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週末の精霊使い  作者: DP
3.ようこそファンタジー世界
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少女達(一名25歳)の雑談タイム


「リゼッタさん」

「はい」

「今何か妙な……」

「言ってませんよ?」


被せ気味に否定してきた。いや、その反応が雄弁に語っていない?


視線を席の反対側に向けると、秋葉ちゃんが目をパチパチとしていた。これ多分聞こえたけど理解はしてない感じかな。金守さんはそんな秋葉ちゃんに体を寄せて、さりげなくリゼッタさんから距離を取らせようとしていた。うん、こっちは分かってそう。


「ええと」

「言ってませんよ?」


ごり押しで行く気ですか? 


表情が完全にすまし顔から変わらないのはさすがにアイドルって所かね。


とりあえず何言っても同じ言葉が返ってきそうなので、追及は止めることにした。


俺が諦めたのを見てリゼッタさんが小さく安堵のため息を漏らしたようにみえたが、別にごまかせてないからね? 深く追及する気を無くしただけで。あとこの話題広げると金守さんに攻撃を加えられそうな気がしたので。なんとなく。ちょっとその視線の圧がね。多分そういったモノを知らなそうな秋葉ちゃんに聞かせたくないんだろう。保護者なのかな、金守さんの方が年下だけど。


……なんかここにいる4人、俺も含めて一番年上的な雰囲気出してるの金守さんの気がするんだよな。実際は一番最年少なのに。


一番最年少に見えるのは誰かって? 秋葉ちゃんじゃないかな! 客観的に見てね! 


外見だけで行くと俺だけど。


それはさておきとして。


追及されたくない話題が終わり、それに戻らないようにとでも考えたのだろうか。次に口を開いたのはまたリゼッタさんだった。


彼女はちょこんと少しだけ首を傾げ、


「それにしても、服だけ溶かすスライムなんて実在するんですね」


……ごまかす気ないだろ、あんた。


とりあえず俺は彼女をじっと見つめ告げる。


「リゼッタさん」

「はい」

「服だけ溶かすスライムなんてものは存在しない」

「特定の材質だけ溶かすスライムあたりならいてもおかしくなくないですか?」


金守さん、なんでこういう時は率先して突っ込んでくるの。


「それにしたって、服だけ溶かす怪物とかおかしいだろ。何のためにいるんだよ」

「何のためにいるかはわかりませんが、そういった存在がいないと否定しきれないのが私達の住む世界なので……」

「そういわれるといないと断言はしづらくなるんだけどさ。とにかく俺を襲ってきた奴はそんな器用な奴じゃなかったよ。皮膚に直接触れたところは赤くなってたし、チリチリ痛かったから酸みたいなものだったんじゃないかな?」

「怪我したんですか!?」


俺の説明を聞いて、秋葉ちゃんが悲鳴に近い声を上げる。横のリゼッタさんにいたっては、ガタンと音を立ててこちらに縋りついてきた。彼女は俺の服の袖をまくり上げ、


「ユージンさんの白い肌に傷が!?」


俺の腕を上下左右に動かし、つぶさに観察してきた。


──なんだろうこれ、俺今アイドルの美少女に脇の下とか思いっきり見られてるんだけど。どういう状況?


リゼッタさんは俺の足とかもチェックしてくる。秋葉ちゃんも気になるのか、リゼッタさんの手の動きをつぶさに追っていた。


「いや、怪我は残ってないですよ。治してもらったので」


このまま放っておくと若干暴走気味なリゼッタさんが服の下まで確認してきそうな気がしたので、そう伝える。


「病院でですか?」

「いえ、助けてくれたグラナーダの人にです。回復魔法が使えるみたいで」

「回復魔法! まるで小説とかマンガの中みたいな話ですね!」

「秋葉ちゃん、私達が乗ってる精霊機装自体、私達日本人からみたら漫画とかそういう世界の話そのものだよ?」

「……確かに!」

「でも、噂には聞いてましたけど本当に魔法使えるんですね、グラナーダの方々」


リゼッタさんの言葉に俺は頷く。


「ええ、さっきの秋葉ちゃんの言葉じゃないですけどほんとマンガとかアニメの中の存在ですね。生身で空飛ぶし雷とか出すし」

「冬のイベント辺りには、結構その辺を題材にした本が出そうですね……」

「イベント? 本?」

「なんでもないです。そんなことより、その方には感謝しなければいけませんね。おかげでユージンさんの奇麗な肌に傷も残らなかったようですし」

「あー、それは確かに」


自分の体に対する評価としてはなんなんだけど、ほんと肌綺麗なんだよね今の俺。


元の男の体だったら多少の傷は気にしなかったけど、ここまで色白で綺麗だとやっぱり綺麗に保ちたくなるわけで。言っとくけどナルじゃないからな? 


そんなだからスキンケアとかも身の回りの女性陣のレクチャーでそれなりに気を付けてるくらいなので、そこにがっつり跡が残るような傷が残らなかったのはありがたい。


まぁアメーバ擬きの雫で受けた火傷らしき傷も、裸足で歩きまわってついた傷も、それほど深いものではなかったので跡は残らなかったかもしれないが──火傷の方はちょっとまずかったかもしれんか。そもそも酸的なものだったろうし、変な跡が残る可能性はあったかもしれない。


うん、やっぱりルーティさん様々だ。俺なんかよりあの人の方が女神だって。


「でも本当傷しばらく残らなくてよかったですね。いずれ治るにしてもしばらく残ってしまうと、オフシーズンのCM撮影にも影響するでしょうし」

「……確かにそうだね」


金守さんの言葉に俺は頷く。そうか、今の俺はその辺も考えなきゃいけないのか。

基本露出しない腹とか胸の辺りはともかく腕や足に傷があったら撮影に支障でるだろうしな。彼女の言う通り、オフシーズンにはいつも通りフツーにCM撮影ぶち込まれてるから、下手に暫く残る怪我とかすると多方面に迷惑かけることになりそうだ。一応は"俺目的"のスポンサーもいるからなー、変に傷を負って商品価値を下げるとスポンサーも減るかもしれない。


深淵の一件以降はあまり怪我するような機会に遭うこともなかったから考えたことなかったけど、今後はその辺もちゃんと気にしなきゃダメか。


ま、ある程度危険な所に赴くときは精霊機装の中だからそんな大怪我するような事はまずないし、何を注意すればいいんだって気がするけど。普段怪我するようなことしてないしなー。


こないだのとかは注意がどうこうってレベルじゃなかったしさぁ……


「そういえばユージンさん」

「ん? なに?」


再び声を掛けてくる金守さんに応答を返しつつ、俺は紅茶に口を付けた。割と喋ってたから喉が渇いてきたんだよね。


「今回のオフシーズンでは水着撮影はあるんですか?」


ぷぴっ。


「きゃんっ」


彼女の言葉に俺は思わず口に含んだ紅茶を吹き出してしまい、正面に座った秋葉ちゃんが驚いて悲鳴を上げた。


「……ユージンさん?」


いやちょっと待って金守さん、ここで俺の事を睨んでくるのは理不尽! 貴女が突然妙な事言うからでしょ!


「大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫、そんな綺麗なハンカチ汚さなくていいから!」


真っ白なハンカチで俺の口元を拭こうとしてきたリゼッタさんを押しとどめて、慌てて紙ナプキンで口元とテーブルを汚した紅茶を拭きとる。「むう」ってリゼッタさん何が不満なの?


「コントみたいな反応するのやめてもらえます? 秋葉ちゃんに引っかかったらどうするんですか」

「いやいやいやいやわざとじゃないからね!? というかなんで水着なんて話が出るの!」

「あれ、依頼いってないんですか? 最近エルネストのスポンサーになったデリック社、毎年このシーズンになると水着CM撮影しているって聞きますけど」


それ初耳。


「俺の所には話来てない……多分俺が水着撮影はNGにしているから、チームの方で断ってくれてると思う」

「あら断ってるんですか?」

「金守さんとこもそういう仕事受けてないだろ?」

「私と秋葉ちゃんはそもそもCM出演とかはあまりしていませんし」


アズリエル、メインスポンサーが超大手だからか、確かに上位チームの更に注目株なのにそういった話はあまり聞かない。スポンサーがそれほど多くなくてもやっていけるのだろう。


「フェアリスは?」

「ウチはまぁ何度かありますけど……ユージンさんなんでNGなんですか?」


う。


正直な理由言うのアレだけど、他にごまかす理由が浮かばなかったので、俺は素直に告白した。


「だって、水着撮影とか恥ずかしいじゃん……」


去年のプール以降水着なんか着てないし、あんなに尻を晒した状態で撮影なんかされたら精神がおかしくなる。


そう思って告げた言葉に、秋葉ちゃんとリゼッタさんが固まっていた。え、なんで?


「千佳ちゃん」

「どうしたの?」

「この子うちの妹にしていい?」

「それはご家族の方に聞いて?」


いやまず俺に聞いてよ。そしてNGだよ当たり前だけど。











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― 新着の感想 ―
[一言] アキツ、日本の中でも濃い部分を輸入しすぎじゃないですかね……いやまぁ平安時代からジャパニーズだいぶアレだったけど。
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