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週末の精霊使い  作者: DP
3.ようこそファンタジー世界
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のんびりお風呂


「ご友人なんですか? パネラさんと」


そう聞いたのは金守さんだった。


ミズホはその問いに対して、口元に人差し指を当て


「んー。友人という程は親しくはないかな。ただ、仕事で何度か一緒になったことがあるから」

「あ、そっか。ミズホさん、モデルさんですしね」


そういう秋葉ちゃんの瞳がなんかキラキラしている気がする。やっぱり女の子的には憧れ的なものがあるのかな?


可愛いなと思いつつ、ちょっと揶揄ってみたくなり俺は口を開く。


「秋葉ちゃんもモデルとかアイドルとか出来そうだよね、可愛いし。いろいろ誘いとか来てるんじゃない?」

「ほぇあ!?」

「そうですね、秋葉ちゃんは可愛いですからね。ユージンさんと並んでアイドルとかいいかもしれませんね」

「……いやいやいや、秋葉ちゃんと並ぶなら金守さんでしょ?」

「それなら私も含めて3人でしましょうか。ね、秋葉ちゃん?」

「あ、うん。そうだね?」


秋葉ちゃん、その反応、理解がおいついてないよね? それなのに頷いちゃうのは良くないと思うよ。


「フフ、それじゃあアタシも乗りましょうか。あ、年齢制限があるかしら」


ミズホ、乗ってくるな!


「なんだ、4人でアイドルデビューするのか? 応援するぞ」


他人事ぉ!


「それでどうしますか? ユージンさん」


にっこりと、だが明らかに秋葉ちゃんに向けるものとは違う圧のある笑顔と共に、金守さんが声を掛けてくる。


そして、俺は察した。ここで向こうが引く事を期待して「じゃあやるか!」的な事を返したりすると、彼女は「じゃあ話を進めておきますね」とかいって、結果的に本格デビューはないにしても真似事をやる羽目になる。


秋葉ちゃんが「アイドルとか絶対無理」とか考えているなら、金守さんはこういう返しは絶対してこない。だけどこう返してきたってことが「ちょっと興味があるよね」くらいの話をしてるハズ。


そうなると、金守さんにはストッパーがないからそのまま攻めてくる。彼女はそういう子だ。最近になってそう気づいた。


なので俺は座っていたベッドから降りると、秋葉ちゃんと金守さんの二人の前に正座して頭を下げた。


「すみませんでした」

「あらあら、なんで謝るんですか? 秋葉ちゃんも、一緒にやってみたいですよね?」

「千佳ちゃんとユージンさん達と一緒ならちょっとだけなら……あ、でもでもそんな簡単な話じゃないよね! 軽い気持ちで言っちゃうとアイドルの人たちに失礼だし」

「ふふ、本格的にやるのはさすがに無理ですけど、そういった格好をするくらいな大丈夫ですよ? そういう企画の提案はありましたし、何よりユージンさんのそういった姿、見たいでしょう?」

「……うん、みたい」

「いやいやいやいやいや」


止めないと不味いと判断して秋葉ちゃん達の会話に介入する。


「真面目に無しで。俺が無理なんで!」

「……そっかー、残念ですけど仕方ないですね」

「フフフ、本当に残念ですね」


よかったー、秋葉ちゃんが先に反応してくれたおかげで止まった。


うん、学習した。

俺が一番やりたくないのを揶揄いのネタにしちゃだめだね。しかも金守さんやミズホみたいなのがいる時に。そもそも秋葉ちゃんみたいに素直な子を揶揄うなって話だけど。


なんかそういう番組企画があるような話してたし、これまかり間違って実現してたらパネラさんの信用完全に失って押しかけられた気がするぞ。あぶねー。


「なんだ、アイドルはやらないのか? いい所まで行けると思うが」

「……サヤカさん、その話はもう終わったんで」

「というか、現実的な話としてフェアリス見てればわかるけど、私達には無理よね。ユージンや秋葉ちゃん達は精霊使いと並行で活動は現実的に無理だし、アタシにしたってこれ以上精霊機装のトレーニング時間削りたくないし」

「お前そこまで理解してて……」


そう言いながらジト目で見たら、にっこり笑顔を返された。

あーはいはい、最終的に俺が謝るところの流れまで見えてたわけですね。なんで、戸惑う俺が見たくて乗ってみたと。俺の周りはいぢめっこばかりだわ!


秋葉ちゃんは違うけど。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ん~っ」


風呂の中で足を伸ばす。湯船が広いので全力で伸ばしても余裕だ。ま、今の体のサイズだと自宅の風呂でもそこまで窮屈さは感じないんだけど。


今、俺が入っているのは部屋についている風呂だった。部屋風呂と言ってもビジネスホテルについてるようなこじんまりとした奴ではない。外の景色がよく見え、数人で入ることもできそうな露天風呂。さすが高級リゾートホテルで、尚且つお値段高めの部屋だ。


時間は夜。空には月こそ見当たらないものの、いくつもの瞬く星が浮かびこちらを照らしている。


立ち上がれば、眼前に広がる静かに佇む湖面が目に入るハズだ。


いやー、素晴らしいね。


ホテルの最上階に近い階だし、今は殆ど他の宿泊客もいない状態だ。ホテルの中からも外からも人の気配は殆ど感じないので、非常にのんびりした気分で入れる。


昼間、あの後ももう少し雑談した後、俺達はそのまま5人でホテルの敷地内で散歩したりしてのんびり過ごした。それから夕方少しだけ走り込み(一人で行くつもりだったがこれも全員ついてきた)、5人で食事をして、今はのんびりこうしているわけだ。


ちなみにフェアリスの面々は撮影が終了した後、食事だけして帰っていた。次の仕事があるらしい。やっぱり大変なんだね……


他の4人は、今頃揃って大浴場の方に行ってるハズだ。こんだけいい風呂があるなら部屋風呂でいいじゃんって気もするけど、まぁせっかくこういう機会だしでかい風呂で一緒に入りたかったりするのかね? 


あ、ミズホが俺も誘ってきましたけど当然断りましたよ?


秋葉ちゃんとか


「もしかして、ユージンさんもお風呂一緒に入るんですか?」


って聞いてきたから、いやいや勿論一人で入るよって答えたら


「あっ、そうですよね、ですよね!」


ってちょっと顔を紅くしてこくこく頷いてたし。後、俺が答える前は金守さんが圧のある笑顔でこっち見てた。


うん、これが普通の反応だよね?


一緒にいる時間の長いミズホや男時代の俺と付き合いのないサヤカは気にせず俺と風呂に入ろうとするが、会う時間自体はさほど長くはない(基本的には土曜の朝、アキツに向かうときだけだ)秋葉ちゃんや金守さんとしてはまだ俺の事を男として意識している部分があるだろうしな。秋葉ちゃんたまにお兄さんって呼んでくるし。


……男時代の一緒にいる時間も長かったミズホに関しては、そもそもこの姿になってそれほど立たないうちから誘ってきたので、時間がどうのではないけども。


なんにしろ、俺は女性陣と風呂に入る気はない。今や自分も同じ体とはいえやっぱり視線の持って行き所には困るし、なんとなく落ち着かないからな。風呂はのんびり入りたいもんだ。


「ふぇー」


とりあえず、今日はこの風呂をたっぷり堪能しよう。さすがにこんなロケーションはめったに体験できないだろうし。


肩まで浸かっていた体を起こす。


冷たい夜風が肩や胸元を撫でていく。火照った体に心地よい。


ちょっと体を起こせば、遠くに湖の湖面が見える。昼間はいくらか船の姿が見えたが、今はただ静かに佇んでいた。


「ん?」


そんな中、何か光が瞬いたように見えた。湖の湖面? いやこの位置から見えるとなると違うな。もうちょっと高い位置……或いは大分遠くの場所のハズだ。


その光が気になって、思わず湯舟から立ち上がる。外に人はいないし、そもそもちゃんと目隠しはあるから見られる心配はない。


太腿から上を冷たい空気に晒しながら、光がした方を眺める。


が、そちらの方には今は何もなかった。闇が広がっているだけだ。


「……なんだったんだろ」


湖の反対側で何かやってるんだろうか? ま、気にしても仕方ないか。


俺はゆっくりと再び湯船に身を沈めていく。

そうして数分後にはそんな光の事などすっかり忘れ、俺は極上の露天風呂をのんびり楽しむのだった。






いつもの事ですけど本当にタイトルが浮かばない。

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