第55話『リベンジ』
あけましておめでとうございます!
今年初投稿です!
エリーと話しながら歩いていると、目的のダンジョンがある森の入り口へと到着する。
前回は見えない壁に阻まれてしまい入ることが出来なかった。
また入れなかったらどうしよう……。
「どうしたのマリー?」
エリーは森の入り口で立ち止まる俺を、不思議そうに見る。
「いや、なにも……」
意を決して森へと歩き出すと、すんなりと入れて安堵する。
俺の後ろをミツハたちが追って入ってくる。
聞いていなかったが、アリアは冒険者講座を受けていたようだ。
「綺麗だね〜」
エリーが上を見上げながら言う。
見上げてみれば、木漏れ日が差し込みキラキラと輝いている。
外から見ているとジメジメしたイメージがあったがそんなことはなかった。
「森の中に入ると『ジメジメしてて何か出て来そうだな……』とか言いたかったね」
「言いたくねえよ。それにそんなこと言って、本当に出てきたらどうするんだよ」
「ギャウ!」
ふざけながら歩いていると、子どもサイズの茶色肌をした鬼のような顔をしたモンスターが1匹茂みから現れる。
「本当に出てきた!」
「マリー、ゴブリンだよ!弱点は全属性で打撃も斬撃も全部効くよ!」
「弱点多いな!」
そういばゴブリンには以前、石を打つけられた恨みがある。
ここであの時の恨みを晴らしてやる!
「『召喚!』スピカ!」
目の前の地面に召喚陣が描かれてスピカが召喚される。
「キュイキュイ!」
「かわい〜!マリーちゃん!あとで撫でていいですか?」
俺の後ろにいたアリアのテンションが上がっている。
「マリー、僕も」
「マリー、私も」
「いやエリーはいつでも撫でれるだろ!」
「ギャギャ!」
ゴブリンが太い木の棒を振り翳して襲いかかって来ていた。
「うわっ!スピカ!なんか攻撃だ!」
「キュ!キュイ!」
思いっきり体当たりすると『パリーン』とゴブリンが粉々に砕ける。
「一撃かよ?!凄いぞ!スピカ!」
「キュイ!」
俺に駆け寄って来たスピカの頭を撫でる。
『170Gとゴブリンの牙×1を入手しました』
テキストウインドウが表示される。
「すごいです!」
アリアが屈んでスピカを見つめる。
スピカがアリアへと擦り寄って甘えにいく。
「かわいいです〜」
アリアがスピカの頭を撫でる微笑ましい光景だ。
「ほら行こうぜ。スピカならこれから毎回会えるんだしさ」
「はい!」
「マリー!あれを見たまえ!」
スピカを撫でようとしていたミツハだったが、何かを見つけて指差す。
「どうした?」
「ふふふふ、マリーよ。リベンジができそうだぞ」
ミツハの指を追うと、見覚えのある巨体のモンスターを見つけた。
「オークか!」
「マリーよ。あの時と同じ作戦で良いかい?」
「ああ、漆黒の………アレな」
「漆黒の誘いと闇の誓いだよ」
そう言えばそんな名前だったな……。
ミツハはよく覚えているな。
「ミツハちゃん、その漆黒の誘いと闇の誓いってなんですか?」
「あ、ああ、そうだね。アリアにも手伝ってもらうとしようか、作戦は……先ず僕がオークを引き連れてこちらに連れてくる。そして2人でオークの相手をしてもらっている間に、僕が最強の闇魔法の準備をして倒す」
「ミツハ、今回は森の外じゃないんだ。ミツハが魔法の準備をしている間に、スピカに引き連れてもらったオークに攻撃するのはどうだ?」
「なるほど、そうだね。なら作戦名は『白き獣の誘いと闇の誓い』というわけだ」
ミツハが変なポーズをしてドヤ顔をする。
というけだ。じゃねえよ!
相変わらず痛いネーミングセンスだな。
「かっこい〜です!なら私は防御魔法を使ってミツハちゃんを守りますね!」
「よし!スピカ、頼んだぞ!」
「キュイ!」
スピカが任せろと言わんばかりに鳴くと、オークに向かって駆け出す。
「『ダークジャベリン』!」
ミツハが片手を掲げると、黒い靄が形を作っていく。
「キュイキュイ!」
「見て、マリー!」
エリーが慌ててオークの方を指でさす。
見れば、オークとスピカの戦闘が始まっていた。
だが本来であればスピカが1撃与えてこちらに逃げてくるはずだったが、オークが動こうとしていなかった。
「召喚獣だとヘイトは向けれないのかもしれないね」
ミツハが焦りながら言う。
ヘイトの意味が分からないが、たぶん相手にされていないってことか?
「だったら仕方ない!俺が」
「マリーちゃん、私が行きます!私なら遠距離魔法と防御魔法がありますので、オークを引き連れて来れるはずです!」
「良いのか?」
「任せてください!」
アリアはオークへと走り出す。
「こっちに来て下さい!『ホーリーショット!』」
アリアの手から白い光球が放たれる。
その球がオークに当たると、オークがアリアを睨む。
「よし!アリアよ、このままこっちに来るんだ!」
「はい!」
アリアがこちらに向かって走る。その後ろをオークが追いかけてくる。
「グオオオ!」
「オークの足が思っていたより速いぞ!」
オークとアリアの距離が縮まってきている。
「このままでは追いつかれる!」
「キュイ!」
スピカがオークの膝に突撃し、ツノが突き刺さる。
するとオークが痛そうに体勢を崩して倒れた。
「おお!ナイスだ、スピカ!」
「ミツハちゃん!お願いします!」
「任せろ!!くらえ!悪しき光を貫き、黒き闇に癒されよ!ダークジャベリン!!!」
投擲したダークジャベリンは真っ直ぐオークに向かうと、胸に突き刺さる。
突き刺さった箇所からヒビが入ると、オークは砕け散った。
「やったね!ミツハちゃん!マリーちゃん!……それにありがとう!スピカ!」
アリアがスピカの頭を撫でる。
「リベンジ成功だな……って言っても俺は何もしてないけどな」
「そんなことはないさ、我が姫よ。スピカを召喚していなければ、アリアがやられていたからね」
「そうか?……そうだな、たしかに」
「でも結局マリー何もしてないよね」
俺が無理矢理に納得しようとしていたのに、横からエリーにハッキリ言われる。
「そんなこと言うなよ〜」
エリーの横腹を指でツンツン突いてやる。
「ちょ!ちょっとやめてよ!」
「………」
横腹を突き続ける。
「ちょ、ちょっと!」
「…………」
横腹をさらに突き続ける。
「長いよ!いい加減にしてよ!」
「ふふ……」
怒られたので、突くのをやめる。
「マリー!見たまえ!」
ミツハが俺に腕を見せてくる。




