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週末の精霊使い  作者: DP
3.ようこそファンタジー世界
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閑話


すやすやと、まさに天使のような寝顔で眠る少女の横。起こさないようにそっとベッドの横に腰を降ろし、少女へと手を伸ばす。


そして仰向けに眠る少女の、布団の外に出ている手のひらをちょんとつついた。


すると、少女の手がきゅっと緩く握られる。


「ふぉぉぉぉぉぉ」


その光景に器用に小声で奇声を上げたのは、指でつついた張本人であるミズホではなく、ベッドを挟んで反対側でその様子を見ていたサヤカだ。


「ミズホ」

「何?」

「ダメだ、やっぱりダメだ。──やはりウチの子にしよう」

「落ち着きなさい」


このやりとり何度目かしらと思いつつ指を放すと、閉じられた小さな拳がまたゆっくりと開いていった。


その光景を愛おしげに眺めながら、ミズホは口を開く。


「前もそうだったけど、この反応女の子じゃなくて完全に赤ちゃんなのよね」


実は前のホテル泊の時だけではなく週末同棲するようになってから何度か同じことをしているが、眠っているユージンは必ず同じ反応を返す。他にもちょっと頬をつついたりするとむずがったり……明らかに幼子の反応だ。外見年齢相応ですらない。


──可愛らしすぎて、ついやっちゃうんだけど。


ミズホがやる時もあるし、サヤカがやることもある。これは他の人間が知らない秘密だろうと思うとちょっと優越感が湧く。そもそもユージンが自分達やレオの前以外で寝る事はまずないだろうし。……日本サイドの方はわからないけど、当人曰くそこまで親しい人間は今向こうにはいないって話だし。


「そういえばだな」

「ん?」

「ユージン、男時代もこんな反応だったのか?」

「んー、そんなことないと思うけど」


ユージンとの付き合いが長く、過ごした時間の恐らくアキツの人間の中では一番長いミズホだが、今の姿になる前はあくまで仲の良い異性の同僚どまりだった。成人男性に興味はなかったし。当然寝てる姿くらいは見たことあっても、こんな悪戯をしたことなんてない。ただまぁ


「少なくとも寝てる時の反応見る限り、そんな仕草をしていたことはみたことないなぁ」


仮眠室とかソファで眠っている姿は、普通のモノだった。こんな体勢で寝てる事も見たことないし。


「これも体に引っ張られてるってことか」

「そういう事じゃない?」


今の姿になってから1年と数ヶ月。男性時代からそれほど性格や普段の()()()()言動はあまり変わっていないとミズホは思う。勿論TPOに応じて意図して女性的な動きをすることはあるけどそれは別の話だ。


それに対し、"無意識"に出るような仕草は女性的なものが多い。以前のユージンなら絶対にしなかったような仕草だ。


時間を経て自然に身につけて行ったような仕草もあるが、当初の頃から見せていた仕草もいくつもある。そういったものは"体に引っ張られている"のだろう。


非常に可愛くてよろしい。無論意識してぎこちなく女性的な動きを見せるのも非常によいのだけれど。最近はもう慣れてほぼ抵抗なくなっちゃったし、ぎこちなさも無くなってしまったのは残念だ。


「性格や言動は割と男性的なのにな、ユージン」

「そうね。そこら辺は昔と変わってないと思うわ」

「体に引きずられて思考回路も変化するとかはないのかね?」

「そこら辺は前例がほぼないだろうしわからないけど……少なくともユージンは、そうならなくてよかったけど」

「? そうなのか? ミズホの性癖的に少女的になった方がいいのでは?」

「アタシは幼い性格が好きなわけじゃないわよ。それに男を好きになられたら目も当てられないじゃない」

「──────成程」


ミズホの言葉にサヤカは大きく頷いた。

友人とかではなく、そういった相手として見てもらうには確かに今の方が都合がいい。


少女になってかなりの時間が立っても、ユージンが男性じゃなく女性の方をそういった対象で見ているのは明確だ。だからこそ裸の付き合いや過剰な接触を避けている部分があるだろう。


数名、ユージンに対して懸想している気配のある人物がいるが……残念だが彼らのその想いがかなえられる確率は1%にもみたないだろう。ゼロでもない限り彼らはチャレンジするかもしれないが。


「これだけ経っても変わらないんだから、今度も変わる事はまずないでしょ」

「男の裸を見ても特に反応とかしないしな」

「それに対して、アタシ達にはちゃんと反応するしね。勿論男性的な反応はないけど」

「下品」

「何を想像したのかしら? ま、さっきの感じだと当初に比べてアタシ()のチャンスは広がってるみたいだし、期待させてもらいましょ」

「そうだな」


ミズホは意図的に"達"を付けたが、サヤカはそれに素直にうなずいた。酷く今更な事ではあるが、そういう事だ。


フフ、と笑いあう美女二人の視線の先。二人にとっての天使は幸せそうに眠っている。




タイトルの通りの内容なので1000文字くらいで終わらせる予定だったけど倍になった。

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