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第30話『決闘の手袋』

「この妖精を消されたくなかったら」


 ガーヴィは俺の足元に白い手袋を投げる。


「それを拾いなさい」

「ダメ!マリむぐっ!」

「黙ってなさい」


 俺を止めようとしたエリーの口が指で塞がれる。


「これを……?」

「そうよ、その手袋を拾えば今すぐこの妖精を解放してあげる」

「むー!!んー!!」


 喋れなくなっているエリーが拾うなと目で訴える。

 それほどこの手袋は厄介な代物らしい。


「……分かってる、エリー。これが罠だってことくらいはな」

「うっ!」


 自分の意思が俺に通じたと感じエリーが安堵する。


「でもさ、もしこれを拾わずにマイルームに逃げてしまったら……これからお前と馬鹿みたいにふざけ合ってる時や、綺麗な景色を一緒に見ている時、そんな楽しい時にお前を裏切っちまったことを思い出しちまう」


 俺は足元に落ちている手袋を掴み取る。


「そんな嫌な思いをずっとするくらいなら、罠だろうが何だろうが拾ってやる!」

「拾ったわ!!馬鹿な子!こんなクソ妖精を助けるために!」

「っ!拾ったんだ!エリーを離せ!」

「良いわよ。これで最後になるんだから、お別れくらいさせてあげる」


 ガーヴィはすんなりとエリーを掴んでいた手を離した。

 何か攻撃してくるのかと警戒したが、エリーには何もされず俺の元に帰ってきた。


「何で拾っちゃうのよ!」


 解放されたエリーは、涙目になりながら俺の顔前で怒る。


「ごめん、でも……」

「でもじゃないよ!マリーの拾ったのは【決闘の手袋】っていうPvP専用のアイテムなんだよ!」

「PvP専用アイテム?」

「キャハハッ、なにも知らずに拾うなんて本当に馬鹿ね!」


『プレイヤー【ガーウィ】の使用した決闘の手袋の効果が発動しました。PvPのルールを選択して下さい』


 テキストウインドウが表示される。


「こ、これは?」

「マリー、見て!勝者が貰える物を!」

「勝者の貰える物?」


『勝者は敗者からアイテムを全て受け取る』


「アイテムを全て?!そんな!」

「分かった、マリー?!マリーの持ってる召喚石は全部取られちゃうんだよ!だから私なんて見捨ててマイルームに逃げてくれたら良かったんだよ!」


 エリーは俯き、悔しそうに自分の着ているワンピースの裾を強く握る。


「……エリー、俺はやっぱり知ってても拾ってたぜ」

「なんで?!どうして?!」


 エリーは顔を上げ、涙を流しながら俺を見つめる。


「さっきも言ったが、後悔したくないんだよ。拾わなかったら俺は召喚士としてお前と顔を合わせることはできない。俺はお前とずっと一緒に居たいからこそ拾ったんだ」

「マリー…」


 エリーは覚悟を決め、流れている涙をゴシゴシと手で拭う。


「分かった、マリー。こうなったらアイツを倒そう」

「ああ!」

「マリー、表示されてるメニューを見て」


 メニューにはPvPのルールの設定画面が表示されている。


「PvPの報酬とフィールドはガーヴィが決めれるけど、残ってる項目はマリーが決めれるから有利なルールにして少しでも勝率を上げよ」

「あ、ああ」

「本来のPvPは大まかにしかルールは決められないけど【決闘の手袋】を使用した場合だけ細かく決めれるんだ」

「なるほど…」


 俺はメニューの自分が決めれる項目を選択する。


「先ずは、さっき高速で移動できるスキルを使ったの分かった?」

「気がついたら後ろに居たやつか」

「そう。あのガーヴィの高速で移動出来るスキルを何回も使えないようにする為に【スキルの再使用に倍の時間掛かる】にしておくのと」

「なるほど」

「それと【アイテムの使用を不可】にも」


 エリーの提案に疑問が浮かぶ。俺の大量にある薬草を使えなくなるのは不利なんじゃないのか?


「アイテムで回復ができなくなってもマリーには装備を変えれば回復できるでしょ?それにガーヴィはきっとAGI(素早さ)を上げるアイテムを持っているはずだから、今でこそ手に負えないガーヴィをこれ以上強くさせない為にも【アイテムの使用を不可】にしておいた方が良いよ」

「な、なるほど……」


 ここまで考えていたなんて……いつもはアホなかんじでふざけてばかりだが、本当に頼りになる相棒だ。

 俺はエリーに言われた通りにルールを変えていく。


「他は良いとして……最後に【チュートリアル中の攻撃は不可】にもしておいて」

「チュートリアル?どういう効果があるんだ?」

「これは言わない方が良いかも。言っちゃうとマリーが意識しちゃうから……お願い、私を信じて」


 エリーには何か策があるようだ。そう言われると、俺は信じるしかない。


「分かった。信じるよ」


 俺は【OK】ボタンを押す。


「へぇ〜、スキルの再使用が倍ね…あとはアイテムの使用が不可。ふ〜ん、考えたわね」

「どうだ!」


 考えたのはエリーだが、俺は胸を張ってやる。


「まあ良いわ。どうせ私が勝つんだし」


 ガーヴィは余程の自信があるのか、早々に【OK】ボタンを押してメニューを閉じた。


『ルールが決定しました。開始まで5秒前……4、3、2』


 カウントダウンと同時に、俺とガーヴィを中心に半透明のガラスがドーム状に覆っていく。


「エリー、俺は絶対に勝ってみせるからな」


 完全に逃げれなくなった事により、恐怖心が生まれた自分の心を奮い立たせるようにエリーに覚悟を伝える。


「うん、信じてるよ。マリー」


 俺の前を飛んでいたエリーも緊張した顔で答える。


『1……開始します』


 ピーー!!と甲高い開始音がフィールドに鳴り響く。

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