どうもこんにちは。いや、こんばんは。
どうもこんにちは。いや、こんばんは。
俺は元々関東に住んでいた23歳のフリーターだ。
今は住み込みのアルバイトでとある北陸のリゾート地に働きにきている。
なぜ、数数多あるリゾート地からこの北陸の地を選んだのかって?
それは、ホテルのナイトフロントの職種がちょうど北陸で募集されていたからだ。
ある日FXで失敗をし、実家で自堕落で昼夜逆転の生活を送っていた俺は、人間関係の煩わしさもなく楽そうだという理由であったが、スマホで募集ページを見つけた俺はすぐに応募した。結果、すぐに見事に住み込みが決まり3ヶ月間働くことが決まった。
ここでの仕事時間は、夜の8時に出勤をし、朝の8時に退勤をするのだがまさに自分が想像していた労働環境であった。労働時間は12時間と長く拘束されているが、実際動いて働いている時間は半分にも満たず休憩時間が山ほどあり、ほとんどの時間を休憩室で過ごし待機しているという感じであった。楽そうだという理由で応募した俺にとっては絶好の労働環境であった。
ただ、”深夜のレストラン”を除いて、だ。
俺は深夜になるとホテル内をまわり、何か異変はないか巡回するのだが、決まってレストランに近づくと何とも奇妙な音が聞こえるのだ。あれはなんと言うのだろう。食器やスプーン、ナイフの入れ物が揺れて聞こえる金属音のような高音域の音と表現したらいいのであろうか。何かそれらのものが生きて動いているような、そんな規則的ではない音。扉は閉まっていて中は見えないのだが、レストラン前の通路を歩いて耳を傾けてみると中から聞こえてくるのがよく分かる。
深夜にそんな音が聞こえたら恐怖で気が気でなくなってしまう、そう思う人もいるかもしれないが、そんな怖さと言うものは感じない。逆に、なんだか楽しそうな雰囲気を感じるのだ。
ある日そのことを同じ時間で入っている相勤者の方に話してみた。
「あー。あのレストランの音のことね。俺くんは扉を開けてみた中を見たことある?」
「いや、自分には流石にできないです。あそこまではっきり聞こえてたら開けようにも開けられないです。」
「いやー、開けなくて正解だと思うよー。5年くらい前かな、その時からもずっとあの音はあったんだけどー。いかんせんわしも気になるもんで開けたんだよ。心霊とかそう言った類のもんは一切信じておらんもんでね。あまり怖さとかはなかったんだけどー。そうしたらね」
ブルルルルツ
タイミングが良いのか悪いのか客室から電話がかかって来たようだ。俺は受話器を取った。
「あのー、明日の朝食のレストランって何時からですか??」
「はい、朝食は8時からとなっております」
「あ、ありがとうございますー。」
「いえ、それでは失礼します」
ガチャッ
今は夜の11時だが、この時間帯の客室対応は朝食レストランの時間帯であったりテレビがつかなくなった、リモコンが動かないだのそういった雑務である。
「...それで、どうだったんですか?」
「うん...。それは、ものすごく奇妙な光景であったよ。スプーン、フォーク、ナイフが宙に浮いていたんだ。
それも、回転してぶつかり合いながら」
「回転してぶつかり合いながら?どういうことですか?」
「知らんわ!若造が!お前が話せ言うたからありのままの事実を話してあるだけや!」
「あっ、、、すみません。(どういうことだ?なんで急にキレたんだろう。何か触れていけなかったのだろうか...)」
「...すまん。....気になるのなら一回いつものその時間帯にそのモニターで見てみたらどうだい?」
そこには、監視カメラで写されているモニターがあった。どうやらここのモニターのスイッチを操作したらレストランが映るらしい。
ここで深夜になったら確認してみるのもいいのだが、まだ、ここにきて15日目だ。あとまだ、2ヶ月ちょっとあるのに余計な気負いはしたくない。残り3日前くらいになったら確認してみるとでもしよう。それにしてもあの怒りようはなんだったんだろう。