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週末の精霊使い  作者: DP
3.ようこそファンタジー世界
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貴方の未来が不安です


二人に揃って手招きされたので、俺は小走りに二人の元へと駆けよる。


えっと、まずは……


「エルネスト所属、ユージン到着しました」


ペコリと頭を下げて、二人に対してそう挨拶をする。


それに対して、セラス局長はニコリと柔らかい笑みを浮かべつつ会釈を返してきた。


「今回は要請に応じて頂きありがとうございます。まだ時間はありますので、どうぞお座りください」


そう言われ、どこに座ろうか迷ったが、浦部さんに手招きされたので彼女の座るソファに並ぶように腰を落とす。


すると、浦部さんが俺の頭の上にポンと手を置いてきた。


「ちょ、浦部さん?」

「直接会うのは大体半年ぶり位さね?」


突然頭に触れられて慌てる俺の反応など見えていないかのように、彼女は顔を覗き込んでそう聞いてくる。


──浦部ユキ江。現役最強の精霊使い。


本来なら同業者とはいえ、これまでC1やB2でしかなかった俺とは住む世界の違う、いわば天上の存在だ。


だけど以前の深淵絡みの事件、そしてその後も事件の絡みで番組や取材で一緒になる事がちょくちょくあったため、顔見知りの知人と言える程度くらいまでなら親しく慣れていた。浦部さん気さくだし、なんかサイズ的に一番下の孫娘を思い出すみたいで、妙に気に入られている節がある。


その分ちょこちょこ子供扱いみたいな事はしてくるけど、別にマウントとるようなタイプのあれじゃなくそれこそ普通に孫娘とかにやるような感じだし、そもそも俺以外にも似たような感じなので別に嫌じゃないけどね。


そんな彼女だが、シーズン再開以降は殆ど接点はなかった。流石にSリーグの人間と一緒になるなんて試合会場が一緒になった時位以外はそうそうないからね。


確か一番最後に会ったのは、ええと


「3月のエレメンタラーズアワードであっているので、2か月とちょっとぶりですね」

「ああ、そうだそうだ。いかんねぇボケが始まったかね?」


いや、笑いながらそう聞かれても、何て返していいのかわからないんですけど。


「……アワードの時はちょっと話したくらいでしたし、がっつり一緒だったのは11月の収録の時だったからあながち間違いでもないですよ」

「あはは、気を遣わせちまったかい? ──しかしその半年前の記憶と照らし合わせても、アンタは変わらないさね」


多分見た目まんまの年齢の方だとみられているんだろうな、と思い俺は言葉を返す。


「俺の体、年齢的には実年齢──今25ですけど、それに近い状態なんだそうです。なんで、成長期もう終わってます」


ちらりとセラス局長に視線を向けると、こくりと頷かれる。


「ちょいと失礼な事いっちゃったっかね?」

「いえ、気にしてないですよ」


実際今はもう本当に気にもしていない。この身長での生活にも慣れてきたしな。


ちなみにこないだ一応測定したけど、身長は変化後すぐに測った時から1mmも伸びてなかった。


胸? 測ってないけどブラがきつくなってないから変わってないだろ。正直こっちはむしろそれの方が助かる。今でもたまに邪魔に感じるのに、これ以上でかくなられてもな。


でかい胸は人についてると嬉しいけど、自分についてても別に嬉しくないというのはこの体になって凄く実感した。少なくとも俺はそう思う。


それはさておき。


浦部さんが俺の頭から手を降ろしたので、俺は体を彼女の方へ向けて今度はこちらから問いかける。


「浦部さん、ここにいるってことは貴女も護衛ですよね?」


彼女はコクリと頷く。


「調査隊の護衛として呼ばれたさね。まぁそういう役目であれば、アタシが呼ばれるのは当然だろう?」


そう言って彼女は今度はにやりと笑う。

確かに。浦部さんであれば、これ以上ない人材だろう。ただそれで思ったのだが、


「ラブジャからは浦部さんだけですか?」


戦闘能力で言えば浦部さんの所属するSリーグの最強チーム、ラブジャのメンバーを呼ぶのが一番間違いがない。だが、今ここには浦部さんの姿しかない。


俺の問いに浦部さんは頷く。


「ウチのチームから呼ばれているのアタシだけさね」


その答えを聞いて、俺は今度はセラス局長の方へ視線を向けた。


「あの、今回って精霊使い何人参加するんですか?」


まさか浦部さんと俺だけってことないよな? いくら浦部さんが最強だとはいえ、さすがに二人、しかも片方が近接死んでる俺とか心もとなすぎる。


その思考が表情から見て取れたのか、セラス局長は最初に「ご心配なく」と告げて、


「全部で6名。戦闘の実力と、魔術の内容で選ばさせて頂きました。──ああ、丁度お見えになりましたね」


こちらを向いて喋っていたセラス局長の視線が入り口の方へ移る。

その視線を追うと、丁度自動ドアをくぐりぞろぞろとビルの中に人が入って来た。その数4人。


「あ、あれっ?」


その姿を見て思わず困惑の声が漏れてしまう。全員見知った顔だったのだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


それから大体30分後。


参加する精霊使いが全員集合し、セラス局長から今回の件の説明を受けた俺達は今、揃って大型の車両の側にいた。


今回、かなりの長距離の移動になるため、その負担の軽減の為に用意された、中が部屋の様に改造された大型のだった。乗るのは俺達精霊使いだけ。なんだか申し訳ない気がするが、俺達の本番は明日の調査だという事でありがたく享受させてもらうことにした。


因みに周囲には他にも大量の車両がある。各チーム毎にトランスポーターと数名の整備スタッフが乗った車両、生身の護衛チームの乗った車両、それから論理解析局のスタッフの乗った車両や様々な機材の乗せられた車両、今夜の宿泊用らしい馬鹿でかい車両もある。そんな車が大量に集まって総勢27台にもなる大部隊だ。


それらの車の周囲でスタッフ達が忙しなく走り回っている中、今は待つ以外特にすることはない俺達は会話を弾ませていた。


「いやぁ、まさかユージンちゃんも一緒だとは。やる気が格段にあがりましたね」


そう口にするのは、彫が深い精悍な顔立ちの男性──ラムサスさんだった。ものすごい笑顔である。


この表情、見覚えがあるんだよ。こないだファン感謝祭でファンの人の多くがしていた顔だ。本当にこの人はファン心理なんだなぁ、と今更ながらに思う。


「最初からやる気は出しておくべきだとは思うがのう」

「元々ちゃんとやる気はあったが、それが150%くらいになったと思ってくれ」

「それ早々にオーバーヒートして燃え尽きるオチになりませんかね?」


そう両側からラムサスさんを挟んで突っ込みを入れているのが、アルバさんとパストロさん。

アルバさんは2mを軽く体躯を持つ、西洋竜の面を持った竜人。パストロさんは銀髪に眼鏡の、線の細さを感じる青年だ。秋葉ちゃん達のチームメイト、アズリエルの所属メンバーである。


そしてもう一人は──微妙に俺から距離を取っている青年。


「あんた相変わらず女の子は駄目なのかい。アタシとかは大丈夫なのにねぇ」

「上か下に年が大きく離れていれば大丈夫なんですが……年の近い女性は、その」

「ババアか子供じゃないとダメってのは面倒だねぇ」


浦部さんに呆れた顔をされている彼は、フレイゾン・イスファ──フレイさんだった。


「フレイさん、俺の方もダメなんですか?」


他の女性に比べれば、俺なんかは平気だったはずだが、今日はちょっと以前よりも距離を取られている気がする。


正面から瞳を見据えてそう聞くと、彼はちょっと紅潮して顔を背け、


「いや、ユージンさん、今日はその、可愛らしい服なので……」


そう言われて、自分の服を見下ろす。


今日の格好はタンクトップにダークグリーンのカーディガン、それにスカートだ。さすがにもういい加減この程度の格好することは抵抗なくなっているから普通に女性っぽい恰好ではあると思うが、可愛い格好かと聞かれると割と地味なのでは? と自分では思う。


でもよくよく考えたら、フレイさんと会う時って大体試合の時だからチームコスチュームだったな。水着の時は思いっきり逃げられたし。あれ、もしかして俺でも女性を意識させるような格好だとダメなの?


……難儀だなぁ。


確かフレイさん、俺と年齢そんな変わらなかったよな。この年でこれって、この人ちゃんと将来的に結婚できるんだろうか。おね……おにいさんちょっと不安になっちゃうよ。


いや、結婚できるかって話だと俺も別の理由で人の事いえないんだけども。



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