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災悪のアヴァロン【コミック10巻 12/18日発売!】  作者: 鳴沢明人


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171 ささやかな祝賀会

 ダンジョン25階の、緩やかな丘が続く草原地帯。そこには映画館クラスの大きなスクリーンが設置され、半円状にずらりと並べられたパイプ椅子の上には様々な服を着た参加者が座っている。

 

 先ほどからスクリーンの片隅で頻繁に腕時計を見ていたスーツ姿の男が顔を上げると、マイクを口元で握りしめて声を張り上げる。


『ではただいまより、偉大なる功績を収められたお嬢様(・・・)に、心からの敬意を込めてっ、祝賀会を開催させていただきますっ!』

「――わーっ」「お嬢様ーっ!!」

「立派にご成長なされましたね……」


 歓喜の声と力強い拍手が巻き起こり、中には男泣きしている者もいた。何事だとその様子を見ていると、隣に座っていたメイドが「何故お前は拍手しないのだ」と言わんばかりに鋭く睨んできたため、慌てて俺も追従し手を叩くことにする。

 

 しばらく拍手が続く中、隣に設置された天幕から陽光を乱反射させた全身鎧が飛び出て、即席で作られたステージに上っていく。足元には頭の大きな猫っぽい何かがゆったりとした動作でまとわりついているが、今は置いておこう。

 

 全身鎧はこちらに手を振ってから一礼し、手渡されたマイクを両手で握って元気よく挨拶する。

 

『えー、みんな! ウチのために集まってくれてありがとー! 無事にこの子と契約できてハッピーだよっ! 今日はいっぱいご馳走を用意したから遠慮なくいっぱい食べていってねー!』


 無数のⅤサインで現在の心境をアピールする全身鎧。再び拍手が巻き起こると同時に、奥にあったプレハブ小屋から10人くらいのコックがワゴンを引いて出てきた。その上には大量に料理が乗っており、先ほどまでハンカチで涙を拭いていた執事達も一斉に立ち上がり、簡易テーブルを設置し始める。

 

「きたきたきたーっ! ご馳走待ってましたっ!」

 

 後ろの方で行儀の悪い声が上がったので目を向けてみれば、中学の制服姿の華乃が立ち上がって拳を天に突き出しているではないか。その後に「肉♪ 肉♪」などと妙な歌を歌いだしたので、他人のフリをしておくことにする。

 

 その隣には、運ばれてくる料理を注意深く吟味している冒険者学校の制服姿の少女――久我さんが並ぶ。最近は天摩さんと一緒にいることが多く、すっかり餌付けされているようだ。

 

 俺のテーブルの上にも湯気が立ち上るスープの皿が置かれ、時を同じくして前面に置かれた巨大スクリーンに映像が流れ始める。とある(・・・)少女の半生を描いたドキュメンタリー映画らしい。どうやらあれを見ながら食べろということのようだ。

 

 さて、この集まりは何なのか。それを説明するにもまずは、昨晩まで(さかのぼ)る必要がある。




 *・・*・・*・・*・・*・・*




 クランパーティーからやっとのことで家に帰り、シャワーを浴びて居間でくつろぐ。カロリーを使いすぎたせいで耐えがたい空腹が波状攻撃してくるが、ここで節操なく食えば体型はすぐに元通り。丸々太ったブタオの出来上がりである。

 

 そう何度も同じ(てつ)を踏んでやるものかと冷蔵庫からカロリーの低そうな食材を探していると、近くに置いてあった腕端末の画面が再び光り出す。

 

「げ……メールが106件も。留守電まで入っているじゃないか」


 さっきから大量にメールを送り付けているのは久我さんに違いない。疲れきっていて返信する気力もなく放置していたのだが、学校で出会ったときの対処がとんでもなく面倒なことになりそうなので、返事くらいはしておいたほうがいいだろうか。

 

 見れば、最初のほうのメールは「今いる?」などと軽い内容だったが、新着になるほど「無視してるの?」「返事しないと殺す」「実はもうお前の近くにいる」などと極めて物騒な内容となってきていた。電話は怖いのでメールで返信しておこう。

 

 すると案の定、金蘭会クランパーティーについて聞きたいと返事が返ってくる。今、どんな状況になっているのかテレビを付けて確認してみよう。

 

 どのチャンネルも東京での混乱の様子を伝えており、テロリストの関与を疑う報道がなされていた。神聖帝国の名はまだ出ていないようだが隠し通せるものでもなく、いずれ公になるのは避けられないだろう。

 

 また、とあるチャンネルではゲートの存在が白日の下に晒され、どういった影響があるのかを議論している評論家もいた。レベルが上がりやすくなってクランや貴族の権力闘争が激化。国際社会にも混乱が生じる可能性があると言っている。まぁ妥当な予測ではある。

 

「こんなとこか……ミハイロを倒してから時間はそれほど経っていないからな」

 

 テレビの電源を消して、腕を組む。

 

 ざっと見た限りでは情報が錯綜(さくそう)しており、政府の発表を待っているといったところか。どこにゲートがあるかなど具体的な情報を伝えてるチャンネルは無かった。


 しかし政府がどの程度まで情報公開するのかは未知数。今頃、閣僚や官僚達が頭を突き合わせて徹夜で会議していることだろう。


 一方、久我さんのメールには「ゲートについて何か知っていることはないか」と書かれていた。その質問から俺が東京に行っていたことは知らないと推測できる。現在流れている情報と俺の持つ知識を照らし合わせて精査し、より正確な情報にしたいというのが狙いだろう。

 

 俺としては将来的に久我さんを味方に引き入れたいので色々と教えてあげたい気持ちはあるのだが、何せ彼女との間にこれまで構築できた絆など羽毛のように軽く、吹けば飛ぶ程度でしかないという悲しい現実がある。教えた情報は「黙っておいてね」と頼んだところで、驚くほどスムーズに上司(ボス)――つまりアメリカに伝わってしまうことは明白。それは非常によろしくない。

 

 これから久我さんと行動を共にする機会も増えていく。何らかの縛りや制約を入れるべきか――と頭を悩ませていると、向こうから電話がかかってきてしまった。出るしかないか……


『……何ですぐに返信くれなかったの』


 声が据わっている。そのことから俺と連絡が取れないせいで上司にせっつかれ、相当に苛立っていることが分かる。何か言い訳を言おうかと思ったが、俺を責めたところで意味がないと考えた久我さんは、さっさと話を次へ進めようとする。


『東京で起きた事件と……“ゲート”について何か知ってることがあったら教えて』


 学校ではいつも気だるそうで何事にもやる気を見せない彼女であるが、単身で敵地に派遣されるほどの優秀な能力を持つスパイでもある。俺も気を引き締めて対応せねばなるまい。

 

 ダンジョン内転移装置“ゲート”について。これを使えば魔力登録したゲートまで瞬間転移できる便利なものだ。30階を超えれば1つの階層を移動するだけでも数日がかりの大冒険となるのだが、ゲートがあれば一瞬。だが久我さんが聞きたいのはそういうことではないだろう。

 

「特に知っていることなんてないけどね。テレビでもゲートがどうのと騒いでいるけど、そのうち日本政府から何か発表があるんじゃないのかな」

『でもこの前に、アーサーとかいうちんちくりんが、転移魔法を使っていた。あれも“ゲート”と言っていたので関連があるはず』


 よく覚えている。その通りで、スキルとしての《ゲート》もある。ゲート部屋に行かずともスキルさえ覚えていればどこでも使えるし、魔力登録も好きな場所にセットできる。事実上の完全上位互換であり、利便性は計り知れない――しかしだ。

 

「久我さん。前にも言ったかもしれないけど、隠匿情報は絶対に言わないと誓わなければ何も言わないよ」

『……誰にも言うつもりはない。それとも天摩(てんま)のように契約魔法を身に刻ませる気?』


 いつもフルプレートメイルを着て全身を隠している変わった女の子、天摩(あきら)。先日、彼女のほうから正式にパーティーを組んで共に狩りをしたいとの申し出があり、リサとアーサー、サツキを含めたプレイヤー会議を(おこな)ったのだ。その結果、天摩晶という人物は仲間として信頼できる上に、強力な味方になりえるとの結論に達した。

 

 俺達は早速「他言しなければ強力なダンジョン知識を無償で提供する」と伝えたわけだが……翌日になんと、『これが仲間の証』と言って、肩に刻んだ“契約魔法”を嬉々として見せてきたわけである。これには隣で付き添っていたメイドの黒崎さんも怒髪天である。

 

 俺としては紙面上で行う“契約魔法書”で十分だと考えていた。契約を破れば契約魔法書の紙面が燃えるので分かるという仕組みだ。だが体に刻むタイプの契約魔法は、契約を(たが)えれば刻んだ紋様がめらめらと発火し良くて大やけど、下手をすれば死んでしまう危険がある。しかも魔力を込めたインクで入れ墨のように魔法陣を彫るため消えることもない。

 

 己の命よりも大事にしている、しかも婚前の(あるじ)の肌に何て物騒なものを刻ませやがったのだと、毛を逆立てたメイドと危うくバトルになりかけたが、天摩さんの説得によりなんとか回避できたという事件があったのだ。

 

 予想の斜め上を素で行くような子なので、今後とも彼女の突拍子もない行動には注意しなければならない。それはともかくだ――


「何にしても、久我さんには書面上で契約してもらうよ。話をするにもそれからだ」

『……そう、じゃあそれは明日にでも。それと連絡事項。天摩のことだけど、無事に“契約”できたって』


 無事に“契約”……この契約というのは恐らく、モンスターとの契約のことだろう。天摩さんにはかねてからの要望により、モンスターを手懐けてペットとして戦わせることができる【テイマー】についての情報を伝えてあり、無事にジョブチェンジできたとの報告も受けていた。なのでモンスターと契約したと言われても驚きはない。でも一応、聞いておこうか。


「で、何と契約したって?」

『“ウガルム・クイーン”と。そうしたら縮んで変な猫になった』

「いきなりフロアボスとか……駄目だっていったのに」


 ウガルム・クイーン。体長は5mを超え、大きな白い耳と太い尻尾が特徴のネコ科のフロアボス。これまでに攻略クランをいくつも壊滅させてレベルアップし、手が付けられなくなっていた問題の個体だ。


 天摩さんは【テイマー】というジョブに就き、そのフロアボスに《テイム》というスキルを試みて契約を迫ったようである。無事に契約が成功するとモンスターはレベル1の状態となりペットにできるわけだが、その際に個体によっては小さくなったり若返ったりすることがある。


 だが、あくまで【テイマー】は中級ジョブ。フロアボスのような強力な個体への《テイム》は非常に成功率が低く、失敗するとヘイトを貯めてしまい戦闘となる。そのため何かしらの方法で対象を動けなくしてから契約を(おこな)うのが一般的な手法なのだが、ウガルム・クイーンほどの強力な個体となるとそれすらも難しい。前もって危険性を伝えていたのだが……

 

(一発でフロアボスを手懐けた?)

 

 向こうから襲ってくるアクティブモンスターではないので手を出さなければ戦闘になることはないが、人間にすぐ懐くような個体でもない。にもかかわらず初めてウガルム・クイーンと出会ったときから、天摩さんに異常なほど懐いていたのは何故か。あのような現象はダンエクにおいて記憶にないが、もしかしたら個体ごとに個性や相性があったりするのだろうか。


 しばし考え込む俺をよそに、久我さんは淡々と話を進めていく。


『――それで、明日は参加するの?』

「明日って?」


 何の参加だと言うと『お前はちゃんとメールを見ているのか』と怒られてしまった。メールボックスがほぼ久我さんのメールで埋まっていたため、見る気がしなくなっていただけだ。

 

 慌てて天摩さんからのメールを探して開いてみれば、何やら“祝賀会”なるものを開くと書かれていた。内容は、新たなジョブに就いたので、身内だけのささやか(・・・・)なパーティーを開きたく、俺と華乃を招待したいというものだった。

 

 この世界の冒険者はジョブを頻繁に変えるものではなく、極めるものという認識を持っている。そのためジョブチェンジの回数は最低限。新たなジョブに就いた際には身内やクランで集まってお祝いするのが一般的なようである。しかしこの祝賀会の主催欄に“アーサー”の名が入っていることから、アイツは前もって知っていたらしい……

 

 明日は体を休めるつもりだったが、大事な仲間となる人の招待を断るわけにはいかない。丁度いい食材も手に入ったことだし、一緒にお祝いしながら食うというのも悪くはないかもな。


「もちろん参加するよ、手土産を持ってね」

『そう……あと制服で来るようにって、あのメイドが言っていた』


 天摩さんの近くにメイドは一人しかいない。黒執事(ブラックバトラー)を率いる執事長・黒崎(くろさき)百合香(ゆりか)である。天摩さんの呪いを解くためにも彼女の協力は絶対であるが、(あるじ)(たぶら)かす不埒な男として蛇蝎(だかつ)のごとく嫌われてしまっているのは問題である。

 

 あのメイドとも早急に信頼関係を構築したいところだが、久我さん以上に手ごわく、前途多難といったところだ――

 

 

 

 *・・*・・*・・*・・*・・*

 

 


 ――といったやり取りが昨晩にあり、華乃と共に祝賀会に喜び勇んで参加したわけだが、天摩さんと仲の良い身内だけが集まるはずのささやか(・・・・)な会の参加者は、俺達兄妹と久我さんだけではなかったのだ。

 

 重厚感あるモーニングコートを着た黒執事が数十名、長いコック帽を頭に乗せたコック十名弱、作業着を着たガタイの良い男達が計百名ほどが参加し、後ろにはショベルカーやブルドーザー、生コン車、クレーン車が何台も控えていた。

 

 執事とコックはともかく、あれらの重機で何をする気なんだと黒崎さんに聞いてみれば、天摩さんが契約したあの“猫”の家を作るとのことである。


 【テイマー】が契約したモンスターは、契約者がダンジョンから出てしまうと魔力の繋がりが消えて時間とともに忠誠心が下がってしまう。終いには契約を破棄し、勝手に野生に帰ってしまうのだ。ダンエクではログアウトのときに施設に預ければ忠誠心を保つことができたが、この世界ではそんな施設は無い。

 

 ではどうするかというと、天摩さんは自身がダンジョン外にいる間も忠誠心が下がらないよう“ウガルム・クイーン”の居心地の良い空間を作ってご機嫌を取ろうという作戦なのだろう。そしてこれはアーサーの入れ知恵に違いない。

 

 とはいえ、あの山となって積まれた資材と重機と――アーサーが《ゲート》を使って運搬を手伝ったのだろうか――は“猫”の家を作るにしては大掛かりすぎる。まるで城でも建てるかのような規模じゃないか。

 

 何を狙っているのかとメイドの様子を横目で(うかが)いつつも、目の前に置かれたスープを一口(すす)ると……うぉっ!? 滅茶苦茶美味い! 単なる野菜スープかと思いきや、透き通った液体から舌に染み渡るような暴力的な旨味を感じる。何か秘密があるはずだとスプーンでかき分けてみると、底には粒々の小さな肉が転がっていた……これだ、この肉は何だ。

 

 スプーンで(すく)ってマジマジと観察していると、黒崎さんが奇妙な物を見る目で答える。

 

「それは貴様が持ってきた“黄金鳥(おうごんちょう)”の肉だ。そのまま食べるのではなく、こうやって少量を細切れにして出汁として使うのが一般的な食し方なんだぞ」


 黄金鳥だと? 俺が昨晩仕留めて手土産として持ってきたジャイアント・ウィングの肉か。倒すチャンスが滅多にない上に倒してもわずかしか量が取れないため、黄金よりも貴重な肉と言われているそうだ。なのでこうやって細切れにし、少量を出汁として使うのが一般的な食べ方だと教えてくれる。

 

 何せゲームでは味わうということはできなかったので、食材など効果しか興味が無かったが、これほど美味いとなると話が変わる。俺の《エアリアル》で十匹くらいまとめて倒せないだろうか。


 後ろのテーブルでも「おかわりはまだ?!」とテーブルを叩いて催促している行儀の悪い客がいたものの、あまりにも聞き覚えのある声なのでスルーさせてもらう。だが他の作業服を着たおっちゃん達も同様に大声で催促していたので目立ってはいない。

 

 というか華乃は、天摩さんや久我さんと同じテーブルで楽しく談笑しながら食べているのに、何故に俺だけが離れた場所のテーブルで不機嫌メイドと一緒なのか。それに主催者であるはずのアーサーはどこいった。誰よりも天摩さんのファンを自認していたくせに、遅れるとは何ごとか。

 

 近くにいたコックにスープのおかわりを頼みながら(いぶか)しんでいると、巨大スクリーンに上映されていたドキュメンタリー映画が拍手と共に終わり、次のプログラムへと移る。

 

 今度は何をするのかとぼんやり前を見ていると、横に建つプレハブ小屋から大きな花束を抱えた黒執事が出てきた。一方、兜の口の部分だけを開けて料理を放り込んでいた天摩さんが、もぐもぐしながらも前のステージに向かったので、どうやらあの花束を渡すようである。再び司会役の黒執事がマイクを握る。

 

『では次に。お嬢様の輝かしい功績と未来を記念し、花束の贈呈を――』

『ちょっと待ったぁぁああ!!』


 大きな声が上空から響いてくる。何だ何だと上を向いてみれば、何かが……落下してきているように見える。モンスター襲撃を警戒した黒執事の何人かは大慌てで武器を抜き、黒崎さんに至ってはどこぞから取り出した剣を持って素早く天摩さんに寄り添う。



 しばらくの間、自由落下してきたソイツは、あっという間に大地に衝突。クレーターこそ作らなかったものの、衝撃で砂ぼこりが派手に撒き上がってしまう。目の前の激ウマ料理を無駄にしてなるものかと咄嗟(とっさ)に覆いかぶさり、砂が入らぬよう必死に防いでいると、奥のテーブルでも同じように料理を守っている食いしん坊が目に入った。我が妹である。

 

 血は争えないなと思いながらも舞った砂ぼこりが落ち着くのを待っていると、真っ白い蜘蛛の上に少女の上半身が乗った“アラクネ”が姿を現した。

 

 背には巨大な風呂敷を背負っており、黒執事達が警戒する中を無警戒に引きずるように歩いていく。驚く天摩さんの前までいくと結び目を勢いよく(ほど)いて、自慢げに中を見せる。


『今日は麗しきお姫様の晴れ舞台! それなら、とびっきりゴージャスな手土産を用意しなきゃね!』


 大量の魔石に、様々な色の鉱石、木材、怪しく光る結晶などが山ほど詰め込まれていた。30階を超えた氷雪地帯で取れる稀少な素材の数々である。この世界ではどれも流通していないので実際の価値は分からないが、名のある攻略クランならいくら金を積んでもおかしくはない。

 

 あれら全部を天摩さんにプレゼントすると言うと、器用に8本足を動かして俺の方へ向き直り、したり顔で宣言する。


『そんじゃあ早速、話し合おうじゃないか――ボクの“世界征服計画”を!』

 

 ……世界征服計画だと? 人騒がせな性格は元からだが、ミハイロに殴られまくったせいで頭までおかしくなったか。手に負えない悪友を心配するのは早々に放棄し、腹の下の料理が無事であるかを真っ先に確認する俺であった。


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