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第6話 『退院と訪問』

 10日の昼に事故に遭い、13日の朝に目を覚まし、3日間の入院を無事に終えた。

 本日3月16日に俺、日之内遊吾は無事に退院した。


「遊吾、ここがあなたの家よ」

「ここが……?」


 綺麗な一軒家を、お母さんが紹介してくれる。俺ってなかなか良い家に住んでいるんだな。


「ここがリビングで……ここがトイレで……ここがお風呂と洗面所で遊吾の歯ブラシはこの黒色のよ」


 各部屋をお母さんが案内してくれるが……中々に広い!やっぱり俺って良いとこ住んでるんだな!


「それでここが遊吾の部屋」


 最後に案内された自分の部屋は真っ黒だった。勉強机、ベット、本棚、その他諸々全て真っ黒だ。


「お、お母さん……俺って心か何か病んでたの?」

「いいえ、全部あなたの趣味よ」

「そ、そう……」


 記憶喪失前の俺ってそんなに痛いヤツだったのか?


「あっ、あとコレ渡しておくわね」


 お母さん差し出した手には、黒いスマホがあった。


「奇跡的にスマホは無傷だったのよ」

「へぇ……」

「安心してね、顔認証でしかロック解除出来ないから中身は見てないわ」

「……」


 イジワルにほくそ笑むお母さんをジッと見つめる。


「それじゃあ、お母さんはリビングに居るから部屋でゆっくりしてて」

「うん、ありがとう」


 部屋の扉が閉まりお母さんが部屋から出て行き、俺一人になる。


「ゆっくりって」


 こんな真っ黒な部屋でゆっくり出来るわけないだろ。っと思いながらベッドで横になる。


「……うん、落ち着くな」


 記憶をなくしても、俺という人間は骨の髄から真っ黒が好きなようだ。

 手に持ったスマホの電源ボタンを押すと綺麗な街の写真が画面に表示される。


「っ……!!」


 俺はこの街を知っている?いったいどこで?思い出せ…思い出せ。


「つっ!」


 頭に痛みが走る。それと同時に画面に表示されている街を歩いている記憶を思い出す。

 俺はこの街に行ったことがあるのか?写真の街は明らかに日本ではない。俺は海外旅行が趣味なのか?この写真の場所はいったい何処なんだ?


「ダメだ!これ以上思い出せない」


 くそ!もう少しで思い出せそうなのに!もう一歩、後押しが足りない!

 苛立っていると画面にメッセージアプリの通知が表示される。


『ヒマな時に連絡して良いって言ってたけど今とか大丈夫?』


 なんて読むんだ?ささきさきか?早口言葉みたいな名前だな。


「……」


 名前のかんじから女の子だろう。もしかしたら何か知っているかもしれない。会って話を聞きたい。

 

『大丈夫。急だけどどっかで会える?』

『本当に急だね!大丈夫。なら久しぶりに遊吾の真っ黒な部屋見たいから家に行って良い?』


 返信すると直ぐに返事が返ってきた。俺の部屋に来るような仲なのか?もしかしたら彼女とかか……。


『今から準備して10分くらいしたらで着くから見られたくない物とか隠しておくんだよ』


 文の後に照れたウサギのスタンプが送られてくる。

 一応部屋を見渡して見るが、勉強机の上に変わった形の白いヘルメットと小さな段ボール箱があるだけで他には目立った物はないので大丈夫だろう。


『大丈夫だから早く来て』


 と送り、リビングに居る母親に篠城沙希が10分後に家に来ることを伝えると、母親は「本命は沙希ちゃんなのね」とわけのわからないことを言っていた。


『あと5秒で着く』


 スマホに通知が届いたと同時に玄関のチャイムが鳴った。


「だったら送ってくんなよ」


 スマホをベッドに叩きつけると、玄関で母親の声と女の子の声が聞こえる。完全に出迎えに行くタイミングをミスった。

 階段を上がる音が聞こえ、俺はドキドキしながら部屋に入ってくる佐々城沙希を待ち構える。


「入って良い?」


 ドアから女の子の声が聞こえる。


「どうぞ」


 俺は部屋へと招き入れるとドアがゆっくりと開いていく。

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