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週末の精霊使い  作者: DP
2.女の子にはならないけど、女の子の体には慣れてきた
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新たなる仲間(仮)

日本語とアキツの言葉の会話が混在となるため、日本語の発言は

《》で記述しています。

そこに立っていたのは、本来ここにいるハズではない人物だった。


この場所、というわけではない。この世界に、もういるハズのない人物。


サヤカ・マテウス。先日俺が助けた時はストレートだった髪を今はサイドの高い位置でまとめているせいか、こないだよりも少し幼く見える金髪の女性がそこにいた。


今日は彼女を救出してから一週間後の日曜日だ。

地球からの彷徨い人(ワンダラー)である彼女。通常であれば記憶処置をされた上でとうに地球の方へと送還されているハズである(日本とアキツ、時間の流れが一緒だからとっとと返さないと不味いしね)。


それなのに、何故彼女がまだこちらに残っているかというとだ。


俺と全く同類だったのだ。彼女。


ようするに、「巨大ロボットだ、すごい」「え、あれ資格取れれば乗れるの?」「じゃあこの世界残ってその資格取る!」というどこかで見たのと同じ流れをやったのである。


どうやら彼女日本アニメ好きらしく、特にロボットアニメ系が大好物だったそうだ。うん、だったらその流れになるよね、わかる、わかるよ……


ちなみにそこまでの流れは俺と一緒なんだけど、一つ大きな違いがあった。


彼女の霊力値を測定したところ、高い数字が確認されたのである。霊力タンクのレオほどではないにしろ、俺やミズホよりは断然高い数値。もし彼女が元々日本在住だったとしたら、普通にスカウトされてもおかしくないレベルだった。


なので、こちら側の世界への滞在は割とあっさりとOKされたらしい。俺の時は「その霊力値だと厳しい」と何度も諦めるように説得されたのに、畜生……


《どうした、私の事を妙な目で見て》

《なんでもない》

《そうか? ちょっと気になる視線だったが……まぁいい。しかし精霊機装のパイロットはこういった仕事もこなすのか。プロスポーツ選手と一緒だな! 君たちは三部リーグ所属と聞いていたが、そのレベルでもこういう仕事をこなすのか》

《いや、俺達はちょっと特殊な事情があってな……普通は三部の選手じゃこんな仕事はまずない》

《確かに、君はそれほど撮影に慣れていない様子だな。だが実に可愛らしかったぞ、これならこれからは次々と仕事が入るのではないか?》


……


「ナナオさん」

「何?」

「なんで彼女この撮影現場に連れてきたんです?」

「普通に局からこっちに向かう途中で拾ってきたからだけど。後今後()()()()()()()なんだから仕事っぷりは見せておいた方がいいじゃない?」

「この仕事は見せる必要ないんじゃないかなぁ……」


仕事見せるなら精霊機装に関する仕事の方見せようよぉ……一応仮入団してるんだしさぁ。


そう、仮入団である。彼女はすでに、ウチのチームへの入団が仮とはいえ決定していた。彼女がこの世界に来てからわずか一週間たらずのスピード入団である。6ヶ月かかった俺とはえらい違いだが、実は別にこれおかしな話ではない。


ようは、秋葉ちゃんや金守さんのようなスカウト組と同じなのだ。


高い霊力を見出され、こちらから採用を申し出た。そして彼女がそれを受諾した。それだけだ。

むしろ事前にアキツの事や精霊機装の事を知っていた分スカウト組よりも更に話が早かった。


精霊機装に乗る事を望んだマテウスさん。

新しい4機目の機体に乗る精霊使いを探していたウチのチーム。


双方の希望が合致したわけである。


ナナオさんはレオと同じように地域リーグから人材を探していたようだが、さすがにレオのような掘り出しモノはそうそう見つからず難航していたので渡りに船だったらしい。


またマテウスさんがうちのチームを即決した理由は俺がいるからだそうだ。


別に一目ぼれとかそんな話ではなく(そもそも外見上は同性だ)、単純に俺が命の恩人で言葉の通じる相手だからとのこと。


因みに仮が付いているのは、彼女がまだ精霊使いの資格をとっていないからだ。次期シーズンの開幕までに資格取得が間に合わなかったり、間に合っても機体操作に難ありと判断された場合は地域リーグのチームへレンタル移籍させるとのことだった。そのため、パイロットの選別自体はこれからも続けておくとナナオさん言っていた。


でも7、8割がたは決まりだろうな。操縦技術と違い霊力の大きさはトレーニングで大きく伸ばせるわけではないので、人材の選択基準としては最優先ともいえる部分だし。


あとは言語関係をどれだけ早く習得できるかだけど、俺の時と違ってチームサポートが入るならチームで日本語喋れる人間を雇って通訳をつけてもいいし(スカウト組は基本これ)、何より


「アタシは初対面ね。ユージンの同僚のミズホ・オーゼンセよ。よろしくね」

「サヤカ・マテウス。よろしく頼む」


──すでに簡単な言葉の聞き取りはある程度できていて、喋る方も自己紹介とはい・いいえくらいは出来るらしいので、すでにある程度意志の疎通できるようになってるんだよなぁ……僅か一週間でどういう事だよおかしいだろ。天才という奴か? 霊力も頭も俺より上……


いやいやいや、こういう僻むようなのはよくない、よくない。メンタルリセット!


「どうしたっスか?」

「なんでもなぁい」

「ちょっと今の言い方可愛かった! もう一回!」

「どういう反応だよ!?」


ミズホ、お前マテウスさんと今挨拶かわしてただろ! なんで即座にこっちに反応してるんだよ!? ほら突然こっち振り向いたからマテウスさん驚いてるじゃねーか!


《ユージン、彼女がいきなりそちらを見たが何か言ったのか?》

《あーいや、ただの発作》

《発作!? 彼女は何かの病気を患っているのか!?》


うん、精神のね。


危うく反射的にそう答えそうになったが、さすがに今日初対面の人間に言うことではないので踏みとどまる。

というか、割と世話になってるのにそう言い捨てたら俺が外道すぎる気もするな。


ええと、そしたらどうしよう。でもミズホの普段の行動考えたら、あまりごまかしても仕方ないよな。

これから長い付き合いになる可能性を考えると、事実に即したことを伝えておいた方がいいか。

ふむ。


《ミズホ、俺の事かなり気に入っててな。割と俺の言葉とかに反応してくんのよ》

《ふむ……Loveか?》

《いや、Like》


嘘、告白されてるから正確にはLove。外見に対してだけだけどな。まぁこの辺は大っぴらに言いふらす事じゃないのでこれでいいだろ、


「何話してるのよ?」

「お前の事を紹介してるんだよ」

「ちょっと、変な事伝えないでよ?」


事実をオブラートに包んだ内容しか伝えてねえよ。

いやコイツが日本語理解してなくて助かったな? 日本理解してたら間違いなく「Loveよ!」と介入してきたよな?


《先程から本当に仲がいいな?》

《彼女とはもう数年来の付き合いだからね》

《……そういえば君はもうこの世界が長いのか?》

《もう3年超えてるね》

《そうか》


彼女はふむ、と頷いてから言葉を続ける。


《私にこの世界の事を説明してくれた人物が教えてくれたが、君があの時言った本当は男だという話、本当らしいな?》

《ああ、事実だよ。本当の俺は24歳の男だ》

《……本当におかしな事象だな、論理崩壊(ロジカルブレイク)というのは。成人男性がそのような少女の姿になるなどと》

《それは俺が一番実感してる》

《こちらの世界に来てからすぐその姿になったのか?》

《あれ、そこら辺は聞いてないのか? ほんの4か月くらい前だよ》

《そうなのか? その割には言葉遣い以外、その姿に違和感を感じられないな》


うぐっ。

ほぼ初見にそう言われるのはダメージが大きいんだが……いやまぁ今は撮影のために女の子らしくというのを意識して動いてたから、そのせいかな。


《それにしても男性の名残というのは全く残っていないのだな》


マテウスさんはそう言いながら手を伸ばし、俺の右手を手に取る。そしてふにふにと両手でいじくりまわしてきた。少しくすぐったい。


《うん、完全に少女のそれだ》


彼女は感触が気に入ったのか、押したり撫でたりしてくる。

むず痒いが止めることもできずされるがままになっていると、今度は反対の手を誰かに握られた。


ミズホだ。


「……なんだよ?」

「いやアタシも同じことしたいなって」

「嫉妬か?」

「そうだよ?」


いや、ストレートにそう返されると厳しいものがあるっていうか。

俺はそれ以上言い返す事ができず、ミズホにも掌をいじくるまわされることになった。


結果として俺は両側から自分より背の高い女性に手を握られていじられているという、訳のわからない状態になった。


おいこらレオ、懐からスマホを取り出してからの撮影に入る流れがスムースすぎるぞ。というか、


「ちょっと、なんでそっちカメラまわしてるんですか!」

「気にしないでくださーい」


気にするわ! 何に使う気だよ!






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[良い点] ユージンちゃんモテ期到来! ロボのロマンがわかる友達って欲しいよね
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