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第67話『カレン戦』

 カレンがメニューを操作すると、俺の前にメッセージウインドウが表示された。

 それを俺が操作しようとすると、エリーが指にしがみ付く。


「な、なんだよ?!止めるつもりか?」

「違うの!試合じゃなくて、練習でやってほしいの!」

「練習?」

「そう!練習でできるPvPがあるからそっちでやってほしいの!」


 カレンと目を合わせるが、お互いに意味がわかってないようだった。


「なんでだよ?普通にやれば良いじゃないか?そうじゃないのか?違うのか?どうなんだ?」

「そんな詰め寄らないでよ!練習のPvPだともしも負けても戦歴に影響がないから、そっちの方がおすすめだから!」

「どういうことだ?」

「なるほどな、それもそうだな」


 俺とは違い理解したカレンは、メニューを操作する。

 目の前に表示されていたメッセージウインドウの画面の文字が変わった。


「うんうん、これなら大丈夫だね!」


 エリーが俺よりも先に確認する。


「ならOKボタン押すぞ」


 下にあったボタンを押すと景色が一変した。

 いつかのシオリと召喚石のPvPをした森に変わっていた。


「そういえばシオリとのPvPの時は、なんで練習PvPにしなかったんだ?」

「物を賭けての勝負は練習だと出来ないんだよ」

「あ〜、なるほど」


 そんなことをエリーと話していると、カレンに動きがあった。


「マリー、さっさと合成して装備しな。『パワーアップ』×3!」


 カレンの身体がオレンジ色に発光した。

 今まで気にしていなかったが、どうやら付与魔術師のスキルを使うとエフェクトで発光するようだ。


「マリー、練習だと合成した召喚獣は終わったあとでも召喚できるから、どれだけ合成しても大丈夫だよ」

「そりゃ便利だな。『合成』」


 PvP後のことは気にせず、スピカと格闘家の装備を合成する。

 装備してカレンの動きに合わせるため、腕を構える。


「準備万端だな!いくぜ!」

「準備万端か……」


 お前がまだスキルを隠していることは知っている。

 格闘家のスキル、身体強化。それと付与魔術師のスキル、スーパーパワーアップ。カレンがこの二つを使った全力の状態になった時、俺の全力を見せてやる。


「おら!」


 カレンが俺の顔に目掛けて拳を振るう。

 その拳を避け、逆にカレンの顔へと殴りかかろうとしたが止まってしまった。


「くっ……!」


 仲良くなった少女を殴ることに抵抗感が出てしまった。

 攻撃しなければいけないことはPvPを始める前から分かっていた。

 しかしヴァルハラのような悪事や迷惑行為をしているヤツならともかく、友達のカレンとなっては話は別だ。

 止まってしまった俺から、カレンは後方に軽やかに下がった。


「……マリー、おれは嬉しいぜ、お前とこうして戦えるのが」

「そうか?俺は友達と殴り合うのは嫌だけどな」

「ふっ、たしかにおれも友達と殴り合うのは嫌だ。でもそれは現実世界での話であって、このゲームの世界では話は違う。現実世界の戦いは痛くて怪我をしてしまうかもしれないし、相手のことを考えて戦ってしまう。けどよ、ゲームの世界は怪我もせずに純粋に思い切り気にせず戦える」


 カレンが暗い顔をして言う。

 もしかしたら過去に何かあったのかも知れないが、ここで詮索するのがやめておくことにしよう。


「だから遠慮せずに殴ってこい!これでおれが大怪我するわけでも死ぬわけでもないんだ!」

「……わかった!次は殴る」

「それでいい。じゃあ第二ラウンドだ。『スーパーパワーアップ!』『身体強化!』」


 先ほどのスキルよりもさらにカレンの身体をオレンジ色に発光した。


「これがおれの本気だ!」

「はや……!」

「おらっ!」


 俺の目前にカレンが高速で移動した。

 カレンは最初と同様に俺の顔に殴りかかるが、辛うじて見えた攻撃を両腕で守る。


「ガラ空きだ!『スマッシュナックル!』」

「ぐあっ!」


 両手で顔を守っていたので、腹部にカレンのスキルが直撃した。

 練習とはいえPvPなので痛みもありダメージも受けるので、その場にしゃがみ込んでしまう。


「勝負ありだな」

「……本当にそう思うか?」

「ああ、この一回の攻防でわかった。マリーにはまだ加速するスキルがあるだろ?だがおれの動きにギリギリでしか追いつけていない状態で加速のスキルを使ったところで、その速くなった数秒を防げばおれの勝ちだ!」


 カレンが腕を組んで余裕の態度を取っている。


「ああ、カレン。その通りだ……お前の言う通り、その考えは正しい、いや正しかった。ガーヴィと戦う前までだったら負けていた」

「はぁ?何を言ってんだ?」

「カレン、お前に二つ言わなければいけないことがある」


 俺は立ち上がって、膝についた土を払う。


「一つは身体強化をスキルを教えてもらったにも関わらず、今だに覚えていないことを謝りたかった」

「はっははは!まじかよ!そんな状態でよくおれと戦おうと思ったな!それはおれをナメ過ぎじゃないのか?!」


 カレンが怒りを露わにする。

 格闘家の身体強化はもしかしたら、覚えて当たり前のスキルだったのかもしれない。もしくは覚えたら一人前とかだったのなら、本気で謝らないといけない。


「悪いな。でも俺はカレンに勝つつもりだ。それが二つ目の言いたいことだ。俺は奥義スキルを覚えた」

「奥義スキル?……ぷっ、あっはははは!だからまだ目が死んでなかったのか!奥義スキルで勝てると思ってるからだったのか!」


 お腹を抑えてカレンが大笑いする。


「格闘家のジョブのおれが言うのもなんだが、格闘家の奥義スキルは威力はあるが溜めが長いせいであまり対人戦では使えないスキルだぜ?今の状況でもし使おうしたら、おれがスキルの発動前にマリーを倒す」


 スキルによって発光していたが、その光が消えた。


「おっと、長話し過ぎた。まあいいや、ほら。強化スキル使うのも面倒だし、マリー負けを認めろよ」

「いいや、カレン。もう一度スキルで強化しろ」

「だから!もうおれの勝ちだろ!」

「カレン、お前には身体強化を見せてくれた恩がある。その恩で見せてやるから、よく見とけよ。奥義スキル」


 俺がスキルを使おうとすると同時に、カレンが阻止しようと動き出した。


「させるか!」

「『超身体強化!』」

「はあ?!」


 俺の発動したスキルにカレンが驚いて動きが止まった。

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