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週末の精霊使い  作者: DP
3.ようこそファンタジー世界
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防衛戦②

「うわっ……」


衝撃を受けたのは機体の上半分だった。その為、機体がバランスを崩し体勢を崩しそうになる。


が、その傾きは途中で止まった。


「……パストロさん、ありがとうございます」


後方にいたパストロさんが、倒れかけた俺の機体を支えてくれたらしい。礼を言いながら、俺は機体の体勢を立て直す。


『大丈夫かの、お嬢ちゃん』


追撃があった場合のフォローに入ってくれたらしく、気が付けば俺の前に進み出ていたアルバさんの方から通信が入る。


「問題ないです。ただ、今俺何に攻撃喰らいました?」


普通に考えればあの蠅の突撃を受けたことになるんだが、倒れる直前までモニターにはそんな姿は映っていなかった。


衝撃自体は正面から来たし、何よりあのサイズだ。見落とすとは思えない。


俺の放った一撃、それが拡散し周囲に広がっていった光の合間を縫って何かが一瞬見えた気もするが……


聞いたアルバさんも、返してきた答えは「よくわからん」だった。


『うっすらと紫色の何かが飛んできたようには見えたがの。お嬢ちゃんの機体に当たって爆発しおった』


パストロさん、フレイさんからも同じ回答だった。


という事は、実体じゃなくてエネルギー弾を喰らった形か。


空に視線を向ける。


そこにはいまだ、数多くの巨大な蠅が飛び交っていた。


勿論、先程の俺の一撃で数は大幅に減っている。少なくとも半減くらいはさせられたようだし、生き残っている連中も大半はダメージを負っている。俺の渾身の一撃は充分な効果と出したといっていっただろう。


その生き残りの連中も、一体ずつ確実に潰されていっていた。


「うお……空飛んでいる」


顔面強打の王子様含め5人の英雄級達は何かの力を借りるでもなく空を舞い、その腕から放たれる雷撃や火弾、または手に持った光輝く武器によって蠅たちを駆逐していっていた。絵面は完全にファンタジーの光景だ。


更には精霊使い達も順当に成果を上げている。


主力は銃器が主武装のヴォルクさんだ。先程まで殊勲の役目を果たしていた彼は、今も獅子奮迅の働きを見せていた。そこに更に、パストロさんが参戦し、近接戦が主武装のアルバさんとフレイさんも手持ちの武装で攻撃を加えていく。


浦部さんは【千手千見観音】を発動しているが、砦の防御を最優先しているようだった。率先して攻撃は行わず、砦の方へ突撃をしてくる蠅だけを術で生み出した腕で叩き落としている。


迎撃は順調に行われている。動きが速いのとサイズが大きいのもあって次から次へという訳にはいかないものの、俺が今見ていた間だけでも七~八匹が撃墜され消失していった。


だが──


俺が気づいているくらいだ、恐らく他の皆も気づいているだろうが……


数が減って無くはないか?


元はおそらく50から60、そこから更に二桁近くが撃墜されている。単純に考えればもう20匹も残っていないハズ。だが、蠅の数はまだ30近くが飛び回っていた。更には、


無傷の怪物が増えている。


先程まではほぼダメージを受けた個体しかいなかったが、今は全体の3割ほどは無傷の個体だ。


自己回復能力を持っている可能性もあるが、どちらかというとこれは、


『どこからか新しい個体が増えているね』


通信機から声を響かせたのはフレイさんだった。


彼の言葉の通りだ。見ている限りダメージを負った個体が回復している気配はないし、どこから来ているかと考えるべきだろう。


問題はどこから来ているからだ。少なくともどこか遠方から飛来している気配はない。となると、飛来する蠅の下に広がる広大な森……その中から湧いてきている?


ただ、一点から出没しているのであれば気づきそうなものだ。となると、ここがファンタジー世界であることを考えればだ。


「もしかして彼らの言っていた召喚士が近くにやって来ている?」

『可能性はあるさねぇ』


俺の漏らした言葉に、同意してきたのは浦部さんだった。


『明らかにどこからか湧いてきてるさね。召喚士かどうかはわからんけど、間違いなく蠅を産み出している輩はいそうさね』

『だとしたら今やっていることは不毛なモグラたたきだな。バアさんの術で探せないか?』

『範囲が広すぎるさね。局長、こっちの蠅はあたしらで何とかするから、上で飛んでいる連中に探すように伝えてくれんかね? 拡声器は……うん、アタシの所でセットしたさね』

『了解しました』


周囲に、再びセラス局長の声が響き渡る。


すると、空を飛び回っていた5人がそれぞればらけて森の方へと飛行して行った、こちらの提案を飲んでくれたらしい。


どうやらまだ会ったばかりなのに関わらず、それなりの信頼は置いてくれているようだ。だとしたらその信頼には答えないとな。


正直な所、敵との相対距離が近すぎて俺の得意とする距離ではないが、霊力弾を拡散させれば当てることはできるだろう。勿論、魔術はなしの通常の拡散弾だ。【八咫鏡】の発動はすでに止めている。すでに乱戦状態で撃ちづらいし、下手すりゃ飛んでる味方に当たるからな。あと普通に消費がキツイ。


こちらの方へ向かってくる奴に狙いをつけ、銃撃を放つ。


狙った個体は自分を狙う力に気づき咄嗟に軌道を変えようとするが、その眼前で数本に分裂した光に貫かれた。その一撃で消滅まではいかなかったが……あ、勢い失ったところをフレイさんに叩き落とされた。


よし、正面からなら充分行けるな。少なくともこいつらはこっちの世界の物理法則を無視したような動きはしない。ならばある程度は軌道を読めるので、その軌道上に拡散霊力弾の網を広げてやればいい。


ただ、そっちだけには集中できないのが面倒なところだが。


次に標的と定めた個体に対して再び引き金を引きながら、周囲に視線を配る。


先程俺に攻撃を加えてきた奴。少なくとも空を飛び回っている蠅ではないだろう。連中の攻撃方法は体当たりのみで、遠隔攻撃をしている姿は一切見受けられない。なので別にあの攻撃を放った個体がいるハズだ。


それが蠅を呼び出している奴であるなら、ヴェキアの英雄さん達に任せておけばいい。だけど他にもう一体いる可能性もある。その場合、どこかに潜んでまた狙撃を狙っているだろう。


正直また狙われた場合躱せる自信はない。全開駆動(フルドライブ)中とはいえ、精霊機装の巨大な体で見えないところから狙撃回避は困難だ。俺弾道予測で避けるタイプで、反射神経で避けるタイプじゃないし。


だが、躱せないとしても、どこからか攻撃してきているかを掴めれば──


正直、さっきの一撃はかなり痛かった、ダメージ的な意味で。すでに消耗している今の状況では、そう何発も喰らっていられるレベルじゃない。だから次の攻撃で、確実に位置は掴みたい。


周囲に気を配りつつ攻撃は出来ないほど素人ではないので、こちらに向かってくる蠅たちへの狙撃は行いつつも視線を巡らし続ける。その分後方に注意を払う余裕はなくなるが、俺の背後にはヴォルクさんや浦部さんがいる。任せてしまっていいだろう。


いつだ、いつ来る?


次の攻撃が俺を狙ってくるとは限らない。それを頭に入れて広範囲に視界を巡らすが、今の所攻撃の気配がない。


代わりに、森の上空を飛び回っていたヴェキアの英雄たちが一つの動きを見せているのに気づいた。


5人の内、俺達と顔合わせ済みの3人以外の内の1人が、ある一点で止まっていた。そしてそこへ向けて、他の4人が向って行く。


──これは、蠅を撒いている奴を見つけたか?


蠅の残数は未だ20を超えている。だがこれ以上増え無くなれば、充分掃討できるレベルだ。そして蠅を掃討できれば、後は狙撃主一体を探すだけでいい。


これで戦況が動くか、とほんの小さく安堵の息を吐いた時だった。


森の中から突如打ち出された紫色の輝きが、宙に浮いていた英雄に叩きつけられた。








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