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第8話 『アドワの説明動画』

 なにか無駄に時間を使ってしまった上に疲れたな……。


「遊吾〜」


 ドアがノック音と、お母さんの声が聞こえる。


「入るわよ〜」

「あっ」


 ガチャリとドアが開く。まだ何も言っていないのに、勝手に開けないでほしいものだ。


「沙希ちゃん帰っちゃたけど、もしかして若さ(ゆえ)の性欲に身を任せて襲ってしまったの?」

「え?」


 この母親は俺をなんだと思ってるんだ。


「……いや、俺が記憶喪失だって話したら全然信じてもらえなくてさ。それで怒って出てたんだ」

「そう……良かった。でも自覚はないと思うけど遊吾は高校生なんだから、そういうのはまだ早いのよ。分かってる?」

「あ、うん」


 どうして襲った(てい)で話が進んでるんだ。違うと言っているのに。


「でもおかしいわね〜?沙希ちゃんのお母さんには、遊吾が記憶喪失になったこと連絡したはずなんだけど……」


 お母さんはつけていたエプロンのポケットからスマホを取り出して操作する。


「……あっ、送ろうと思って文を考えててそのまま送るの忘れてたわ〜。てへっ」

「……」


 コツンとお母さんは自分の頭を軽く小突く。記憶がなくても腹が立つんだから、息子としての記憶があったらもっと腹が立つんだろうな……。


「だ、大丈夫よ!今から文を考えて送るからきっと大丈夫!沙希ちゃんも誤解も解けるはずよ!大丈夫大丈夫!」


 そう言いながらお母さんは、慌ただしく部屋を出て行く。大丈夫を何度も言われると逆に不安になるな。


「もう遅いよ。はぁ〜……」


 母への呆れと、沙希さんへの今後の対応のことを考えると大きなため息が出る。


「ん?」


 勉強机に置いてある白いヘルメットに目がいく。

 そういえば沙希さんがこのヘルメットはゲームだとか言っていたな。

 持ってみると思っていたよりも軽い。被って遊ぶものだろうか?


「こうか?」


 被ってみたが、視界が真っ暗で何も起きない。外してヘルメットの端っこに『未来corporation』と会社名が書かれているのを見つける。

 使い方を調べるため、ヘルメットの下に置いてあったノートパソコンを開くと勝手に【Equip Adventure World2】というサイトのマイページにログインしてしまった。

 何故かは分からないが、この画面を見ていると不思議とワクワクしてくる。


「この画像って……」


 ゲーム紹介の画像に俺のスマホの待ち受けにしてあった街がある。

 そうか!このゲームに出てくる街の写真を待ち受けにしていただけで、俺は別に海外旅行が趣味なわけではなかったのか。

 他に手掛かりがないか見てみよう……。


「なんだ、これ?」


『ガンガンヤッタレガールズの説明その1〜内容編〜』と書かれた動画。気になったので再生ボタンをクリックすると、茶色毛の短髪の可愛らしい少女と、青色の長髪のツリ目の美人な少女が現れる。


「ついに【New Equip Adventure World】のサービス開始の前日となりました!皆さんはログインの準備は大丈夫でしょうか?!」

「開始早々にうるさいわよ、ツクシ」 

「ごめんごめん、ユキ姉。テンション上がっちゃって」

「まずはわたしたちの自己紹介からでしょ」 

「え〜、もうこんだけ名前言ってるんだから察しの良い人は分かるでしょ〜。それに前のでも私たちのことも知ってるはずだし〜」

「良いから!自己紹介!!」


 そう言い、ユキ姉と呼ばせている少女が手を叩く。


「は〜い!ガンガンやったれガールズの可愛い担当のツクシで〜す!そして横においでなさるわ!ヤッタレガールズのクール担当ユキちゃんで〜す!!」

「クール担当になった覚えはありませんが、皆さんよろしくお願いします。それではヒナでは説明が難しそうなので私からさせていただきます。なんと!このゲームはゲームの中に入ってゲームをすることが出来るという画期的な革新的な革命的なゲームなのです!!」


 ゲームゲームと言いながら力説する青髪の少女ユキ、その背後にゲーム画面が表示される。


「New Equip Adventure World……長いのでアドワ2って言うけど、アドワ2にしかない数百種類にも及ぶジョブ!そしてジョブによって異なる何千個以上もあるスキル!それに何万とある装備を駆使してラスボスの魔王を倒しに行くというシンプルなゲームなのです!」


 画面には剣士の格好をした少年が剣を回転せて攻撃してモンスターを倒している。


「そう!なんとこのゲームではダンジョンがあってげがっ!!」


 説明をしようとしたツクシを、ユキが肘打ちで弾き飛ばす。

 画面外に消えてしまったツクシに代わり、ユキが説明を始める。


「そして何よりも前作から強化されたダンジョン!各ダンジョンには強いボスモンスターがいます。そのボスを倒すことで得られる『石』と貴重な装備を手に入れていくことで次の街へと進めるというわけです!紹介動画その1は終わりです!」


 動画が終わった。なるほど……このヘルメットでゲームの中に入れるのか。……でもどうやってだ?

 そんなことを考えていると『ガンガンヤッタレガールズの説明5〜ヘッドギアの設置方法編〜』の動画があったのを見つけたので再生ボタンを押す。


「どうも〜ガンガンヤッタレガールズです!」

「ど、どうも…ツ、ツクシです……」


 元気なユキと、体の至るところに包帯を巻いてギプスを付けて、松葉杖をついたツクシがヨロヨロと挨拶する。

 説明動画の2と3と4で何があったんだ?


「ま、まず準備してもらうものは……インターネットが出来る環境とヘッドギア。それとアドワ2のソフト、そしてモンスターと戦う勇気を準備して下さい!!」

「タイフーンアターック!!」

「ぐばげぇ!!」

「ツクシーー!!」


 突然の出来事に、思わず叫んでしまった。

 長いツノの生えたユキが打つかると、ツクシは回転しながらどこかに飛んで行った。

 なるほど。あんな攻撃を2〜4で受けていせいで、ツクシも包帯だらけになったのか。


「まず準備するものはインターネットが出来る環境。それとヘッドギアとアドワ2のソフトを用意してください」

「そのまま続けんのかよ……え?アドワ2のソフト?」


 なんだそれ?そんなのどこにあるんだ?


「まずはヘッドギアの頭頂部にある蓋を外し、ソフトが入っていないのを確認して」

「ちょっと待て!」


 動画を止めてソフトを探す。途中で止めたのでユキの目が半目になっているが、気にしないでおこう。

 ソフトが入っていないか、ヘッドギアの頭頂部の蓋を開くが入っていない。


「ない!どこにあんだよ〜……」


 部屋を見渡すとノートパソコンの横に小さな段ボールがあることに気付く。

 段ボールを引きちぎって開けると、中に小さなケースが入っていた。


「これか!」


 ケースを開くと動画のユキが持っている物と同じ物が入っていた。

 これをここに刺すのか?動画を再生させる。


「何も入っていなければソフトの絵が描かれている表面をこちら側にして差し込んで下さい」

「こうか」


 その後、動画の指示通りにケーブルを繋げていき設置が完了した。


「ケーブル良し!スマホとの接続良し!……」


 残りの動画でツクシがどうなったか気になる……が、先ずは記憶を取り戻せるかもしれないゲームを優先しよう。


「電源オン」


 額にある電源ボタンを長押しすると、キィーーンと音が鳴り眠気が襲ってくる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いけど VR系ならではの 説明がない 特に男女のプレイヤーの説明があとは奪われたのに 即座に普通に使われている時点でゲーム会社が確認入れてない時点でアウトだと思います  ランキング一…
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