第19話 『エリーの説明』
少し長いです。
分割するのも変になるので割らずに投稿しました。
「ん……」
目を開けると木の天井が目に入る。
「ここは?」
起き上がり部屋を見渡すと見覚えのある椅子や机があった。どうやらマイルームのようだ。
「おっと……」
先ほどまで身長が170センチくらいあったのが、急に低くなったのでバランスを崩しかける。
とりあえずエリーを召喚しておくか……。
「『召喚!』エリー!」
空中に召喚陣が出現する。そこからエリーの形をした光のシルエットが浮かび上がり、パッとエリーが現れたが……。
「……zzZ」
召喚されたエリーはピンク色のナイトキャップと、羊の柄が入ったピンク色のパジャマを着て寝ている。
寝てる?こんなことってあるのか……?寝ながら器用に空中に浮かんでいる。
「ベタな柄のパジャマ着やがって……」
「う〜ん……」
「おい」
「う〜ん……!」
肩を指で揺らすが手で払われる。
「おいって……」
「う〜ん……それは飴玉じゃないよマリー……」
「飴玉?俺が飴を食べようとしてるのか?」
「それはグミだよ」
「そういう見た目のお菓子あるけど!!」
「えっ?!なに!」
エリーが俺の声に驚いて飛び起きる。
「おはよう、エリー」
「あれ?マリーだ。あれ……?ログインするのって明日じゃなかった?」
「暇だったからログインした。着替えて早く行くぞ」
「え〜、せっかく気持ち良く寝てたのに〜」
エリーは唇を尖らせて不満を言う。
「……じゃあ一人で行こ」
「うそうそ!急いで支度するから待って!」
マイルームに一つしかない机の上に着地すると、どこから出したのか化粧台で化粧をし始める。
「もう本当に急なんだから!」
エリーは文句を言いながら顔にクリームを塗り始める。
「なぁ、もう化粧とかいいから早く行こうぜ」
「もうちょっと待って」
「化粧なんてしなくてもエリーは可愛いって」
「男の人っていつもそう言うけど女の子にとって化粧は必要なの!それなのに男の人って『すっぴんでも可愛いから大丈夫』とか『誰も見ないからしなくていい』とかそういうことじゃないの!女の子にとって化粧は」
「もういいって!急にどうした?!最近彼氏と上手くいってない彼女みたいなキレ方してくるけど!」
エリーってこんなに面倒くさいヤツだったかな?
いや、まあ……今日は休みって言われたのに急に仕事って言われたら誰でも不機嫌になるか。
「ゴメン、エリー」
「何してるの?行くよー」
「……」
いつの間にか机の上にはエリーは居らず、マイルームの扉まで移動していた。
「今日は俺が悪いから何も言わないけど、次やったら怒るからな」
「まあまあ、そんなに怒らないで早く外に出ようよ」
俺はエリーに促されるまま扉を開けると、一瞬視界が真っ暗になったかと思えば外に出ていた。
外は明るく、目の前にはログインした時に見えた西洋風の建物があるので街の中に出てきたようだ。後ろを見ると宿屋風の建物があり、看板には『宿屋 安心し亭』と書かれていた。
「安心し亭?」
「ここは自分のマイルームに入るためのところだから、街に先ず着いたら場所を覚えておいた方が良いよ」
「でもメニュー画面を操作してマイルームに移動できるんじゃないのか?」
「よく知ってるね。でもその方法で移動するには1度、宿屋に行かないと出来ないんだよ」
なるほど。マリアも一度、安心し亭に来たってことか。
「にしても夜だっていうのに明るいな。このゲームに夜ってないのか?」
「マイルームのベッドで寝ると夜になるよ。夜を遊びたいならベッドで寝ないとね」
「へぇ〜、覚えとこう。それで今から何をした方がいいんだ?装備とかを買った方がいいのかな?」
「う〜ん、この街にある装備でマリーの手持ちで買えるのは弱いのしかないから……外に出た時に死なない様にする為に回復薬を買えるだけ買っといた方が良いんじゃない?もしくは加護のお陰で錬金が100%成功するんだし、錬金用の道具を買って道中で見つけた薬草とかを錬金して回復薬を作るっていう手もあるけど」
質問するとしっかり教えてくれるし、アドバイスも的確だ。素晴らしいアドバイスをくれるエリーに感謝しかない。
「ありがとうな、エリー。本当に召喚して良かったよ」
「急にどうしたの!?気にしなくていいよ。私はマリーが死なないようにアドバイスしてるだけだから」
「本当に良い妖精だな!」
「もう褒めるのはいいって!それより結局どうするの?」
「ああ……今後もずっと使うことを考えて錬金の道具を買うことにするよ」
メニューでマップを開いて売っている場所を探すが、どの店が良い店なのか分からない。
「こっちだよ、マリー!初心者が買える安い道具屋さんがあるだよ!」
本当に頼りになる、敬語で話した方が良いかな……。飛んで行くエリーの案内に付いて行く。
歩いてすぐのところに《最初の道具屋さん》と看板に書かれた店に到着する。
「ここか……」
外装は綺麗だ……中はどうだろうかと店のショーウィンドウから覗こうとすると自分の姿が映る。やっぱり何回見ても可愛いなマリアって…………クルリと回りながら姿を見ると。
「可愛い」
ショーウィンドウに顔を近づけて顔を見るとまつ毛も長いし目も青色をしているし、それに……。
「マリー、中の人が見てるから……」
「え……?!」
エリーが恥ずかしそうに耳元で教えてくれたので中を見ると、店の中ではクスクスと笑いながらプレイヤーが数人が見ていた。
「エリー!早く買って帰ろう!」
「う、うん!そうだね!」
エリーに勧められるままに速攻で2700Gの錬金釜のセットを購入して店を出る。残金300Gの貧乏プレイヤーになった。
「あ〜、恥ずかしかった〜!」
「もう!何やってるの!自分に見惚れるってヤバい人だよ!」
「たしかに……」
あまりにもマリアの姿をした自分が可愛くて見惚れていた。次からは気をつけよう。
「装備も買い終えたし、これからどうしたら良いんだ?」
「このままダンジョンを攻略するなら街から出るけど、ダンジョンに挑戦してみる?」
「う〜ん……そうだな。負けても良いから一度ダンジョンに行ってみるか」
「だったらこっちだよ」
エリーが指差す方向を見ると大きな門が見える。
「あのデカイ門から外に出れるのか?にしても巨人用の扉かと思うくらいデカイな。あんなにデカくなくても絶対大丈夫だろ」
「見た目って大事だからね。ここから外に出たら冒険が始まるんだっていう門が、木で作られた小さな引き戸だと嫌でしょ?」
「まあ、居酒屋かよってなるな」
にしても、自分の記憶はないのに居酒屋の扉の知識はあるのは不思議だ。
「こっちこっち」
エリーの道案内に着いて行きながら、歩いているプレイヤーを見ていると頭の上の名前の色が違う事に気付く。
「なあ、エリー。プレイヤーやNPCの頭の上にある名前の色とかが違うのって意味があるのか?」
「うん、あるよ。『青がプレイヤー』で『緑がAIのNPC』で『白色がヒントしか言わないAIじゃないNPC』で『赤が敵やモンスター』で『紫色がPK』だよ」
プレイヤーキラー?そういえばマリアも気をつけるように言ってたな。
「プレイヤーキラーってプレイヤーを襲うプレイヤーだよな?どうしてプレイヤーを襲うんだ?」
「そうだよ。プレイヤーを狙う理由は貰える経験値がモンスターよりプレイヤーを倒した方が多いのと、勝った時にプレイヤーが持っている所持金や持ち物をランダムで貰えるからっていうのが理由かな。ちなみにプレイヤーに襲われて返り討ちしてもPKにはならないから、なる方法は街とかに居るNPCを故意で攻撃したり、プレイヤーを3人以上PvP以外の方法で倒したらなっちゃうよ」
プレイヤーキラーか……会うことはないだろうが気をつけるか。
心の中で気を引き締めながらエリーの頭上の名前を見ると緑色だった。エリーってAIだったのか……たしかに感情や表情とか豊富で生きてるみたいだしな
そんなことを話しながら10分歩くがまだ着かない。こんなに歩くなら出来るか分からないがナイトの背中にでも乗って行きたいものだ。
「着いたよ!ここが始まりの門だよ!」
「やっとか……」
門に近付いて行くと、門の側に立っていた衛兵が敬礼してくる。頭の上を見るとNPCを表す白色の名前だった。
「外の世界か……」