第40話『準備完了』
噴水の広場のベンチに腰掛けると、横にミツハが座る。
「これであらかた買い終わったかな」
ミツハの紹介してくれた店は、俺が錬金釜を購入した店だった。
錬金釜を買った時は、店内をしっかりと見れていなかったので気がつかなかったが、色々な食べ物が置いてあった。
「炊き立てのお米も買えたし、塩も買ったな。でも買ったご飯は冷めないのか?」
「それなら大丈夫だ。アイテムボックスに入れておけば、時間が止まっていつでも美味しく食べれるのさ。それにしても誤算だったね。中に入れる具が売ってなかったのは」
「う〜ん、そうだな。でもいっぱい作れそうだし、質より量でエリーにお礼をするよ」
俺はメニューでアイテムボックスの中を見ながら、エリーの喜ぶ姿を想像する。
「ミツハも楽しみにしててくれよ」
「え?僕も一緒に食べて良いのか?エリーと2人きりじゃなくて?」
「いいよ。いっぱい作るから」
「……それなら僕も、いただくとしようかな」
時刻を見れば、17時前だ。
「一旦ログインして、20時にマイルームでおにぎりパーティーでもするか」
「20時か……」
「え?ダメだったか?」
「うっ……すまない。20時からはどうしても外せない用事があって、すまない!」
ミツハは申し訳なさそうに、両手を合わせて謝る。
「そうか……なら明日にするか?」
「いや、僕のことは気にしなくてもいい。2人でおにぎりパーティーをしてくれ」
「良いのか?おにぎりフェスティバルに参加しなくて」
「うむ、僕のことは気にしなくてもいい」
「本当に良いのか?おにぎりカーニバルに参加しなくて」
ミツハは腕を組んで、天を見上げて悩む。
「う〜、うむ。今回は不参加ということにしてくれ!」
「わかった。それじゃあ、マイルームに戻るか」
「僕はもう少しだけ、この辺をぶらぶらするよ」
「そうか。また明日な」
「うむ」
俺はミツハに別れを告げると、メニューからマイルームに戻るボタンを押しながら、なにか物足りない気持ちになった。
そうか……エリーなら『パーティーなのかフェスティバルなのか、言い方統一してよ!』って言ってくれたんだろうな。
「はぁ〜」
マイルームに戻り、ベッドに座ると横になった。
エリーを召喚すると、話してしまいそうだし……。
仰向けに寝転ぶとメニューを開いて、ぼーっとした。
「ん?」
メニュー画面にある、設定の機能が目に入った。
そういえば設定って、なにも触ってなかったけど初期設定のままなのか?
設定の機能のボタンを押すと、項目がズラリと表示される。
「なんじゃこりゃ?」
通知設定を開くと、メールの通知以外全てOFFになっていた。
レベルが上がった際の通知や、モンスターを倒した際の獲得したアイテムの通知などがOFFにだった。
これだと不便じゃないか?
そう思った俺は、全ての通知ONに変更した。
「これで良いだろ」
通知がうるさかったら、変えればいいだけだし。
時刻は夕飯前なので、やることもないのでログアウトすることにする。
「アドワで初めて、ベッドに寝転がりながらログアウトするプレイヤーなんじゃないか?」
そんなくだらないことを言いながら、ログアウトした。




