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週末の精霊使い  作者: DP
2.女の子にはならないけど、女の子の体には慣れてきた
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出撃前ミーティング


目が覚めたら、見知らぬ天井だった。


白く磨かれたような天井、装飾で彩られた照明。どう考えても俺の自宅の物じゃない。


「ふぁ……」


小さく欠伸を上げながら、ゆっくりと体を起こす。自分の腕を見れば、ピンクと白のもこもこしたストライプのパジャマを着ていた。


──俺、こんなパジャマ持ってたっけ?


「んあー」


ベッドもなんか感触がいい。おかげでいつもより良く寝れた気がする。


「……ん-っ」


とりあえず大きく背伸びして目を覚ます。


えーっと……


……


あーあーあー!


思い出した思い出した! アキツ来てたんだ!


昨日超特急で仕事を終えて自宅に帰り、着替えたらすぐに尾瀬さんの家に直行。そして彼と共に転送された先にあったのは、いつもの街並みではなかった。


俺はベッドからゆっくりと降りると、窓を覆うカーテンを勢いよく開ける。


──そこには、日本では見る事のないような石造りの街並みが広がっていた。俺達の本拠があるカーマインでも見かけない景色だ。


今俺がいるここは、ロスティアという都市だった。


六大都市の中の一つ、その中でも特に多くの彷徨い人(ワンダラー)達が住まう街。


元々この街自体が、大規模漂流(ドリフト)によってやって来た住人達が築いた街だったらしい。そしてそこに、さらに他の漂流(ドリフト)してきた種族や個人たちが合流して大きくなった。


そういった過去を持つこの都市の特徴は、一言でいえば混沌だろう。


中央部はともかく、そこを外れると特定の種族が集まって暮らしていた所が多々あり、そういった所はその種族の文化に応じた建築様式になっている。例えば森の中でツリーハウスみたいなものが集まっている場所もあるし、ここのようなファンタジーゲームで見かける街並みの所もある。


そういった街並みを築いた種族も、世代が進めばこの世界に適応しそういった場所から離れていったり、普通に後継がいなくて住人がいなくなったりするが、その後も新しい住人が入ったりしてその地域はそのまま保全されている。


なにせ特徴的な街並みは、和風のフジワラや中世ヨーロッパのような街並みを持つアルスツゥーラと同様、観光資源になるからだ。そういった事を生業にしたい人間や、そういう場所で生活したい連中が嬉々として越してくる。


実際今俺が泊まっているホテルがあるこの場所も、観光地域となっている場所だった。


ファンタジックな街並みに、心躍らないわけでもない。天気もいいし、暇なら街に繰り出したくなる──が、残念。俺がこれからやらなくてはいけない事は、この街で遊ぶことではなくこの街を護る事だ。


今回警報が出たスタンピードの発生予測地域は、このロスティアの北側に位置した場所。ここはその最寄りに近い区域だ。そのため、窓から見える景色には生活感がない。人の姿が殆ど見えないのだ。たまに歩いていても、恐らくそれは精霊使いの関係者。


というのも、この地域に関してはすでに避難勧告が出ている。大部分の住人はすでに避難済みだろう。このホテルの職員たちは今は俺達の対応をしてくれているが、彼らも俺達を送り出した後は避難するらしい。


その避難を、無駄にさせることが俺達の役目というわけだな。


そんな決意を胸に外を眺めていると、目覚ましのアラームが鳴った。時刻は7時45分。


これから出撃前にミーティングがあるが、それの開始が9時から。それまでに朝の支度と朝食は済ませないと。


「んーっ!」


もう一度背伸びをして、窓を離れる。とりあえず顔を洗って歯磨きして着替えないと。髪の毛も整えないとな。


ちなみに着替えは全部ミズホが用意してくれていた。今着ているパジャマや下着も含めて全部。今更突っ込む気もしないので、ありがたく受け取って使わさせてもらっている。その代償か、昨日寝る直前まで部屋に入り浸られたけども。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「結構各チームばらけてるんだな」


広げられた近郊のマップと、そこに記された情報を見て俺はそう呟く。


ホテルのロビー横にある休憩用のスペース、その一角をかりて俺達は出撃前のミーティングを行っていた。


メンバーは精霊使い組の4人にナナオさん、それに情報処理を担当しているスタッフが数名。他のスタッフ達はすでに外に出て、機体の確認等を行っている。


マップにはいくつも印がつけられており、その横にはそれぞれ文字が書いてあった。書かれているのはエルネストやフェアリス、アズリエルやラブジャなど。精霊使いのチーム名だ。


今回の防衛戦は、非常に多くのチームが参加している。Sから7、Aから8、Bから10、Cから8。それにこのロスティアを本拠とする地域リーグのチームがほぼ全部。


全てのチームが参加していないのは別にサボりではなく、他の都市の防衛として待機している。各都市は距離が離れているから、そっちで普通の論理崩壊(ロジカルブレイク)が発生した場合にここから向かうんじゃ間に合わないからな。


各チームは、あるポイントを中心として半孤を描くように配置されれいた。そのポイントからみてロスティアへの直線ルート部分を厚めに、サイド部分はそれに比べると少々薄目だ。そして最前線にSAのチームが並び、その後ろにBとCのチーム、更にその後ろに地域リーグのチームが並ぶ三段構えの陣営が組まれている。


まあ、取りこぼしがあると不味いからな。主力は最前線のSAのチーム、それの取りこぼしをBとCが片付けるという所だろう。地域リーグのチームは更に万が一の為のセーフティだ。


で、うちは現状Cランク扱いなので、


「うちのチームは最前線なのだな」


うん。サヤカの言葉通り最前線だ。

理由は明確。俺の持つ界滅武装はこういった事態に非常に有効な装備だ。当然最前線に行けとなる。


「悪いな、巻き込んじまって」


結果としてチーム全体があおりを食っていることに対してそう謝ると、隣にいたミズホが笑いながらポンと頭に手を置いてきた。


「別に謝る事じゃないでしょ?」

「そうっスよ、ユージンさんがその武器を入手したのも不可抗力っスし」

「そもそも、こないだの深淵に比べたらそこまで危険な相手じゃないわよね」

「あれと比べちゃいかんだろ……」


あんなものが大量発生したらそれこそこの世界滅ぶぞ。


「それに、あれほどじゃなくても"異界映し"が混じってくるんだろ? 油断できんぞ」


俺の言葉に、ナナオさんも頷く。


「割合は不明だけど、過去の事例から見て間違いなく混ざってくると思うわ」

「ボス級がいる感じか。見た目でわかるのか?」

「ええ。スタンピードで発生する"意識映し"は大体同じ形状でかたよるから、その中に異なる形状のがいたら高確率で"異界映し"ね。だから」


サヤカの質問に答えつつ、ナナオさんが視線をこちらに向けた。


「そういったのを見つけた場合、ユージンはそいつを最優先して頂戴ね」

「了解です」


"異界映し"の性能はワリとピンキリだが、基本的に防御力・耐久力は"意識映し"よりは上だ。なのでそいつらを落とす役目は、自然と防御力無視で攻撃できる俺になる。


「あと、霊力はきちんとセーブするように。長期戦になるからね」

「どれくらい続く可能性があるんスか?」

「完全に収まるまでは30分から40分ってところらしいわ」

「うへぇ。下手するとリーグ戦の試合より長くなるのね」

「ええ、なので敵に多少突破されそうになっても、全開駆動(フルドライブ)や魔術は終盤まで使わない事。突破された場合は後方のチームに任せてしまっていいわ」

「了解」

「ああ、それと準備はきちんとしていくようにね」

「準備? 機体のですか?」


俺がそう問い返すと、ナナオさんは首を振って


「そうじゃなくて、長期戦の準備。出現予測の時間も幅があるから、下手すると数時間機体の中で待機する羽目になるわよ。だから水分補給とか、中で出来るように持ち込んでおくこと。あとトイレとかも事前に済ませておきなさいよ。発生の直前まではアタシ達も現地にいるから一応なんとかなるけど、おトイレ行っている間に近場で出現なんてされたら間抜けにも程があるからね」


……確かにな。大事な事だ。


それから他にもいくつか動きなどを詰めて、ミーティングは一度解散となった。


出現予想時刻は午後1時だが、最大で前後2時間くらいはブレる可能性があるそうで、11時には現地到着する必要がある。現地までは30分くらい、出発前にもいろいろあるので10時に再度集合だ。


今は……9時34分か。あまり時間がないな。


それじゃ俺もとりあえず準備を進めてくるとしますかね。









40万字を超えました。ここまで長らくお付き合いいただいている方、本当にありがとうございます。


まだまだ続く予定ですので、よろしければこれからもよろしくお願いいたします。

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