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週末の精霊使い  作者: DP
3.ようこそファンタジー世界
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おててつないで


幸いな事に熱はぶり返すことなく、翌日には体調はほぼ完全に回復していた。


ただ、翌日に関しては寝てはいなかったものの部屋の中で大人しくしていた。二人に言われたのもあったが、自分でもそうすべきだと思ったからだ。


下手に無理をして動いて、それこそまた体調を崩したりなんかしたら話にもならない。さすがに週末まではまだ日付もあるから大丈夫だと思うが、下手に長引かせて週末の試合を欠場なんてしたらそれこそプロ失格だ。


前回の試合は落としているから、ウチの戦績は2勝4敗。残り3試合、内1試合は前期2位のチームが相手で正直な所勝ち目が薄い相手だ。それを考えると次の試合は絶対に落としたくない試合だった。せめて後1勝はしないと、半シーズンでのB2への降格がちらつくからな。


タイミングよくというか今は夏季休暇中で仕事は休みなので、無理する理由はどこにもない。


というわけで、昨日は三人で俺の部屋でだらだら過ごしていた。ちなみに体調問題ないから出かけてきたらどうだと二人にはいったんだが、結局べったり貼りつかれたし、なんだかんだ理由をつけて世話をやかれてしまった。


とりあえず風呂の世話と着替えは断固拒否したけど。


あと俺を横にならせつつ部屋の片づけして、「日曜日の夫婦みたいな光景ね」とかいうのヤメテもらいますぅー?


休日は家でゴロゴロしているだけの旦那みたいな扱いじゃねーか!


とか突っ込んだら「あら奥さんの方が良かった?」とか返してきたけど、そういう話じゃねーんだわ。


まぁそれはともかく。


そんな感じで二日目を過ごし(ちなみにミズホだけじゃなくてサヤカもまた泊った)、三日目。


俺はようやく、真夏の日射しの中外出をすることになった。


いやいい感じに曇り気味だったんで、暑さはまだ控えめだけど。正直助かる。


外出の理由はミズホだ。彼女が、せっかくなので少し日本の街並みを見てみたいと言い出したのである。


どうやら先日こっちに来た後はスーパーで買い物した以外は、俺の部屋へ直行したらしい。


彼女に与えられた滞在期間は3日間──72時間までなので明日の朝には帰らないといけないから(今回は俺も金曜日にアキツへ向かう予定なので、滞在期間の延長申請はしないそうだ)、その前に少しはこっちの世界を見て回りたいとのこと。


俺としても今週は墓参りをとりやめたため予定が空いているし、ミズホに対しては今回の件は別としてもカーマイン側では買い物やらなにやらで案内してもらっていることもあり、案内を了承した。


というわけで今俺達は、地元の駅周辺辺りをのんびりと散策している。


うちの地元はまぁよくある地方都市で、駅の近くか街道沿いから離れるとほぼ住宅街になる。そんなところを案内してもしょうがないし、街道沿いはいろいろ店の間隔がひらくので、ほぼ一択で駅周辺となった。


「しかし、聞いてはいたけどカーマインの街並みと本当に大差ないのねぇ」


先程からきょろきょろとしながら歩いているミズホがそう口にする。


その手は俺の右手を握っている。


「本当に、カーマインは現在日本の光景にそっくりだな」


ミズホの言葉にそう返すサヤカ。


その手は俺の左手を握っている。


「……おかしくない? この状態」

「別に何も?」


家を出てから何度も発した言葉に、やはり同じ返事が返ってくる。


「アタシこの街……というか日本が初めてだし。はぐれたら困るから手を繋いでおかないと」


……今俺達が歩いている所は駅に近い事もあって、確かに人では多い。が、だからといってそうそうはぐれる様な状況でもないだろう。


そもそも俺の両脇を歩く二人はとても目立つ。

地方都市のこの街では、白色人種系の外人はほぼ見ることはない。なので多少離れたところで髪の色ですぐ見つけられるハズだ。


それに二人とも、圧倒的ともいえる美貌を誇る。知名度が加算されるアキツ側で向けられるものとは少々異なるものの、ここ日本でも周囲の人間の視線を引きつけていた。男女問わずだ。


ただ日本人の性というか、明らかに外人である二人に声を掛けてくるナンパ君などはいないようだったが。


なので、髪の色がなくても恐らく周囲の人間の視線を追えば二人の発見は容易そうだ。まぁ確かに向こうが俺のことを見つけるのはちょっと大変そうだけど。


いくら美形に属するとはいえ俺の外見は完全に日本人のものだから、俺個人を気にする人間はそれほど多くない。更には俺の体のサイズは明らかに小さいので、人の森の中には上手く隠れるだろう。


だからって、両側でお手て繋いではどうなんだ。


俺の頭には今、有名な宇宙人の捕獲の写真が浮かんでいる。


というかだ、


「ミズホはともかくサヤカは手を繋ぐ必要はないだろう」

「だって二人が手を繋いでるのに私だけ一人手ぶらなのは寂しいじゃないか」


どういう理由だよ……


結果として二人に巻き込まれて、俺も注目を浴びる形になっている。

金髪と銀髪の美女に両手をひかれた、ぱっと見は小学生か中学生くらいに見える少女とか一体どういう関係だろうと思われてるんだろうな……ちなみに俺の予想だと迷子が一番確率高い。


……知り合いには見られたくねぇー。


すでに近所のおばちゃんには見られたけどな! 見知らぬ外人が一緒だったから話しかけてはこなかったけど、こんどあった時いろいろ聞かれそう。


まぁエンカウント率はさして高くないから、しばらく顔を合わせない事を祈ろう。


人ごみの中、妙に道をあけられながら俺達は進んでいく。モーゼか何かかな? 外人見ただけでわりと距離取ろうとする人いるよねー。この二人は普通に日本語いけるからそんな警戒する必要は全くないんだが。


ちなみにだが、目的というものは特にない。この辺りにはあまり名所と呼べるところはないし、電車を使って移動するような場所にはいかなくていいとのことだったので。


ほんとうにぶらぶらしているだけだ。


本来ならそんな事する時期でもないんだがなー。


「う」


曇っていようが8月だ、暑い。頭から一筋の汗が垂れてくる。それを拭おうにも両手が塞がっているので一度離してもらおうとしたら、それより前にサヤカの手によって顔を拭われた。


その様子を見ながら、ミズホが言う。


「日本の夏は暑いわね。アキツの方が全然過ごしやすいわ」

「あー、それは激しく同意だわ」


アキツ側は日本側に比べて四季の気温変化がやや少なめなので、日本ほど暑くならない。更に向こうの夏はカラッとしていて日本のように高温多湿のじめじめした暑さじゃないから、過ごしやすさは圧倒的にアキツ側が勝るだろう。


普段はあんまりこっちで日中外に出る事は少ないが(尾瀬さんの所へ向かう時くらいだ)、こうやっていざ出かけるとそれを実感する。


「有人は結構汗かいているけど大丈夫か?」

「今の所はな。というかさ、手も結構汗かいてると思うんだけど気持ち悪くないの?」

「「全く」」


ハモんな。


そういやこの二人は全然とはいわないけど、割と汗かいてないように見えるな。


「お前等こそ大丈夫か? 熱中症とか勘弁してくれよ?」

「水分もちゃんと取っているし、体調の不良も全くないから今の所は問題ないがな」

「とはいえ、ちょっと疲れたことは確かね。──あ、ユージン」

「有人」


ミズホの呼び間違えを即座に訂正しておく。こっちの世界では俺はユージンではないので。


「ごめんごめん。ねぇ有人、あれカフェかな?」


そう言ってミズホが指さした先には、一つの店舗があった。入った事ない店だが看板を見る限り──うん、喫茶店だな。


「ああ、カフェで間違いなさそうだ」

「おっけ。だったらちょっとあそこで休憩しない? 話したいこともあるし」



現在若干二名が超過保護モードに突入しております。

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