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週末の精霊使い  作者: DP
3.ようこそファンタジー世界
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漂流世界探索


精霊機装を、割とゆっくりとしたペースで歩かせて20分とちょっと。


最初はあまり変哲もないと思っていた光景も、進むごとに変化を見せてくる。


植物に関してはいまだに違いがよく分かっていないが、動物に関しては俺でもわかるレベルで明確だ。


徐々に姿を現し始めた獣たち。その姿はアキツや日本、或いはテレビなどでよく見かける姿に似ているものもいれば、お前絶対こっちの世界に類似生物はいないよな? といった異形といえる姿の物も存在していた。


そんな珍しい姿をついつい目でおっかけつつ、ようやく感じ始めた異世界の気配に少々気持ちが昂り始めた──そんな時だった。


状況が動いたのは。


『皆、ちょいと止まりな』


通信機から響いたのは、浦部さんの声だった。


そういえば通信機、世界によっては通じないケースもあるらしいが今回はきちんと外部とも連絡が取れている。事前にドローンを突入させて確認できたそうだ。


じゃあそのままドローンで探査すればよかったのではと思ったが、どうやら機体の操作が不能になるらしい。恐らく制御系の部品がこの異世界では作動しないとのことだった。


だからこその精霊機装の出番であるわけだが。精霊機装は動作時その全身を精霊使いの霊力で覆っているので、他の世界の影響を受けないとのことだ。うん、そういう所はファンタジーだよね、アキツ。


閑話休題。


『どうしたんじゃ?』


先頭を進んでいたアルバさんがその言葉に応じて足を止め、他の皆も同様に機体を止める。


ちなみに俺は丁度モニターの隅に現れたもこもこな白い謎の動物に意識を持っていかれてたため、止まるタイミングが2テンポくらい遅れた。ある程度機体間の距離があるから前のアルバさんにぶつかるような事はなかったものの、ちょっと恥ずかしい……


『ユージンちゃん、どうしました?』

「いえ、ちょっとぼーっとしていただけです、すみません。どうしたんですか、浦部さん」

『進行方向から見て11時の方向。モニターのズームを最大にしてみるさね』


言われた通りにしてみる。11時方向は鬱蒼とした森が広がっている。あまり変わらない景色を最大距離でズームして進めていく。


そして、浦部さんがそちらを見るように指示した理由が分かった。


「なんだこれ……かなりでかくないですか?」


そこにいたのは、巨大な──いや本当なんだこれ? コウモリのような羽、頭部は蛇のように伸びており、胴体は……なんだろう、恐竜? それがホバリングをしていた。拡大倍率と距離感からかなりでかいハズだ。下手すれば精霊機装よりも大きいのでは?


「造形がちょっときもいな……」

『いや、それは否定しないけどそれじゃない。そいつより少し左の方を見てみるさね』

「左……あ」


そこには明らかに人工のものに見える、巨大な壁が見えた。更にその壁の上から、雷や炎のようなものが怪物の方へ飛んでいるように見える。


「これは……」

『どうやら、ある程度文明を持つ存在がいるのは間違いないようさね』

『城塞の上から飛んでいるのはこれ、魔法か? 撃っている奴の姿が見えるか?』

『距離があるし、城壁の影に隠れてちょっと確認はできないな』


ヴォルクさんとフレイさんがそうやりとりをしながら、少し位置取りを修正した。多分こっちを護りやすいポジションにだ。


いや、向こうまだこっちに気づいてないし、そもそもまだめちゃくちゃ距離があるよ? 過保護過ぎでは?


ただもしかしたら別の意図があるかもしれないし、そうなると自意識過剰をさらけ出す事になるので言わないけど。


『セラス局長、どうしますか?』


パストロさんの問い。

セラス局長は少しだけ手元の端末に目を落とし、それから口を開く。


「あちらへ向かいましょう。とにかく接触しないことには話になりませんし」

『向こう側から先制を受けた場合は?』

「この距離ではさすがに無理ですが、順次解析を行います。威力レベルが高かったり意志の疎通が不可能な場合は即時反撃指示を出させて頂きますので、それまでは反撃は控えてください」

『了解』


セラス局長の言葉に全員の声が重なった。


俺の場合は消耗控えてって言われてるし、難しく考えなくていいかな。戦う必要性が出てきたら動けばいいや。


『それじゃ進むとして……直進は無理じゃな』

「ですね。森の木をなぎ倒しながら向かったら、印象悪くなるどころの話じゃないだろうし」


森の木々をなぎ倒してこんな鋼鉄の巨人が向かってきたら、明らかに敵対の意志があるとしか思われないだろう。


「本来なら生身で行った方が敵意が抱かれることはないんでしょうけどね」

『そうでしょうが、こればかりは仕方ないですね。相手がどのような存在かもわかりませんし、環境的な危険もありますからね。まぁ何があっても護り切りますが』

『さすがに無理がないさね? 生身の人間を護るのは……いや、アンタはやろうと思えばいけるのか』


ヴォルクさんの魔術は周囲と隔絶する結界を張れるから、確かに生身の人間でも護りきることは可能だろう。だけど確か、


「あれ張ったまま移動させられませんよね?」

『ユージンちゃんが望むなら、私は限界を超えて魔術を進化させます』

『進化させられるなら普通にリーグ戦でやらんか』


そもそもそんな簡単に進化させられるようなもんじゃないし、移動可能だとそれこそチート能力すぎるからさすがに無理では?


『アホな事言ってないでとっとと進むさね。アタシらの時間は有限だよ』

『そうだね。こうしているうちにも霊力は消費しているわけだし』


浦部さんの言葉にフレイさんが同意の声を上げる。


『そういうこったね。ほれ、ロイ、進め進め』

『わかっとるわい。森を迂回する形で進んでいくぞ』

「俺の方は向こうの方そのまま映しておきますね。位置的に俺が一番注意を向ける余裕がありますし」

『ユージンさん大丈夫かい? 腕を引こうか?』

「あはは、フレイさんでもそういう冗談いうんですね。大丈夫ですよ、ちゃんとモニター分割表示してますし」

『そ、そうかい?』


武骨な鋼鉄の巨人が仲良く手を繋いでいる姿を想像してしまい、思わず笑いが漏れてしまう。

そういえばフレイさんから腕を引くなんて言葉がでるなんてね。まぁ生身じゃないから何も問題ないんだろうけど。


そして再び、各機体が動き出す。


俺は先頭を歩くアルバさんの機体の背中を見つつ、遥か遠くの光景を移した画面を眺めながら機体を歩ませる。


スマホ歩き……いや、どちらかというとスマホ見運転かな。足元はもうちょっと気を付けないとか。変に動物とか踏んじゃうとあれだし……


そのまま、再び淡々と歩き始める。今度は先程のように見知らぬ動物を追いかけるような余裕はない。


遠方の戦闘は、佳境を迎えているようだった。宙を舞う怪物が城壁の方へと襲い掛かり、そこに対して魔術か何かによる攻撃が撃ち込まれていく。更には怪物の周りを舞う何か小さなものが見えた。サイズが小さくてよくわからないが……恐らく人型の何かか?


アキツに彷徨い人(ワンダラー)としてやってくる存在の内、意思疎通が可能なのは人型の割合が多い。やはり進化の仕方というのは似通う物なのだろうか。


城塞を作る文明を持ち、人型。意志疎通が可能な相手だといいけどと思う。正直人型の存在と戦うのは御免こうむりたい。


あ、いかんスタンピードのアレを思い出した。うえぇ……


あれは確かに人型だったけど、ハリボテだってわかってたので別枠だ。


なんにしろ、近寄っていくしかない。ただひたすらに機体の足を進めていく。


それから5分くらい経過した頃だろうか。モニターの中に映し出される姿に変化があった。

宙を舞っていた怪物の姿が消えたのだ。下に落ちて行くのが見えたので恐らく倒されたのだろう。


それを他の皆に伝えようとしたその時、俺が口を開く前に通信機ヴォルクさんの声が響いた。


『2時の方向! こちらに向かってくる姿あり!』













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