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週末の精霊使い  作者: DP
3.ようこそファンタジー世界
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宣戦布告


というわけで、ゴールデンウィークである。


良く晴れた青空の下、穏やかな波の音が静かに響く湖の岸辺。その近くに立つ大きな木の下に、今俺はいた。


仕事で。


いや、今は仕事中じゃないし、仕事でここに来るのは納得済みでもあるんだけどな。


現在地は、前回スタンピードの時にも訪れたロスティア。


その北部には大きな湖がある。


異世界アキツにはちゃんと海もあるんだが、六都市からは日帰りは不可能なくらい距離がある。そのため泳ぐ場所としては大規模なプールを持つ施設があったりするのだが、あくまでプールなので景色として楽しむには向かない。


そのため、広大な面積を持つこの湖は観光地としてかなりの人気があり、湖岸にはいくつもの宿泊施設が建設されている。


今俺がいるのもその中の一つだった。


ここはかなり広大な広さを持つホテルの敷地内、しかも現在オープン前なので人の姿もほぼない。静かでとてもよろしい。


今回のここでのお仕事。それはオープンに向けての広告用の撮影だった。


ちなみに水辺だからといって水着撮影はない。まだ5月の頭でその格好は寒いし、何よりユージンちゃんNGお仕事リスト(本当にこのファイル名で作成されている)の中にはきっちり水着NGと記載されている。


何より、秋葉ちゃん達も了承しないだろう。


──そう、本日の撮影は秋葉ちゃん達アズリエルと合同だった。


いや、正確にいえば三チーム合同だ。エルネスト、アズリエル、そしてフェアリス。その女性陣、合計9名が今回の撮影に呼ばれている。


ぶっちゃけ、現在の3強美(少)女と噂されているチームが集められた感じだ。実際美人美少女揃いだしな。


その中に自分も含まれているのがあれだが、客観的な目で見れば間違いなく俺も美少女ではあるので。


でもここまで人数集めなくてもいいんじゃね? とは思う。フェアリスの4人だけで充分では?


まぁクライアントの要請だから仕方ない。ただし、今回のクライアント自体はウチのスポンサーではないけれども。ウチの大口スポンサーと今回のクライアントに取引関係があり、その繋がりで依頼が来た形だ。


本来ならシーズン中なら依頼を受けないんだけど、今回は特例で受ける事にした。


一つは、写真の撮影だけだという事。演技とかをする必要もないし、撮影時間もそれほどかからないとの事。これCM撮影とかだとNGで迷惑かけたりくっそ恥ずかしい演技させられたりするけど、撮影だけであれば大抵そこまでのことはないので気楽だ。


そしてもう一つ。こっちは仕事の内容というかサービスなんだけど、写真撮影後、オープン間近のこのホテルで一泊させてもらえるとのことだった。スタッフは必要最低限しかいないが、これは非常にありがたい。


何せこの広い敷地内が貸切だ。


元々、今回の休みはここ最近忙しかった俺達へのリフレッシュ休暇として、ミズホ達と一緒にどこかに遊びに行く予定を立てていた。たださすがに今の知名度だとどこの観光地にいっても目を引いてしまうので、のんびりするのにどこがいいか頭を悩ませていたのだが……そこにこの話が来たので、渡りに船で飛びつかせて貰った。


秋葉ちゃんの言っていたのもこの件だ。向こうの方に先に話がいっていたらしい。


他チーム合同とのこういう撮影って初めてだよなー。


とはいえ、各チーム個別で撮影を行っているのであまり合同って感じはしないけど。今はアズリエルの二人が撮影されてて、俺達の順番はその後。それまでは自由にしていいとの事。ただし衣装は汚さないように。


──今の俺の格好は真っ白の肩紐ワンピースに麦わら帽子。これが今日の俺の撮影衣装だ。


これで撮影場所がひまわり畑とかだったら企画者は何らかの幻覚を見ていそうだが、そんなものはここにはない。というか季節外れだ。


季節外れといえば、この衣装思いっきり肩が出てるから湖の方から来る冷たい風をもろに感じて少し寒くなってきたな。


そろそろ戻るか。指定の時間まではまだ余裕あるけど、そろそろミズホ達の準備も済んだ頃だろう。


俺は踵を返す。


後でもうちょっと暖かい服に変えてからまたこようかなーとか、この辺りで走るのも気持ちよさそうだよなーとか、きょろきょろ周囲を見回しながらのんびりと歩いて行く。


その途中だった。


これまで全く人とすれ違うことはなかったんだけど、ようやく人の姿を一人見かけた。


今ここにいるのはホテルのスタッフ、撮影スタッフ、それと各チームの精霊使いと関係者。


そこにいるのは直接の面識はない相手だった。だが、誰だかは分かる。


この世界でも珍しいみ空色の髪。均整の取れたボディライン。その美しく整った顔は、街を歩いていていたり雑誌を眺めているだけでも良く見かける。


全員が歌って踊れるアイドルチーム、フェアリス所属精霊使い。ユリア・パネラだった。


向こうも撮影前の散歩でもしているのだろうか?


そのまま歩いて行くと、向こうもこちらに気づいた。明らかに視線を向けられたので、とりあえずぺこりと小さく頭を下げて置く。


すると、彼女──パネラさんはこちらへ向けて歩いてきた。のしのしと擬音が付きそうな感じで。

その表情も、何故か厳しい。


明らかに俺目的なのとその勢いに思わず立ち止まると、彼女は目の前にやって来て俺を見下ろし


「貴方がユージンね」

「あ、はい。そうです」


強い調子でそう聞かれたので、素直に頷いておく。


「あの、何かご用件でも……?」


彼女は割と身長が高いのと、かなり強い目力でこちらを見てきたため、俺は自然と上目遣い気味になりつつ彼女にそう聞く。すると彼女は、


「くっ……」

「くっ?」

「なんでもないわ。そうね、丁度いい所で会えたから、宣戦布告しておこうかと思って」

「宣戦布告……?」


一瞬首を傾げてから、成程そういう事かと納得する。


現在の内のリーグ戦の戦績は5戦全勝。内すでに上位チームとはすでに3つ当たっている。この先大きな問題が起きなければウチの昇格はほぼ確実だと言われ始めている時期だ。


そしてフェアリスは現在B1の4位。前期での降格はほぼあり得ない順位。


ということは順当に行けば、今シーズンの後期でウチとフェアリスは同じB1に所属することになる。つまりはそういう事だ。


それを理解した俺は、彼女に対して不敵な笑み(自分でそのつもりなだけであって、他の人から見たらどう見えるかはしらん)を返し、彼女の次の言葉を待つ。


そして彼女が口を開いた。


「ユージン、そしてエルネスト! 貴女達に宣戦布告するわ。貴女達に絶対渡さない、トップアイドルチームというポジションはね!」

「こちらこそ……なんて?」


なんて?


今この子なんて言った?


「もう一回言ってもらっていい?」


俺のその言葉に彼女は小さく頬を膨らませ、


「もう、ちゃんと聞いてなさい。いいわね? トップアイドルチームのポジションは私達フェアリスの物よ!貴女達には渡さ……」

「ストップ、すとーっぷ!」

「もう、何よ! 言い直させたのはそっちでしょ!?」


憤慨を見せるパネラさん。だが言っている意味がわからないからそりゃ止める!


「宣戦布告ってリーグ戦の話じゃないんですか?」


俺の言葉に、彼女は何を言っているんだという表情を浮かべ


「リーグ戦でわざわざ貴女達だけに宣戦布告する必要ないじゃない」

「確かにそうですけど」


冷静に考えれば優勝争いをしているわけでもない現状下のリーグにいるチームに宣戦布告してくるなんて、自意識過剰すぎたかもしれん。反省。


──いや、そうではなく!


「だとして、なんでアイドルチームとして宣戦布告されてるんですか俺!? ウチアイドルチームじゃないですよ!?」

「えっ」

「えっ」









ユージン以外にポンコツキャラを登場させたかっただけです。


今更ですが、おかげさまでポイントの前作超えを達成できました。ブクマ、評価してくださった方々本当にありがとうございます。

いいねも励みになっております。こちらもありがとうございます。

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