第42話『おにぎりフェスティバル』
ギャグ回なので投稿しました。
次からは普通に戻ります。
「もう!もぐもぐ……マリーはホントに!もぐもぐ」
文句を言いながらエリーは小さな口で、自分と同じ大きさのおにぎりを食べる。
あの小さな体のどこに入っているのか不思議だ。
俺は自分用の皿を取ろうとすると、あることに気が付いた。
先ほどまでおにぎりを握っていたのに、手が綺麗になっている。
「このゲームって手は汚れないのか?」
「汚れるよ」
「でもおにぎり握ってたのに、俺の手は綺麗だぞ」
「手や顔は、少し待てば勝手に綺麗になるんだよ」
めちゃくちゃ便利な機能だな。
「へぇ〜、便利」
そう言いながら、綺麗になった右手で頭を掻く。
「それじゃあ、次のを作ってやるよ」
「ちょっと待って!」
ごはんに手を伸ばそうとすると、エリーに止められる。
「なんだよ?」
「頭触ってすぐにごはんに触らないでよ」
「え?」
「しばらく待ってから、ごはんに触って」
エリーはまさか、俺の頭が汚いって言うのか?
いやいやいや、仮にも汚いとしてもだ。面と向かってハッキリ言うなよ。
なんだか腹が立ってきたぞ。
「わかったわかった」
お尻を掻きながら、適当に答える。
「よし!」
「手ぇ!!」
「なんだよ?」
「お尻触った手でごはん触らないでよ!しばらく待って!」
予想通りのリアクションだ。
こうなると色々試してみたくなる。
「わかったって……さて作るか」
腕を組むフリをしながら、両手を脇に挟む。
「よし!」
「ちょっと手ぇ!!」
「なんだよ?」
「脇に挟んだ手でごはん触らないでよ!普通に嫌でしょ!」
あと数回くらいやろう。
「たしかにな……よし!」
俺は両手で何度も顔面をこする。
「ちょっと手ぇ!!」
「ふっ……もうなんだよ?」
「分かってやってるでしょ!嫌でしょ?!鼻やら口触った手で握ったおにぎり!」
「もうさっきからなんだよ?!俺はお礼がしたくて、エリーにただおにぎりを食べてほしいんだよ!」
俺は机をパシンっと叩く。
「その気持ちは嬉しいけど……」
「それなのに!なんで分かってくれないんだよ〜!よよよ……!」
「よよよって、泣いちゃったよ……分かった!でも今からなにも触らないで。それで私は黙ってるから」
「わかったよ。ぷっぷっ!」
両手に唾を吹きかけて、ごはんに手を伸ばす。
「言ってるそばから!今までで1番汚い!なんでそんな汚いことするの?!今から綱引きでもするの?!」
「ふふっ……わかったってもう普通に作るから」
「もう!良いかげんにしてよね!私がそんなことしたおにぎり、マリーだって食べたくないでしょ?」
「食べたいね!」
「即答?!気持ち悪っ!」
「喜んで食べるね!喜んでむしゃむしゃ食べるね!」
「普通に引くよ!私だって引く時は引くからね!もういいよ!もぐもぐ」
エリーが怒りながら、中断していたおにぎりを食べ始める。
「冗談はさておき、続きを作っていくか」
おにぎりを作り、皿に置いていく。
そのおにぎりをエリーが食べる。
おにぎりを作り、皿に置いていく。
そのおにぎりをエリーが食べる。
おにぎりを作り、皿に置いていく。
そのおにぎりをエリーが食べる。
「食べ過ぎじゃないか?!」
「そうかな?」
そう言っているエリーのスリムだったお腹が膨れ上がり、着ているワンピースの素材が気になるくらい伸びている。
「もう食うなよ!限界だって!」
「だめだよ!せっかくマリーが作ってくれるんだから、それにごはんだってまだまだあるし!」
「べつに全部食べなくても良いんだよ!作りおきしとくから!」
ミツハにも食べさしてあげたいしな。
「そうだね……じゃあちょっと横にならせてもらおうかな、よいしょ」
横になるエリーを横目に、俺はおにぎりを握っていく。
皿には数十個のおにぎりが並ぶ。
そのおにぎりを、食品包装用フィルムに包んでいく。
「ミツハに言われて包む用のフィルム買っておいて良かった」
綺麗に包み終わると、アイテムボックスに入れる……アイテムボックスに入れる?
「なあエリー、アイテムボックスにはどうやったら入れたらいいんだ?」
「それはね」
「もうへこんでる!」
横になっていたエリーが起き上がると、爆発する一歩手前の敵くらい膨らんでいたのに、元通りになっていた。
「消化は早い方だからね。アイテムボックスには手をかざして、念じれば入れれるよ」
「そうなのか」
「今までどうやってたの?」
「今まで?」
今までは薬草なんかのアイテムは、勝手にアイテムボックスに入っていったから意識したことなかったな。
「それじゃあ」
俺は手をかざして、おにぎりをアイテムボックスに入れるように念じる。
すると、おにぎりが皿ごと消えてしまった。
アイテムボックスを確認すれば、おにぎりが28個入っていた。
【おにぎり】(R2)[料理][食べ物][プレイヤー=エリー・オレ作]
『HPを100回復する。満腹度を30%得る』
「こんな効果があったのか」
HPを回復して、満腹度ってのは分からないが何かあるんだろう。
「なあ、エリー。満腹度ってなんなんだ?」
「満腹度っていうのはね、満腹であればあるほどステータスどおりの動きができるようになるんだよ」
「つまり、空腹だと弱くなるのか?」
「そうだよ。空腹度によってね。だから何日かに1回でも良いから、食べないとダメだよ」
なるほど。何日かに1回で良いのはゲームといったところだな。
「それじゃあ……お腹いっぱいになったし、おにぎりパーティーもお開きとするか」
「そうだね!ありがとうね、マリー」
「おう!エリーも喜んでくれたし、おにぎりフェスティバル成功だな!」
「ん?……うん!」
「またおにぎりカーニバルやりたいな!」
「うん!……って、パーティーなのかフェスティバルなのか、言い方統一してよ!」
おお!俺が言ってほしい通りに言ってくれた!
「さすがエリー!エリーが俺と同じ大きさだったら抱きしめてたぞぜ!」
「どういうこと!?あとテンション上がり過ぎてめっちゃ噛んでるし!」
「あ〜、なんかもう満足だな〜」
「急な展開すぎて分からないよ!」
「エリー、ジェンガを並べて1000個並べていって」
「マリー……もしかして、それドミノじゃない?」
「………」
「………」
お互いが無言になる。
俺の耳が熱くなっていくのが分かる。
「恥ずかし……」
「マリーの言いたかったことは分かるよ。ドミノ1000個並べて綺麗に倒れた時くらいの達成感があったって言いたかったんでしょ?」
「……そうだけど、もういいよ」
「え?!そんな落ち込まないでよ!」
「もういいって、俺なんてどうせ……」
「落ち込みすぎだって!大丈夫だよ!間違いくらい誰だってするって!」
あたふたしながら、エリーが俺をフォローしてくれる。
でもやはり、あんな言い間違いをした自分が恥ずかしい。
「もう寝よ」
「最悪なんだけど!こんな終わり方最悪!」
「おやすみ、エリー。おにぎり大会、またやろうな」
「おやすみ!って言い方統一してよ!」
こうして、おにぎりフェスティバルは無事に終わった。




