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第28話『初クエスト』

「ここがクエストカウンターか…」


 集会場と比べるとプレイヤーが少ないが、広さは集会場と同じくらいだ。


「混んでいたら横にある機械でクエスト受けるんだけど、今日は人も居ないから受付の人のところでクエストを受けよっか」

「お、おう」


 エリーが飛んで行くのでついていく。

 なんだか出来る男にエスコートされているみたいだ。気のせいかエリーがカッコよく見える。


「こんにちは」


 受付嬢の美人のお姉さんの前に立つと笑顔で話しかけてくれた。頭上を見れば決められた事しか話さないNPCを表す白色の名前だった。


「現在受けられるクエストはこのようになっております」


 受付嬢のお姉さんが話し終えると俺の目の前にテキストウインドウが表示される。

 内容は俺のレベルで受けられるクエストが羅列されている。


「色々とあるな…薬草採取に討伐か…」

「マリー、これなんて良いんじゃない?」

「これか?ゴブリンを15体討伐…。これのどこが良いんだ?」

「報酬が2000Gなのと、槍使いの軽装備一式って装備も貰えるって結構良いよ」


 本当だ。お金が貰えるうえに装備まで貰えるのは確かに良いのかもしれない。


「そうだな。このクエストにしよう」

「クエストは一度に3つまで受けれるから、他にも受けておけば?」

「そうなのか?じゃあ残り2つは簡単なのを受けておくか」


 俺はゴブリン15体の討伐クエストと薬草採取のクエスト2つを受注した。


「ありがとうございました。ご武運を」


 礼儀正しく会釈する受付嬢をあとにして冒険者ギルドから出る。


「マリー、受付の女の人はたまにAIの時があるから、その時はレアなクエストが受けられんだよ」

「へぇ〜、覚えとこ」


 エリーと雑談をしながら街の出口へと向かう。


「そういえばゴブリンってどこに居るんだ?前に行った時は見なかったけど」


 街から出て、草原を見渡しながら疑問に思ったことを聞いてみる。


「森の周りに居るよ。だから先ずが森まで行かないとね」

「なるほど」


 前に森の入り口まで歩きで15分くらいかかった。また歩いて行くのは面倒だな。

 何か乗り物でもあれば…。


「そうだっ!『召喚!』ナイト!」


 地面に召喚陣が現れてナイトが召喚される。


「ナイト〜、悪いんだけど俺を背に乗せて森まで行ってくれないか?」


 ナイトは俺の倍くらい大きいので乗って移動できるはずだ。

 俺はナイトの顔をワシャワシャと撫で回しながら頼み込む。


「ワウ…」


 仕方ないなっという態度でナイトは俺が乗りやすいように座ってくれた。


「ありがと〜!ナイトサイコー!」


 俺はナイトの背に優しく腰を下ろす。

 ナイトが立ち上がると俺の足が浮き上がる。


「大きい犬に乗ってる子どもって、なんだかほっこりする絵だね」

「狼だ」

「ワウ」


 俺とナイトはエリーに文句を言う。


「じゃあ頼むぞ、ナイト」

「ワウ!」

「あっ、ちょっと!私も」


 エリーが急いで俺の肩に乗るとナイトが走り出す。


「危なっ!」


 走り出すと揺れて落ちそうになり、慌ててナイトの体にしがみつく。


「ぷぷ、コアラの子どもみたい」

「うっさい」


 俺とエリーのしょうもない会話など気にせずに、ナイトは草原を駆け抜ける。

 走ること数分で森の入り口まで到着してしまう。


「ありがとう、ナイト」

「ワウ」

「そんで、エリー。森の周りにゴブリンは居るんだよな?」

「そうだよ。森の周りを歩いていれば出てくると思うんだけど…あっ!居た!」


 森の中からゴブリンが出てくる。


「よし!ナイト、攻撃だ!」

「ワウ!」


 俺の指示でナイトが駆けていく。まるでドッグブリーダーのようだ。

 ……記憶喪失なのにドッグブリーダーは分かるのは不思議だ。暇な時に覚えていない事を表にでもまとめておこうかな…。


「ガウ!!」


 俺がくだらない事を考えている間に、ナイトがゴブリンの胴体に噛みつく。

 噛み付かれたゴブリンは短い悲鳴をあげると、ガラスのように砕け散る。


「ナイスナイト!」

「ワウ!」


 ナイトは嬉しそうに俺の元に駆け寄ってくる。


「ワウワウ!」

「よしよ〜し」


 撫でてくれと言わんばかりに擦り寄ってくるので、俺は頭を撫でる。

 本当にドッグブリーダーみたいだ。


「『召喚!』スピカ!」


 召喚陣が浮かび上がりスピカが召喚される。


「スピカ、ゴブリンを15…いや14体倒さないといけないから一緒に頑張って倒そうな」

「キュイキュ!」


 任せておけと言わんばかりに鳴く。

 泣き虫だったスピカがこんなに成長するなんて…。


「よ〜し!頑張るぞ!」


 俺たちは森の周りを散策する。


「ギギ〜!」

「キュイ!」

「ガウ!」


 ゴブリンが出てくればスピカとナイトが早い者勝負のように倒す。

 それを数回繰り返していて気付いたが…。


「……エリーって本当に戦闘の時は何もしないな」

「え?!!!」

「声でか!」

「な、何もしてないわけじゃないでしょ?!今もこうして私がセレクトしたクエストをしてるわけだし!」


 エリーは額に大量の汗を流しながら言い訳を始める。


「私がこう、け、なっ…分かるでしょ?!」

「分かるか!け、なっって何だよ?!」

「だから!私が経験値にお金に装備が貰えるっていうベストクエストを選んで場所まで案内するのが私の仕事であって、何もしてないわけじゃないんだよ?それにこうして話し相手にもなれるわけだし!もしも私が居なかったと考えた結果、これが正解であって即ち私が居たことによりマリーは良い方向に向かっているんだよ!」


 必死に訳の分からないことを言うエリーは、早口なのにハッキリと聞き取れるように喋っているところは流石AIだと感心してしまう。


「分かった分かったって!エリーは仕事してるよ」

「そ、そう?分かってくれたのなら良いんだけど…」


 本当は何を言ってるのかサッパリ理解出来なかったが、これ以上エリーに喋らせたくない。

 もしかしてエリーは、自分だけ何もしていないと思われたくないのか?なんて面倒くさいやつだ。今後は失言に気を付けよう。


「そういえば、さっき言った経験値ってなんだ?」

「ふっふ〜ん、経験値?経験値について教えてほしいの?」


 質問されたエリーは嬉しそうに話し始める。

 さっき失言をしてしまったので、茶化さずに説明をさせてやろう。


「経験値っていうのは敵を倒したり、ジョブのスキルなんかを使えば貰えるんだよ」

「へぇ〜、貰ってどうするの?」

「経験値を積めばレベルが上がって自分のステータスが上がったり…ってコレは絶対装備があるマリーには関係ないか。新しくスキルを覚えたりするんだよ」


 少しショックな説明もあったが、経験値については何となく分かった。


「あとスキルを覚えるのは経験値だけじゃなくて同じジョブのプレイヤーに教えてもらったり、プレイヤーの感情の昂ぶりとかでも新しく手に入ったりもするんだよ」

「感情の昂ぶり?」

「凄い怒ったり、悲しんだりとかだよ」

「あるかな?そんなこと」


『クエスト【ゴブリン15体の討伐】を達成しました。2000Gと槍使いの軽装備を入手しました』


「おっ、クエスト終わったみたいだ」


 新たに出てきたゴブリンを倒そうとしているスピカとナイトを呼び戻すことにする。

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