第一章[はろーにゅーわーるど]3
[固有スキル]と銘を打っているのだからおそらくこれを所有しているのは俺以外に高々数人程度しかいない珍しいスキルなのだろうが、名前が負与付与ってなんだよ。ふよふよしているなら空に浮く方が一般的だろ、いやそもそもスキルの内容が曖昧過ぎるだろ、しかもなんでこれ以上の説明を求めてもないんだよ、などなどおかしな点の集合体であるが、使いどころなんか無理して探さなくてもいいかと問題の先送りを検討したところで、粗方知りたいことを知れたので後ろにいるであろうクムルのほうに体を向けた。
「どうしましたか~?もう知りたい事はないんですか~?」
「ああ、今特に知りたいことは知れたからもう十分だ。特にやるべきこととかやってほしい事とかは確か“ミルレアの世界での『魔族』という存在が最近きな臭いと感じた人たちが俺たち異世界人という名目のどことも介さない存在を求めた。”“だからその人たちの一助となってほしい”という感じであっているよな?」
「概ねそんな感じであっています~。もう召喚されますか~?」
「…一応聞くけど支給してくれるものとかないよな?例えばあっち側の衣服とか」
「そんなものがほしいのですか~?ならば他の人たちとあまり不公平にならない程度のものをあげます~。[メニュー]と心の中で念じれば取り出したいものを選べますよ~。」
「………あ、ありがとうございます。」
さっき調べた内容のなかでいまクムルが追加してくれたことに関わりのある情報があったが、今は考える必要がないと判断したから、遅れながらも感謝を伝えることが出来た。
「じゃあ餞別も渡しましたし、始めましょうか~」
「俺は何をすればいいんだ?」
「とりあえずここにたっていればいいですよ~。今から召喚の陣をここの空間と繋げますので~。陣が現れたあと動かないでくださいね~。半端に召喚されてしまいますよ~?」
何やら不吉な忠告をした後そいつから暖かいような生ぬるいような熱を帯びた風を体から噴出するような錯覚を覚えた。そのすぐ後、俺の足元に赤色のサークルが現れ、2人の仲間を思いながら光に包まれた。
#Side.クルム
「…とうとう行ってしまいましたか~。」
そう独り言をつぶやく少女の姿をした通告使。120センチあるかどうかの身長しかないであろう背丈で癖っ毛の薄いピンクの髪の毛を彼女の足元まで長く伸ばした見た目で、彼と会った時から能面のように感情の一切を顔に表さなかった人形のような様子の女の子。
「それにしても、彼は一切クルムの顔について言わなかったですね~。他の仲間からも最初はびっくりするから逆にクルムがびっくりしちゃいましたよ~。」
そう独りごちながら彼が使った機械のようなものに手をのばすどこか機械じみた存在。
「アズマ、ケイでしたか~。実は私の顔を見てなかった恥ずかし屋さんなのですかねぇ~?それともどうでもいいと認識してたのですかねぇ~?」
タタタンっとリズミカルに、単調にキーボードを動かし自分の権限の中で赤の他人の彼の素性を見ようとする彼女。
「そういえば、なんで陣が赤色だったんでしょう~?召喚の陣は特別に白金色にするらしいですのに~?赤は[固有スキル]の陣の色ですよね~?」
まぁいいかと疑問を切り捨てた少女はくつろいで権利を以て彼の過去を鑑賞し始めた。
#Side.クルム.out