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週末の精霊使い  作者: DP
3.ようこそファンタジー世界
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レアキャラ


地獄を見ていた。


たった一つの判断ミスがこんなことになるなんて──


なんてことを脳内でモノローグで流したりしてみたりするわけだが、状況は何も変わる訳もなく。


別にグラナーダの件ではない。


グラナーダに関しては、あの後問題なくすべてが終息したといっていいだろう。


論理解析局からの一報が入ったのは、丁度やってきたトランスポーターに機体を格納している時だった。


『グラナーダより、討伐完了の報が入った』


討伐……まぁそういうことだろう。こんなことをしてくるような奴を今更この世界に()()させることはないし妥当な結末だとしか思わない。そもそも姿自体は見たこともない相手なのだし。これでようやく終わったのかと思うだけだ。


とにかくこれで今回のグラナーダに関するごたごたは完全に終わった。俺達の仕事も終わり、解散というわけである。


解散と言っても、位置関係的にひとまず各チームが戻るのはロスティアだ、そうすれば各都市へと続く整備された道路を利用できるし。


朝一からの出動だったとはいえかなり離れた位置まで移動しての戦闘だったし、現地でもそれなりに時間を食っていたので戻って来たのは夕方近い時間だった。


それを最初から想定していたのだろう、論理解析局から宿をキープしてあるから一晩ロスティアに滞在する場合はそれを利用して欲しいとの通達があった。精霊使いだけではなくスタッフ分まで含めて(そのまま帰還するチームがいることを見越して全チーム分ではなかったらしいが)よく確保できたなと思うが、まぁそこは俺達の気にするところではない。


ロスティア、それに隣接するルーベンダインやカルガンのチームはともかく、残りの三都市まで戻るにはたしかに時間がちょいと遅い。それに俺達精霊使いは強行軍だった上にほぼ全員が全開駆動(フルドライブ)での長時間戦闘を行っていたため、大分疲労していた。


なので、チーム関係者は大部分戻ることにしたようだが(ウチのスタッフも整備やら他の職務があるということで戻って行った)精霊使いはロスティア出身のチームを除く殆どが一泊する事を決めたようだった。ミズホやレオ、それにサヤカも同様だ。


で、だ。


ここで俺は選択ミスをしてしまった。


俺は当初、一度日本へ戻ることを考えていた。基本的には俺は土曜日の夜はこっちに泊まっているけど、今回の場合は一度帰還してしまった方が楽なので。ここからカーマインに戻るのは数時間かかるのに対し、一度帰還すれば日本側での移動時間と転送施設までの移動時間を含めても1時間前後で収まるから。


……なんだけど、チーム面子から泊まろ泊まろと押すに押されて、結果として承諾してしまった。まぁ移動時間は怠いが、チームメンバーと一緒ならいろいろ次期シーズンの事に関して詰めたりも出来るし悪くない。それに最近なんどか利用しているが、ロスティアは観光に向いた場所だ。街を散策する時間などは勿論ないが、宿の窓から見える景色だけでも旅行気分には浸れる。


そう思って、一泊を決めてしまったのが大きな間違いだったわけで、結果どうなったかというと


「本当に肌若いわよね。今いくつだったっけ?」

「……25です」

「すべすべだし」

「あんまり触らないで貰えると……」

「お姉さんの妹にならない?」

「なりませんよ!?」


セクハラを受けていた。


いや、これセクハラになるのかな?


同性だし、そもそも中身は男だし……逆に俺がセクハラしてることになったりしないか? 取引先の人が以前横に座っててちょっと動いた時にあたっただけで後からセクハラ扱いされていたって言ってたりしたし……いやでも、今は向こうから触って来てるし違うよな? というか同性でもあまりベタベタ触られるのはセクハラ行為だろう。度が過ぎているわけではないから強くになにか言う気もないけど。


そう、今俺は同性の精霊使いに囲まれていた。いつものミズホ達やリゼッタさん等比較的親しい相手ではなく、あまり面識のないAランク、Sランクの格上のチームに所属する女性精霊使い。男性は今は周りにはいない……というか、この状態なので男性は近寄れないようだ。


なんでこんなことになっているかといえばだ。


今更な話だが、アキツにおける俺の知名度はかなり高い。少なくとも精霊機装に多少とも関わっている人間なら俺の事は必ず知っているし、悲しい事にCM出演しているのでほぼお茶の間の皆さんにも知れ渡っている。誰もが知っているとまではいわないが、誰もがどこかで見たことあると感じる程度の存在にはなっている自覚はある。


そんな俺だが、ミズホやレオ曰く精霊使いの中ではレアキャラ扱いされているらしい。そりゃ元男から変化した美少女なんて少なくとも今の精霊使いの中にはいないんだからレアキャラだろうよ、と言ったらそういう話でもないらしく。


曰く、遭遇率が著しく低いということでレアキャラだそうだ。


何せ精霊使い同士は意外と会う機会が少ない。普段過ごしているのは六都市のそれぞれ別の区域に別れているし、試合の時も直接対戦する同リーグの相手はともかく、別リーグなら同じエリアでの戦闘が行われるときにすれ違うことがあるかないかだ。


しかも俺は土日しかこちらの世界にいない上、この姿になってからは取材と撮影に時間を喰われている。残りの時間は当然機体の調整や訓練に時間を割いている為、フェアリスのように仕事で一緒にならない限りがほぼ接点がなかった。唯一複数チームが集まるような場はエレメンタラーズアワードだけど、あれはあれで出れるチームが限られるからな。Sランクなんて個人表彰も含めてここ最近はずっとラブジャが概ね占有しているし。


さらに言えば俺のこっちの交友関係が狭いのもある。チームを除けばアズリエルの面々とフレイさん、ヴォルクさん、リゼッタさんくらいか? しかもその面々の中で比較的顔を合わすのは秋葉ちゃん達くらいで(こっちに来るときに基本的に顔を合わせるからね)、他はほぼメッセージや電話でのやりとりだけだ。プライベートで約束して会う程の親しさがあるわけでもないし、そもそも時間がない。だから友人関係を伝った接点もない。


そんなわけでほぼほぼ接点の取りようがないレアキャラになっているわけだ、俺は。試合会場での遭遇にしたって、そこまで時間が取れるわけがないし、何より試合前にあまり腑抜けたコミュニケーションも取れないだろう。


興味のある存在だけど、エンカウント率が非常に低い。そんなレアキャラにプライベートな時間帯で接点を持てたらどうすると思う?


はい、拉致られました。


SランクとAランクのお姉さま方に押しかけられ、連行されました。NOと言えない日本人、それが俺。


……だってさー、さすが上位ランクでしのぎを削っているだっけあってみんな押しが強いのなんの。しかも別にその瞳に好奇心はあっても悪意が見える訳でもなく、さらにはあんまり邪険にしたら今後Aランクとかに上がった時にイベントやらなにやらで呼ばれた時に空気が微妙になるのでは(SAランクになるとそういったイベントや番組に呼ばれる事も多くなる)という余計な心配も出ちゃったりして。


今このようにしてお姉さま方(年下もそれなりにいるけど)に囲まれているわけだ。


ちなみに体も結構押し付けられていたりするけど、この辺は別にまぁなんとも。明らかに2名程揶揄うような様子を見せてた人がいたけど、生憎同じチーム内にやたらベタベタしてくる二人がいるんで、今更その程度の事でどう思う事もない。


いや触られるのはこそばゆいし、視線が集まってるのはぞわぞわするけど。──ほらそこ、人の頬を人差し指で押さない!


扱いが完全に幼児に対する……いやどっちかっつーと愛玩動物に対するあれじゃねーか!




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