表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
週末の精霊使い  作者: DP
2.女の子にはならないけど、女の子の体には慣れてきた
135/345

ユージンはお部屋が欲しい


今回の一件で、思った事が一つある。


アキツ側に生活拠点を作る必要があるということだ。


これまで俺は、こっち側で部屋を借りるような事はしていなかった。


祭日絡みを除けば、俺は基本土曜日にこちらに来て日曜日に日本へ帰る一泊二日でアキツに滞在している。

これは精霊使いになって以降はほぼずっとだ。


そしてその一泊は大体ホテルか事務所の仮眠室を利用していた。まぁ仮眠室は整備班のスタッフが使う事が多かったので、大体はホテル利用だ。近場のビジネスホテル。


大体朝こっちにきたら直行して夜まで事務所を拠点に動き回るし、日曜日は試合が終われば日本側へ帰るから、正直風呂入って寝る場所さえあれば良かったからな。


ちなみにこの姿になってからは、その直後以外は会社の仮眠室は使っていない。というか周囲のメンバーに危ないからダメですと止められた。


さすがに今の外見で男性スタッフと同じ部屋で寝るのは問題あるかもしれないけど、俺が使うのはスタッフが使わない時だけだし別にいいんじゃね? と答えたら、危機感がなさ過ぎると怒られた。


知名度とかも考えると、俺がこの事務所で寝泊まりしているとかもし気づかれたら不埒な輩に狙われるかもしれないんだと。


ビルにはちゃんとセキュリティがあるし、買い物とかで外に出るにしてもすぐ側のコンビニくらいなんだから考えすぎだろとは思ったが、ミズホだけではなくナナオさんや他の女性スタッフにも強く言われてしまったので諦めた形だ。まぁ寝るんだったらホテルのベッドの方が寝心地がいいのは確かだし……


とまぁ、これまでそんな生活をしてきたわけだが、今回部屋を借りる事に決めた。


一番の理由は……モノが増えたことだ。


大部分を占めるのは洋服。これは女になったからというより取材やメディアへの出演が増えたせいだ(尤もそういったものが増えた理由が女になったという部分が大きいので、結果としては性別変化が原因なんだが)。


俺がこっちにくるとき着ている服は大体動きやすいラフな服か地味目の本当に日常生活で着る的な服が多いので、それとは別にミズホに選んでもらっているソレ向けの衣装を用意している。それらは会社の自分用のロッカーにしまってあるんだけど、いい加減そういう分量でもなくなってきた。


ミズホ曰く、同じ服で何度もそういったメディアに登場するわけにはいかないでしょ? とのこと。そういうもんかね? こっちは芸能人とかでもないんだし別にいいんじゃないと思わないでもないが、一理は確かにありそうなので素直に従っている。その結果それなりの数になってしまった。


申請を出せば衣服くらいは普通に日本側に持っていけるし、実際たまに持って帰ったりはするんだが、あまり向こうで着ないような服を持って帰ってもな……あと日本側だとクリーニングに出せないし(素材とかサイズのタグがアキツ語なので)


ちなみにコーディネートはほぼミズホ(最近はたまにサヤカも混じる)だが、代金はちゃんと自分で払ってるぞ。当たり前の事だが。


それ以外にもいろいろと男の時より入用になっているものも多いからな……。


というわけで、スタンピードのあった週の土曜日。その日のメディア出演と取材、それにCM撮影を終え他の皆と事務所に戻ってきた俺は、落ち着いたところでちょっと相談することにした。わざわざ戻ってきてからにしたのは、保証人をチームの方にお願いする必要があるからナナオさんにも話を通しておきたかったからだ。


──それにしても、アレ以降本当にオフシーズンは週末何らかの撮影や取材があるよな。さすがに慣れてきたよ……CM撮影もNG殆ど出さなかったしさ。


……うん、ごめんなさい、4回NG出しました。でも以前よりは減ってるから許して。


閑話休題。


事務所に戻り、丁度サヤカの機体の整備を中断して休憩中だったナナオさんも混ざったところでその話を切り出した。


それに対する回答が以下の通りである。


「アタシの家に一緒に住も!」

「私の所でも構わないぞ? ちょっと狭いかもしれないが」

「ウチは実家なのでちょっと厳しいっすね」

「私の所も旦那がいるしちょっと難しいかしらね」

「いやなんで誰かの家に住むこと前提なんですか」


おかしいだろ。


そもそも俺が聞いたのは「この辺で賃貸の物件探すのにいい方法ないか?」であって、どこか住む場所ないかとダイレクトで聞いたわけではないんだが。


「不動産屋とかそういったサイトを教えてくれればいいんですけど? 後は自分で探しますし」

「いやこんな小さい子を一人暮らしさせるとか、オーナーとして許可できないわよ?」

「俺24歳なんですけど!?」


そもそも日本側では一人暮らししてるし、アキツ側でだって一人でホテルに泊まってるんだが?


「ま、それは冗談だけど」


そこでナナオさんの表情が真面目なものになる。あまり俺達の前では見せない"オーナー"の顔だ。


「チームとして、貴女を妙な場所に住まわせるわけにはいかないのは確かよ」

「いや、妙な場所って……別にお給料はもらってますから、普通の所借りますよ」

「普通の場所じゃ駄目よ」


ミズホが会話に混じってくる。


「セキュリティがしっかりしたちゃんとした立地のところじゃないと」

「セキュリティって……別に荷物置きと寝るだけのための場所だぜ?」


そう言い返したら、思いっきり呆れ顔でため息を吐かれた。しかもレオを除いた全員に。そしてミズホが口を開く。


「ユージンちゃんさぁ」

「なんだその呼び方」

「何もわかっていないお馬鹿な子はちゃん付けです。あのね、今ユージンは自分の知名度がどんな状態になってるかくらいは理解してるわよね?」

「それは、まぁ……」


これだけメディアに引っ張り出されていれば、嫌でも理解する。


「そんな子がセキュリティの甘い所なんかに住んだら、間違いなく不埒者に目を付けられるわよ」

「不埒者」

「ストーカーとか、ゴシップ系の記者とかね」

「ストーカーはともかくとして、記者系は大丈夫じゃないか?」


アキツではリーグ戦協会がその辺きっちり取り締まってくれている。だからこちらの意志を無視した強引な取材とかは殆どない。


「ちゃんとした所はね。ただ中には記者……いえ記者気取りのフリーの連中もいるから」

「ああ……なるほど」


評価欲しさに盗み撮り画像を投稿するような連中か。


俺とミズホのやり取りを聞きながら、サヤカがうんうんと頷いてやりとりに参加してくる。


「それに、ユージンはガードが甘いからな」

「えっ、甘い?」


顔を向けたら、今度はレオを含めて頷かれた。


「表にいる時は大丈夫っスけど、事務所にいる時は甘いっすよ。ちょっと視線に困る時ありますし」

「マジか」

「外で人の視線を意識してる時はいいんだけどね、プライベートになってくるとかなり緩いわ」

「この辺は仕方ないだろうな。無意識な時のガードの甘さは経験不足だろう」


女としてのか。まぁそれは確かに仕方ないよなぁ。まだ一年にも満たないんだ、生まれたときから女として暮らしてきたからこそ出来るような無意識な動きは無理に決まっている。


「まあ、そういうことだからね。セキュリティがしっかりしているミズホかサヤカの所に同居してくれた方が、こちらとしては安心なんだけど」

「さすがにそれは勘弁してください」


こないだみたいに一泊くらいならともかく、同居はさすがいろいろ気を使ってしまいそうでゆっくり休める気がしない。


俺の回答を聞いて、ナナオさんは顔に片手を当ててため息を吐く。


「……仕方ないわね。後でくわしい条件をデータで頂戴、総務の方に探させるから」

「いや自分で」

「探させるから」

「……はい」


有無を言わさぬ圧を感じたので、俺は素直に頷いておく。


その後ろで、サヤカが大きくため息を吐きながら口を開く。


「なんだ、残念だな。こっちでもユージンの上手いご飯が食べれると思ったんだが」

「ちょっとサヤカ、その話くわしく聞かせなさい。こっちで()っていったわね」


あ、しまったそういやこの件口止めするの忘れてた。


この後。

サヤカから俺にたまに飯を作ってもらう約束をした話を聞いたミズホに自分も食べたいと駄々をこねられ(本当に子どものように駄々をこねられた)、お前料理できるじゃねーかと言ってもこれから毎日じゃんくたべるーとか幼児退行したような喋り方で返された結果、月に一回くらいはなんらかの形で飯を作ってやることになった。


おれ別に料理が特別上手いとかいうわけじゃねーんだけどなぁ……











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 実態としてはほぼ芸能人みたいなことになってるのに本人が無自覚過ぎる…この子自覚が足りない項目多過ぎではありませんかね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ