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週末の精霊使い  作者: DP
2.女の子にはならないけど、女の子の体には慣れてきた
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ユージン、初めてのお泊り①


異世界アキツと日本は、驚くほど似通っている。


文明や科学に関してはそれも当然だろう。いつの頃からかはしらないが、アキツは日本からいろいろ情報を輸入して発展しているからだ。一週間の考え方とかもそう。どういうわけか知らないが日本というか地球のルールに準じてくれているため、非常に助かっている。休日がずれていたら、今みたいに日本で仕事しながらのリーグ参戦はかなり厳しくなるからな。


それから動物関係。これも地球上にいる動物と同じか類似しているものが多数いる(地球じゃ見たこともないようなのもたくさんいるが)。ただこれは俺と同じように彷徨い人(ワンダラー)として、もしくは漂流(ドリフト)に巻き込まれてこちらの世界に流れ着いたと考えれる。


うん、ここまでは分かるんだ。


だけど、一日の経過時間や一年の日数まで一緒なのはどうなんだ。


なんなの? 自転周期や公転周期まで一緒なの? 季節の移り変わりのタイミングも大体一緒だしさぁ……日本より変化は穏やかだし、台風とかそういった気象現象はなかったりするけれども。


実はアキツと日本では時間の進み方が違って、本当はアキツの方が一日が長いけど向こうに戻る時に上手く調整かかってるとかなのかもしんないけど。この辺ってこっちの方で調べてみてもわかんないんだよな。


セラス局長に聞いてみたら教えてくれたりするんだろうか。でもいざ聞いてみたら、貴方は余計な事に興味を持ってしまいましたねとか言って消されたりして。


はは、そんな馬鹿な事あるわけないけどな。


……ないよな?


ま、まぁそれはさておき。


そんな感じで一年の流れや一週間の考え方は同じなアキツと日本だけど、祝日とかイベントの類はさすがに違う。まぁこれは当然。こっちの世界の人間にとって天皇陛下の誕生日やら日本の建国記念日は関係ないもんな。


関係ないんだが……


「クリスマスパーティーしましょ」


年末も近づいたある日、急にそう言い出したのはミズホだった。


勿論こっちの世界にイエス・キリストは産まれてないからキリスト教も存在しないし、日本の風習をまねたイベントとしてもクリスマスは存在していない。存在しない人間の生誕祭とか意味はないしな。


じゃあなんでミズホが知っているのかって言うと、まぁ俺が教えたんだが。

去年の丁度同じ頃に、そういえば地球ではこんなイベントがあって恋人や家族とかと一緒に過ごすんだと雑談程度に話したのだ。その時はへぇ、くらいで終わったんだが。


今年は違った。


満面の笑みと共に、ミズホは強く提案してきた。


俺の肩を掴んで、今年はやろうやりましょうやらないといけないわと言って来るミズホの目がちょっと恐かったです。お前去年は全然そんな事いわなかったじゃんかよー。態度露骨に変わりすぎなんじゃ。


で、だ。


「ユージン、飲み物何がいい? ジュース?」

「ビールでいいよ。飲めるの知ってるだろ」

「でも普段あんまり飲まないじゃない?」

「明日は特に用事もないからな。多少酔っても問題ないから今日は飲むよ」

「おっけ、じゃあはいこれ」

「さんきゅ」


ミズホが差し出してくれた缶を受け取って、自分の前のテーブルに置く。


今、俺はミズホの家のリビングにいた。カーペットの敷かれたフローリングの床の上に直に座り、目の前のテーブルにはいくつものオードブルやスイーツ等がならんでいる。


そのテーブルを囲うように俺とミズホ、そして


「サヤカさんもビールで良いっスか?」

「問題ない」


レオとサヤカが座っていた。

この4人が今日のクリスマスパーティーのメンバーだ。


あれ? そういえば……


「レオ、お前まだ19歳だよな? 酒飲んでいいのか?」

「? 何言ってるんすか? 飲酒制限は18歳迄っすよ?」

「あっ、こっちはそうか」


いろいろ日本に似通ってるからちょくちょく日本側のルールで物事考えちゃうんだよな。ええと、じゃあレオはOK。後は……


「私は20だから日本の法律でも飲酒可能だぞ? 国では16からOKだから以前から飲んでいるが」


俺の視線に気づいたサヤカが、缶ビールのプルを開けながらそう答える。


「一応こっちに来たときはちゃんと日本の法律に合わせてたから、日本で飲むのは初めてだがな」

「そもそもこのメンバーの中で一番お酒飲んじゃ不味そうなのユージンよねぇ」

「俺はこの中で最年長だが?」


24歳だぞ俺は、外見はその半分近くになっちゃってるけど。というかこういうの、会社の飲み会でも言われたな、ったく。


カシュ、と自分に渡されたビールのプルを開ける。


「ほら、まずはとっとと乾杯しようぜ」

「そっすね、お腹もすきましたし」

「んじゃミズホ、よろしく」

「あれ、アタシ?」

「お前が言い出しっぺだろ」

「そか。それじゃみんな、準備はいい?」


ミズホ以外の全員が、缶ビールを片手に頷く。

それに対してミズホも頷き返し、手に持ったビールを掲げて言った。


「それじゃ、クリスマスパーティ兼リーグ戦開始前の壮行会兼新メンバー正式加入祝いとして乾杯っ!」

「「「乾杯!」」」


ミズホの長いタイトルコールと共に、各々でビールの缶をぶつけ合ってから口を付ける。


冷たいビールが体の中に浸透していく。


缶の三分の一くらいを飲み干してから、俺は缶から口を放した。


「ぷはっ」

「うーん。やはり今のユージンにお酒飲ませてると、なんか悪い事させてる気がしてゾクゾクするわね」

「そういうのいいから。いやしかし、まさか開幕までに資格取得間に合わせてくるとはな」


サヤカに向けて、そう言うと彼女は缶を置いてニコリと笑い


「私は天才だからな」


と返してきた。

すでに酔ってらっしゃる? いや、素か。


そう、彼女サヤカ・マテウスはつい先日精霊使いとしての資格を無事取得した。そしてそれによりウチのチームに正式加入が確定したのだ。よって翌シーズンからではなく、まもなく始まる今シーズンからの参戦することになった。


資格取得したばかりのルーキーもいい所の精霊使いをいきなりCランクのリーグ戦にぶち込む事にはチーム内でも賛否があったが、結局二つの理由により最終的には参戦で決定した。すでにリーグ戦事務局の方にも申請済みだ。


その理由の一つは、教習センターでのサヤカの成績がかなり良かった事。いきなり実戦投入してもある程度は動けるだろうとの判断だ。


そしてもう一つは、今季のCリーグは正直言って余裕がある事だ。恐らく三人組で行っても充分優勝は狙える。更にはたとえルーキーだとしても人が増えるだけで勝てる確率はあがる。だったらBランクで実戦投入するよりもCランクで実戦経験を積んだ方がいいだろうということである。


ちなみにクリスマスパーティにこれを組み合わせようと提案してきたのはミズホだ。てっきり俺と二人でのクリスマスパーティを求めているのかと思っていたので、肩透かしを食らった感がある。


いや、この言い方だと俺がミズホと二人でパーティーしたかったと思われそうだが、そんな事はないぞ? そもそもミズホと二人で飲んで酔っ払ったら、その後いろいろ大変な事になりそうな気もするし。


「……なにかしら?」

「いや、なんでもない」


思わずじっと見てしまったら感づかれたので、俺は慌てて視線を逸らす。


「お酒のおかわりなら遠慮なくどうぞ? ここに出している以外にも冷蔵庫にストックあるから」

「いやそんなに勢いよくは飲まねぇよ」


俺酒は好きだけどめちゃくちゃ強いってわけではないし、酔いが回ってくると若干アッパー入ってくるからな。醜態を晒す、なんてことはないだろうが酔って調子に乗せられて妙な事をさせられるのは避けたい。


ミズホとレオ、俺に対して酷いことはしないだろうけど、後で写真とか見て恥ずかしくなるようなことはさせて来そうだという妙な信頼感があるんだよ。……変な衣装とか用意してないだろうな?







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