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週末の精霊使い  作者: DP
2.女の子にはならないけど、女の子の体には慣れてきた
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リーグ戦再開!


アキツの祝日や記念日の類は日本とは異なるが、年末年始に関しては同じようなものだ。


年末に大掃除をして一年の汚れを払い、家族や友人と一緒に年越しをする。初詣のような習慣もあるらしい。そしてそれが終われば休み明けまでごろごろするのである。


今年の大みそかと元日は土曜日と日曜日。週末といえば精霊機装のリーグ戦開催日であるが、さすがにこのタイミングでの実施はない。というか俺も含め日本人勢は里帰りやらなにやらで殆どアキツ側にいっていないだろう。


俺も年末年始はこちらに来ていなかった。そもそもチーム事務所自体が休みになっていたし、ミズホも実家に帰ってたらしいし。あとサヤカもさすがに年末年始は祖父の所に顔を出しに行かないとといって、電車で数時間かけて帰省していた(岐阜の山中とか言ってた)。


俺も一応年末地元には帰った。といってもこっそりとだが。両親の墓参りをしてきただけである。


いやぁ、下手に知り合いに合わないように気を使った気を使った。直接会えばセラス局長の謎の認識改変ウイルス(?)で俺への認識は書き換わるが、卒業アルバムとかに残ってる俺の姿は男のままな訳で間違いなく混乱を招くことになるからな……


俺はもうあの場所には戻れないのさ……墓参りには行くけど。


そんなわけで、年末年始はチーム関係者、というかアキツ関係者には全く顔も合わせていない。そもそも年始三日間とかすごーいだらしない、人に見せられない格好で部屋に引きこもっていたしな。暖房ガン効かせた部屋でサイズの全然合わないユニ〇ロのヒートテックだけ着てごろごろベッドで過ごすのって最高の贅沢だよね……


ま、それも三が日は過ぎれば終わり。仕事も再開したし、リーグ戦も再開される。


「いやぁ、ほんと久しぶりっスねぇ!」


通信機からは、いつも通り元気なレオの事が響く。


そう、今日は年明けてから二回目の日曜日。実に5ヶ月ぶりとなるリーグ戦の試合開催日だ。


「ここまで試合の間が空くって事、リーグ戦に参加するようになってから一度もなかったからちょっと不思議な感覚があるわね」


ミズホの言葉の通り、リーグ戦は各シーズンの間に試合のない期間はあるものの、その期間は大体一ヶ月前後だ。それ以外だとチーム未所属になれば当然試合のない期間は伸びるが、俺やミズホは精霊使いになってからはずっとエルネスト所属で、未所属期間がない。だから三年間のキャリアの中で一か月以上試合をしないことなどこれまでなかった。


今は試合開始前。精霊機装のモニター越しに見える景色はまだARが表示されていないため見慣れた荒野だが、すでになんでか懐かしさを感じる気がする。久々に地元に返って来たみたいな感じか? いや、年末あっちに帰った時とは違うな。


「……ねぇ?」


ミズホの声が、再び通信機から響いた。


「ねぇ、ユージン?」

「……なんだ?」

「なんか今日、さっきから口数少なくない?」

「そうだな、ユージンはいつももう少しよく喋るイメージがあったが今日は言葉少なだ。もしかして体調悪いのか?」

「……大丈夫だよ。検査も問題なかっただろ?」


リーグ戦は試合前に簡単な検査が行われ、一定レベルの体調不良が見られる人間は強制的に試合に参加不可となる。その検査を通過している以上体調に問題ないことは証明されているし、自覚症状もない。


そう、大丈夫なのだ、()調()()


「昨日は普通でしたっスよね、ユージンさん。試合で何か気になる事でもあるっスか?」

「いや。そういうもんじゃない」


そう、そんな話ではない。それについさっきまでは何の問題もなかった。

ただちょっとさっき、こちらに向かう車の中ですこしうとうとしていた時に聞こえた二人の他愛ない雑談で思い出してしまったのだ。


クリスマスの夜の二人のやりとりを。


顔が赤くなるのを感じる。


別に、あれを聞いたからって俺がどうするかが決まる訳じゃない。


俺はまだ自分の将来に関して決めていないし、そもそも今は性別反転やそれに付随してずるずると発生した様々な出来事に対して順応していくだけで精いっぱいなのだ。


だだそれはおいてくとしてだ。


外見だけでこっちに好きだといっていると思ってたロリコンの好意が、中身も含みだと聞かされたり。


最近会ったばかりの相手が、自分の事を好意的に見ていることを聞かされたり。


ましてやその二人が同僚とくれば……いろいろ顔を合わせづらくなるのも当然だろう!? いや顔合わせてないけど。通信機越しに声だけど。それはそれでどう話せばいいのかというか。


──って、思春期か俺は!?


外見上から見ると思春期でも問題ないなと脳内突っ込みが入ったが、そういう話ではなくて。


ええい、気にし過ぎだ。片方は別にそういった感情を向けてきたわけではないし、もう片方はとっくの昔にそういう感情を向けてきている。何も変わらないだろ!


大体このざまのまま戦闘突入するわけにはいかない。


だから、俺は、肘掛に乗せていた両手を顔の横迄持ち上げると


パァンッ!!


思いっきり自らの両頬へ叩きつけた。


……っいってぇ!


「ちょっと何の音!?」


想像以上に響いた音に、ミズホが明らかに慌てた様子で声を掛けてくる。

それに対して俺は、少々涙目になっているのを自覚しつつ平然と声を返す。


「なんでもねぇよ。顔ひっぱたいて気合い入れただけだ」

「気合い入れ過ぎじゃないっスかね? えっらくいい音したっスよ」

「痛かっただろう、正直」

「うん」


いや、うんじゃないだろ俺。


「いいんだよ、それくらいで。久々すぎて自分でも腑抜けてるってわかる状態だったからな」

「やだ、ユージンのぷにぷにほっぺが紅くなっちゃう……それはそれで見てみたいけど」

「そもそもユージンさんしょっちゅう紅くなってるっスよね」

「あー、確かに映像で確認したユージンはよく紅くなってたな」

「そんなところまで見てるんじゃねぇよ!」


いい感じにいつもの雰囲気になったのと頬の痛みで変な気負いのようなものも霧散したが、それとは別としてあまり思い出したくない方に話が流れそうだったので、俺は話題を切り替える。


「おい、サヤカ。お前今回でリーグ戦初陣なのに、なんでそんなに平常通りなの」


地方リーグで初陣だった俺でも、さすがに初戦はもうちょっと緊張していたぞ。

その問いに、サヤカはクスクスという笑い声と共に答えを返してきた。


「だって今日の相手は、私抜きの3機でも勝っているんだろう?」


今日の対戦相手は前期C1で8位のチームだ。過去にリーグ戦で4度戦って全勝。確かにそれほど苦戦する相手ではないが、


「だからといって油断しすぎは……」

「油断はしてないさ」


窘める俺の言葉を、サヤカは即座に否定してきた。


「ただ私抜きでも勝っているということは、私が気負う必要はないことだ。最悪私が早々に落とされたところできっと同僚が勝ちを拾ってくれる。ならば私は余計な事を考えずに、ただ言われたことを実践すればいいだけだ。そんなに難しい事は言われてないしな」


うちは作戦をきっちり立てて動くタイプのチームではあるが、さすがに今日が初陣になるサヤカには難しい事は言っていない。単純にターゲットを指定して、そいつだけを狙うように指示してある。こっちの方が機数が多いから恐らく俺が駒としては浮くので、フォローもしやすい。


「要は、頼りになる先輩方を信頼しているのさ。だから緊張する必要などない」

「ちょっと、逆にこっちが緊張するようなこと言うのやめてもらえますぅー?」


サヤカの言葉にミズホがそう突っ込み、その後に全員の笑い声が響く。それと同時に、モニターに次々とビル群が表示されていく。


──試合開始30秒前だ。


「ほぉ……これは凄い」


通信機からサヤカの感心する声が流れるのを聞きながら、俺は操縦宝珠(コントローラー)に手を伸ばす。


「時間だ。サヤカ、そして新生エルネストの初陣、華麗に飾ろうぜ」

「「「了解!」」」





ほぼ同時に総合評価1000超えとPV10万超えを達成したようです。本当にありがとうございます!


執筆に関してはやはりいつもより時間が掛かってしまうので、出来るだけ早く新PCを購入する予定です。

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