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週末の精霊使い  作者: DP
2.女の子にはならないけど、女の子の体には慣れてきた
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スタンピード 開戦


『そろそろっスね』


大分小さいが、遠くに爆発が見えた。戦闘が開始している証拠だろう。


俺達は今、機体を走らせていた。進行方向はその爆発があった方角だ。


「隣に配置されているの、ユージェニーだっけ?」

『っス』


ユージェニーはAランクのチームだ。確かウチと同様に遠距離タイプの精霊使いがいたハズ。機体は見えないのでその機体の攻撃だろう。恐らくは自分達の前方を横切ろうとした鏡獣を狙撃したといったところか。


出現した鏡獣の第一陣が到達し始めているという事だ。


「ここいらで迎撃するか。あまり進み過ぎて右翼の方が空いちまっても不味いしな」

『攻撃範囲を考えてもそんな所かしらね』


ズームで見れば、いくつかの機体が見える。ユージェニーの機体だろう。この距離であれば、お互いの攻撃範囲で間の空間はカバーできるので問題ないハズだ。後は鏡獣の動き次第で判断。


「よし、それじゃここで停止だ。各自迎撃態勢」


そう通信機に対して声を掛けつつ俺は機体の足を止め、いつもの霊力弾のライフルを機体に握らせる。対鏡獣であればこいつ一択だ。もっとも今回は数が多いだろうから、他の武器も使う事になるだろうが。


『ミーティングの通り、サヤカとレオは向かってくるのを迎撃ね。突っ込まないように』

『了解っス』

『分かっている。私は初めての体験だしな、総て指示に従う。よろしく頼む』

「二人ともいい子だ」


冗談めかしてそんなセリフを言ったら、通信機の向こう側が沈黙した。


「……なんだよ」

『いや今のユージンさんにそう言われると、なんかムズムズするものが』

『幼い子がアニメで覚えた言葉を使っているような微笑ましさがあるな』

「何度も言うけど24歳だからな?」


アニメで覚えた言葉というのは否定しづらいけども! ついでに言えば、確かにこういうセリフ似合うのは渋いおっさんだけどな!


「ていうか、アタシにもそのセリフ言って! ユージン!」


ロリコンは放っておいてと。


「アホなこと言ってないで、構えろ。来たぞ」


視界の端、右側の方に動く何かが見えた。位置的に精霊機装ではないハズ。で、あればだ。

俺は思考でタマモへ指示を出し、そちらにズームを掛ける。


そこにいたのは──


『ロボっすね』

「ロボだな」


精霊機装の流線形の甲冑のようなフォルムとは異なる、鋭角的なデザインのロボット。それがこちらの方へ向かってくる何かだった。鏡獣なのは間違いないだろうが、見たこともない姿だ。尤も鏡獣が俺にとって見たことが無いものばかりなのはいつもの事ではあるが。


「誰か、あれ何が元か分かる奴」

『さぁ?』

『あっ、映画っス。最近公開された奴』

「またかよ……」


まぁ"意識映し"は人の意識の中にある強いもの、恐れるものなどを映しとって出現するから、映画とかアニメなど多くの人間が共通的に意識しやすいものの影響を受けるのは仕方ないのだが。


「でも前回よりは百万倍マシだな」

『数字が大きすぎる気がするけど同意だわ。それに非生物の方が撃つとき気兼ねないわよね』

『初戦の私としては確かにそちらの方が助かるな』

「確かにそうだな。ついてるぜサヤカ」


そう喋りつつ、俺はライフルの狙いを付ける。距離は遠いが鏡獣の動きは直線的。速度も単調だからいけるだろう。


俺は進行位置を予測し、引き金を引いた。


走る光条は真っすぐに飛び──その光に気づいたのか、鏡獣が速度を落とす。


が、その動きも予測済み。


直前で霊力の弾丸は破裂するように分裂し、そこから伸びた一本の光がロボットの姿をした鏡獣を貫いた。


ただそれだけでそいつは動きを止め……そして次の瞬間には消失していく。


あっさりと一撃だ。相変わらずこいつら相手にはチート武装だな、界滅武装。


『お見事ね』

「ゆっくり狙いがつけられる状況ならこれくらいはな。数がきたらもう無理だ」

『その数とまもなく接敵しそうだぞ』


先程の鏡獣が来た方向へ機体を向けていたサヤカの声が、通信機から流れる。


『数は……認識できる範囲で20近くいる。壮観な光景だな、これは』

『さすがに多いっすね。こんな数初めてっス』

「まぁどんだけ数が多くてもお前らのやる事は一緒だ。向かってくる奴を潰していけ」

『ういっス』

『再度確認するが、あの姿であっても射撃攻撃はないんだな?』

『ないわ。投擲のような攻撃はあり得るけど銃撃の類はない。ただし違う形状の奴がいたら、その限りじゃないから気を付けて』

『"異界映し"という奴だな。了解した』


ミズホ達のやり取りを聞きながら、俺はライフルを構え直す。


……大分、バラけてやがるな。まとまっていれば拡散させて一気に数体持っていけると思ったが、さすがにコレでは無理そうだ。素直に一匹ずつ削っていこう。今度の集団はこっちの方へ向かってきているので、先程より狙いやすい。


先程のように手前で拡散する一撃を放ち、更に一体沈める。


こんな戦い方が出来るのも界滅武装様々だ。通常の武装であれば拡散した一撃程度で鏡獣を落とせることはありえない。


さらに一撃射出。また一体機体が消滅する──が、数はまだまだ多い。こちらと恐らく同サイズか少し大きいくらいのロボットの集団は、どんどんこちらとの距離を詰めてくる。というか後続が更に後ろに見えてきたな。


成程、この数は厄介だ。BはともかくCランクのチームじゃどう考えたって対処は難しいだろうし、最前線に置かないのも頷ける。うちだって界滅武装が無ければ絶対に処理しきれないわこんなの。


また一機撃墜。さらに有効射程距離に入ったミズホも攻撃を開始した。こちらのように一撃というわけにはいかないが、数発の攻撃を立て続けに叩き込み鏡獣を沈める。


だが数に対してやはり手数が足りない。俺やミズホの魔術を使えばどうとでもなるんだが、さすがに開戦直後だ、その手札を切れる時間じゃない。


なので俺やミズホは、こちらを逸れて駆け抜けて行こうとしている連中に絞って攻撃を叩き込む。正面からこちらに突っ込んでくる連中に関しては、


「レオ、サヤカ、頼むぞ!」

『お任せあれっス!』


俺やミズホの位置より前方に陣取っていたレオとサヤカの機体が、突撃してきた鏡獣達と接敵する。


『うおおおおおお!』


レオの咆哮が通信機から響く。


鏡獣は一気に押し寄せてきた。その先頭の一機を、レオは右手のメイスをフルスイングして殴りとばす。


その一撃ではさすがに沈みはしないが、そいつは大きく弾き飛ばされ地面へ転がる。──それを飛び越えて2機目。飛びつくような動きで襲い掛かって来た鏡獣に対して、レオは避けるわけではなく前に踏み込んだ。そしてそいつを正面から抱きかかえるようにすると、内蔵機銃を連射。その攻撃でダメージと共に怯んで後退した鏡獣に対してメイスを叩きつける。


そのタイミングで先に一撃を喰らった一体目の方が体勢を立て直しタックルをかましてくるが、レオはそれを無視。二体目の方に更に追撃の攻撃を一度、二度と加え──それで鏡獣は消失する。


自分のタフさを理解した、レオらしい戦い方だ。こっちは大丈夫だろう。


それに対して、サヤカの方もレオに遅れて格闘戦を開始した。彼女の機体は最初に飛びかかって来た方の鏡獣を上半身から袈裟懸けに切りおろすと、そのままその後方から来る二体目の方へ足を踏みだし、


『サヤカ、それダメ!』


悲鳴に近いミズホの声と共に、頭部と右肩、腕を切り落とされた一体目の鏡獣の放った左腕の一撃が、サヤカの機体に叩きつけられた。


『ぐっ』


想定外の方角から受けた衝撃で、サヤカが呻き声を上げる。そこに更に二体目が襲い掛かり──というところで、なんとかサヤカは機体を横に踏み込ませることでその攻撃を回避し、その横腹部分を横に薙いだ。


更にもう一本の踏み込みで態勢を立て直すと機銃を叩き込む。それでもまだなんとか生き残ったそいつに対し、上段からの斬撃。


それで二体目は消失した。


同時にミズホが攻撃を叩き込んだ一体目も消失する。


『すまんっ、助かったミズホ』

『こいつら生物じゃないんだから、一部切り落としたくらいじゃ止まらないわよ!』

『聞いていたのに外見でついやったと思い込んでしまった! もう見誤らない!』


こいつら鏡獣はエネルギーの塊のようなものだ。外見は似ていても中身は別物。急所のようなものは存在せず、一定のダメージを与えるまでは止まらない。


「頼むぜ、この数の処理にはお前の力も不可欠だからな」

『了解だ!』











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