゃいけないっていうルールはないですよ?」


そりゃそうだけども。


「という訳でばれてしまいましたし。これからは遠慮なく推させて頂きますね、ユージンさん。あ、勿論友人としても親しくさせて頂きますけど」


……リゼッタさん、俺の知人周りの中では(人気美少女アイドルではあるものの)一番アクの少ない人だと思ってたんだけどなぁ……。







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