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第7話 『沙希の訪問』

 入ってきた女の子は同い年くらい位だろうか?短い黒髪にボーイッシュな顔立ち、白色の長袖のワンピースがスポーツでもしているのか小麦色に焼けた肌を引き立てている。

 こんな可愛い子が俺の彼女かもしれないのか……。


「やっぱり変だったかな?」


 ガン見していると、恥ずかしそうにモジモジとしながら聞いてくる。


「やっぱり私のイメージと違うよね?」


 君のイメージがそもそもどんなイメージか知らねえ!っと言いたいのを我慢しながら沙希さんを見ると、顔を真っ赤にして涙目になっている。

 やばい!なにか言ってあげないと!


「い、いや似合ってるよ!めちゃくちゃ可愛いよ!」

「本当に?!」

「うん!可愛過ぎて一瞬だけ時止まった!」

「どういうこと?時止まってたの?!……ふふ!」


 沙希さんは面白かったのか、片手で口を押さえて可愛らしく笑う。


「良かった〜!このワンピース、優愛と一緒に選んだんだよ〜」


 そう言いながら沙希さんはベッドに座る俺の横に腰を下ろす。


「えっ、近……!」

「どうしたの?」

「い、いや!」


 これは彼女説が濃くなってきたぞ。嫌いなヤツの至近距離に座ることってないよな!

 なんか良い匂いもするし凄いドキドキしてきた。


「でも急過ぎだよ、優愛も誘いたかったのに」


 ゆあ?さっきも名前が出ていた『ゆあ』って誰だ?た友達だろうか?


「春なのにまだ肌寒いね〜」

「そうだな……」

「………」

「………」


 会話が止まる。早く俺が記憶喪失ということを切り出した方が良さそうだ。そう思い沙希さんの方を向くと顔を真っ赤にした沙希さんが俺を見つめていた。


「どうかした?」

「あのね、遊吾。私、今日は伝えたいことがあって来たの……」

「伝えたいこと?」


 顔を真っ赤にした沙希さんは、俺を見つめながら「うぅ〜〜」と小さく唸る。


「にしても相変わらず真っ黒な部屋だね〜。あっ、これやっぱりやってるんだ」


 強引に話を変えるように沙希さんはベットから立ち上がると、勉強机に置いてあった白いヘルメットを持ち上げる。


「ヘルメット?」

「なんか埃被ってるけど最近やってないの?」

「え?そのヘルメットがどうしたんだ?」

「なに言ってるの?ゲームでしょ、遊吾の好きな」


 軽いボケを流すように沙希さんは笑って流す。


「そのヘルメットはゲームなのか?」

「あ〜あ、私も抽選当たってたらな〜。あれ遊吾のヘルメットって黒じゃなかった?」

「抽選?ゲーム?……っつ!」


 写真を見た時と同じように痛みが走り、頭を押さえる。


「どうしたの?!遊吾、どこか悪いの?」


 駆け寄って来て心配そうに背中に手を添えてくる。すると痛みが少しずつ治っていく。


「大丈夫。大丈夫だから」


 今回の頭痛では何も思い出せなかった。痛いだけで痛損だ。


「具合悪いなら帰るよ?」

「いや、帰らないでくれ……」


 沙希さんは心配そうな顔をしている。俺は話すかどうか迷いながらも決心する。


「ごめん……黙っていたけど俺は今、記憶喪失なんだ」

「……へぇ〜〜」


 沙希さんは物凄く呆れた顔をしていた。

 え?こういうのって持ってる物を床とかに落としたり、深刻そうに驚くものじゃないのか?!


「いや……俺は記憶喪失になったんだぞ。もっとこうあるだろ?」

「遊吾って記憶喪失に何回なるの?」

「俺ってそんなに頻繁に記憶喪失なってたのか?!」

「とぼけないでよ!小2の時に私が取っておいたオヤツのプリン勝手に食べた時や、中1の時に私と優愛の着替え覗いた時もそうだし、最近だってジュースを賭けて腕相撲して負けたのに昨日の記憶がないって記憶喪失になってたじゃん!」


 記憶をなくす前の俺って結構しょうもないやつ!


「そんなウソと今回は違うんだ。本当に記憶喪失なんだよ!」

「ふ〜〜ん、じゃあ私のことも分からないの?」

「あ、ああ……ずっと誰か分からず喋ってた。ごめん……」

「へぇ〜、だったら私が遊吾の彼女だってことも?」

「え?」


 やっぱり彼女だったのか?!通りで距離感が近いと思ったんだ!


「そうか、やっぱり沙希さんは俺の彼女だったのか……!」

「〜〜〜!!もう帰る!!」


 沙希さんは踵を返して部屋から出ようとする。


「待ってくれ!それでも俺の彼女かよ!」

「ウソよ!彼女じゃにゃい!」

「ないって言ったのか?どっちなんだ?!いや、でも彼女だろ?あれだけ至近距離で座ってたんだから」

「違うよ!!」


 顔を真っ赤にして叫ぶ沙希さん。照れとかではなく本当に彼女ではないようだ。


「もう優愛ちゃんに言いつけてやる!ばーか!」


 バタンとドアを閉めて出て行ってしまった。


「ゆあちゃんって誰だよ…」


 結局、沙希さんからは何も聞くことができなかった。

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