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週末の精霊使い  作者: DP
2.女の子にはならないけど、女の子の体には慣れてきた
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お隣さんとのお付き合い②


一通り確認したところ、掃除や洗濯はちゃんと行っているようで(まぁ今はともかく、普段着ている服はちゃんとしてるしな)問題があるのは食生活だけだった。


なんでそこまでラーメンばっかりなのかと聞いたら、好物なのと楽だからとのこと。


……いくら好物でも限度があるだろう。


というわけでお説教。自炊しろとまでは言わないが、せめてもう少しバランスを考えろと。今は若いからいいけど、そんな食生活をしていると年を取ってから痛い目見るぞと話をしたら


「君にそういわれても説得力がないなぁ」


とか返された。うるさいよ。


ちなみにアキツ側にいる時は基本外食で、そっちでの食事は「ちゃんとある程度バランス取ってるから大丈夫」。だとしたら、去年は大部分向こうにいたから問題なさそうだ。となればまだ2か月、週3から4程度で済んでるなら手遅れではないだろう、多分……早めに気づけてよかったともいえる。


基本人の私生活に口出す気はないんだけど、さすがに健康に関わるところだと放置もできない。酷い食生活で体調崩されたらチームにも影響あるしな。当人は大丈夫だといっているが、彼女は去年の途中までは実家暮らしだから普通の食生活だっただろうし、影響が出てくるのはこれからのハズ。


とまぁ、そのような事を部屋に連れ込んで説教して。


その説教を受けた当人は、今ニコニコ笑いながら俺の部屋のテーブルに頬杖をついていた。


一応彼女、俺の言っていることに納得はしてくれたみたいで、これからはもうちょっとバランスに気を付けてくれると素直に受け入れてくれた。ただ現状は冷蔵庫の中は飲み物と果物以外は空っぽだから、ラーメンしかないよと自己申告。


じゃあ仕方ないから今日は俺が食わしてやるとなり、今の状況だ。


ま、二人分くらいなら大して手間じゃないし、それくらいなら別にいいだろ。今日は定時帰りだからもともと飯は作る予定だったしな。


ちなみに作るのにそれなりに時間がかかるから部屋で待ってていいぞ、といったのに居座られた。見られていると思うとちょっと落ち着かないんだが……じゃあテレビでも見てろとリモコンも渡したのに、結局つけずにこっち見てるしさぁ。


ほんと何が楽しいんだろうねと思うが、自分が逆の立場だと結局同じことしそうな気がするのでなんともいえず、結局クリスマスに続いての見られながらの調理になっている。撮影はしてないようだからヨシとして、俺は調理の手を進めていく。


今はとりあえずポトフでも作ろうかとジャガイモを剝いている最中だ。分量多めに作って、持って帰らせる予定。後でシチューにしてもいいしなー。


「クリスマスの時にも思ったけど、手慣れたものだな」

「一人暮らしも長いからな。お前もそのうち慣れるさ」

「……その姿が全く想像できないのだが」

「してくれ。なんなら教えるぞ、男の雑な料理でよければな」


返答はなく、「むう」という呻くような声だけが聞こえた事に苦笑いをしながら、玉ねぎ、人参をジャガイモと同様に皮を剥いては切って、ボウルの中に放り込んでいく。それから水をぶっこんでラップをかけると、台から降りてそれをレンジへと持っていく。


「やっぱり小柄な体だと、少し大変そうだな」

「まーなー」


レンジにボウルを突っ込んで加熱時間を5分に設定しながら、サヤカの言葉に頷く。


ウチのキッチンは、今や身長140cmとちょっとしかない俺の体では、さすがに高くてやりにくい。なので10cmくらいの台を用意して、その上に立って料理をするようにしている。……最初の頃は足を踏み外して転びかけたりもしたりした。もう慣れたが。


「そういえば聞き忘れたけど、食べられないものってあるのか?」

「野菜や普通の肉なら特にこれがダメ、というものはないな。日本特有のものとかだと分からないが……」

「あー、じゃあ大丈夫だ」


今日はオーソドックスな食材しか使う気がない。ポトフと野菜炒め、それにサラダでも作れば充分だろう。


そしたらと冷蔵庫を開いて、ウィンナーとベーコンを引っ張り出す。コンソメとニンニクはあるよなーなどと

考えつつ扉を閉じて振り返ると、サヤカが俺の事をじっと見ていた。顔じゃなくて、もうちょっと低い位置。


「なんだよ?」

「いや、エプロンは着けないんだなと」

「そもそも持ってない。この服、別に家の中でしか着ないから汚れてもいいしな」


今の俺の格好は、男時代に着ていた今では特大サイズとなっているシャツ姿だ。サヤカがいるのでどうかとも思ったが、何度も着替えるのも面倒だったので楽な恰好にさせてもらった。

彼女はその俺の格好を見、それからだんだん視線を下げて、


「……下は穿いてないのか?」

「んなわけあるか!」


手に持った食材を置いて、シャツの裾をペロンとめくって見せる。


普段はシャツ一枚で下は下着なんてことをすることもあるが、さすがに人がいる時にそんな恰好をするわけがない。ちゃんと下には水色のホットパンツを履いている。確かにシャツの丈が長いからはた目には履いてないように見えるかもしれないが……常識的に考えて欲しいところだ。


「ったく。アホな事いって邪魔しないように。飯の時間がどんどん遅くなる」

「私は待てるぞ?」

「俺は腹減ってるの!」

「ふむ。了解した。黙ってみている事にしよう」


いや、見てなくてもいいんだがな……


で、それから30分ほど後。


「うむ、やっぱり美味いな。私の好みにあっている」


俺が作った料理に手を伸ばしながら、サヤカが満足げに呟く。

俺の好みで少々濃いめの味付けなんだが、彼女の舌には合ったらしい。まぁラーメン好きなくらいだしな。


料理の腕に自信があるとかそういった訳ではないけど、美味いと言ってもらえるのは普通に嬉しい。そして彼女の言葉が世辞ではないことは、次々と食事を口に運んでいる姿でわかる。


「好きなだけ食ってくれ。というかポトフはかなり多めに作ったから、持って帰って明日のおかずにしてくれ。レンジはあるだろ?」

「それは勿論だ。ふふっ」


俺の言葉に頷き、それからサヤカは小さく笑いを漏らす。


「どうした?」

「いや、アルトはまるでお母さんみたいなだと思ってな」

「はぁ!?」

「私の健康の心配したり、こんな美味い料理を食べさせてくれたりな。外見はこんなに幼いのに、故郷のお母さんをつい思い出した」

「それくらい普通だろ。というか俺にこれ以上妙な属性を追加するのはやめろ……」


それでなくとも、すでに属性過多な状態になっている自覚はあるんだから。


「ああ確かに、向こうのネットだと──」

「やめろぉ!」


向こうのネットの話は聞きたくない! ミズホとレオに揃って「見ない方がいい」と言われて以来一切そういったSNSや記事の類は見ないようにしているが、それでもチームの人間の噂話から"濃い"っていうことは聞こえて来てるんだから!


その濃いの具体的な内容は知りたくない!


言葉を止めた俺の様子がよっぽど焦ったものに見えたのだろう、サヤカは面食らった顔をした後、はっとしてからなぜか目を伏せて


「あ、ああ、そうだったな。確かにアルトは聞かない方がいいかもな……」


いや待てマジで何が書かれてるんだ俺。そんなに闇が深い事書かれてるの? ああでも気になるけど知ったら絶対後悔することが間違いないのでここは耐える。


「と、とにかく。余計な事いってないで食え」

「そうだな、そうしよう」


頷き、サヤカは再び食事に手を伸ばし続ける。


……


……


空気重! 本当に何書かれてんだよ!?


「あっ、あっ、そうだ。そのポトフ、明日用にシチューにしてやろうか?」


結局空気に耐えかえねて、俺の方から声を掛けてしまう。


「出来るのか?」

「ああ、そのままシチューのルゥぶち込んでやれば大丈夫だ」

「じゃあお願いする。……というかアレだな、いっそのこと毎日アルトに食事の世話をして欲しいくらいだな、美味いし」

「甘えんな。俺はお前の家政婦じゃねぇんだぞ」

「むしろルームシェアするか? 家賃が浮くぞ。掃除とかは私がするし」

「勘弁してくれ……」


家族でも恋人でもない女の子と同居生活とか、落ち着かないにもほどがあるわ。


あとそんな事サヤカとしてるとミズホに知られたら、間違いなく向こうに行ってる時はミズホと同居を求められて結論から言うと俺のプライベートが死ぬ。


「まあ、たまに飯ぐらいは作ってやるから……」

「お、本当か?」

「ああ」


改善するとは言ったとはいえ、食生活不安だしな。自分の分を作る時に分量増やして作ってやればいいだろう。頻繁にすると甘えられるから、あくまでたまにだ。


「これはこちらの生活での楽しみが出来たな」

「普段はちゃんと自分でバランス考えるんだぞ?」

「勿論だ」


……やれやれ。


ちなみにこの後、食事を食べ終わっても彼女は中々帰ろうとせず、割と遅い時間まで過ごしてから自分の部屋に帰って行った。

お前こっちにいるとき仕事で忙しいんじゃないの?












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― 新着の感想 ―
[一言] これは完全メシかBase Foodシリーズを買い溜めする必要が…… でもその手の食料って高いんスよねぇ。
[一言]  「履く」は、足を覆う物をつけるという意味です。  靴・ゲタ・タビ・スリッパなどの履物(はきもの)だから「履く」。  「穿く」は、足をとおして下半身に衣類を身に着けるという意味です。 …
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