だれかがくれた、おくりもの
あるとき、ボクのすんでいるまちにピンクいろをしたはなびらがちっていた。
またあるときは、はなびらじゃなくて、キイロやあかいろをしたはっぱがちっていた。
ひによっておちているものはかわっている。
これはだれのおくりのものなんだろう?
あるとき、ボクはソラをみあげてみたんだ。タイヨウはホウセキのようにキラキラとひかっていて、あつい。のどはかわくし、あせもかく。すこしでもひんやりとするところをさがして、ボクはきのかげにたどりついた。かげのすきまからキラキラひかるたいようのひかりは、まるでかぞくみんなでみにいったプラネタリウムようにひかっていた。あんなにもたいようのひかりをあびているのに、きについているはっぱはみどりいろをしていた。きいろやあかいろではなかった。
そしてあるときは、さむかった。おかあさんが「でかけるときはてぶくろやマフラーをつけていくのよ」ってきまっていうんだ。てぶくろがないと、ゆびのさきっぽからあかくなってかゆくなってふるえてしまう。マフラーがないとふくのなかで、きたかぜがふきぬけてからだをブルブルとふるえさせてくるのだ。ゆだんたいてきって、おかあさんはいっていたけど、それってどんなヒトなのかな? もしくは、もの? わからないや。
そんなとき、きになってばくはまどのそとをみた。そこにはあるひにみたみどりいろをしたはっぱをつけていたきがあった。けれども、いまでははっぱはついてなくて、みるめはさむそうなかっこうをしていた。
おかあさんにきいてみた。「あのきは、ぼくたちみたいにさむくないのかな」って、そしたらおかあさんは「おくりもののじゅんびをしているのよ」っていった。
おくりもの? だれの? どうして?
そのときのおかあさんはなにもおしえてくれなかった。ただわらってぼくにこういったんだ。
「さあ、だれのおくりものでしょう?」
おかあさんはいじわるだ。それから、なんどきいてもおしえてくれない。
どうしてってなんかいいったかわからない。おとうさんにきいたらおかあさんといっしょでわらっていた。
もう、わかんないよ。もう。
うしさんになったきぶんだ。
ボクはそのときから、はだかんぼうのきをみている。いつみてもはだかんぼうだ。おくりものなんかでてきやしない。あさおきて、まぶしいたいようにまけないようにまぶたをてでこすってよーくみてかわってないのをたしかめる。おひるになるといっぱいごはんをたべてきをみてみる。かわってはない。おやすみっておかあさんやおとおさんにいって、あたたかいおふとんでねるまえに、さいごにもういちどだけはだかんぼうのきをみる。
でも、やっぱりなにもかわらない。ずっとさむそうなかっこうをしている。
もうつまんない、もういやだ。めんどうくさい。そうおもいながらもボクはなんにちもずっとはだかんぼうのきをみていた。なんでだろう。
そしたら、あるときのことだった。ボクがさいしょにみつけたんだ。
はだかんぼうのきのえだのさきから、ピンク色をしたはなびらがさいたんだ。
「うわぁ」
ボクはなぜかうれしかった。なんていったらいいかわからないけど、うれかったんだ。
ボクはすぐにおかあさんにいいにいった。
「はるがやってきたね」
「はる? どこからきたの?」
「おくりものをもらったんだよ。そのなかに、はいってたんだよ」
「ボクはなにももらってないよ?」
「ふふふ」
おかあさんは、どうしてなのかわらっていた。
「だれからもらったの?」
「さぁ? だれからなんだろうね?」
やっぱり、おかあさんはいじわるだ。
「あたたくなるねぇ。そろそろてぶくろやマフラーは、もういらないね」
おかあさんはそういってボクがいつもみていたきをみていた。そういえば、ボクはいまじゃてぶくろやマフラーをしていないことにきづいた。おそとは、さむくはない。
あるとき、ボクのすんでいるまちにピンクいろをしたはなびらがちっていた。
またあるときは、はなびらじゃなくて、キイロやあかいろをしたはっぱがちっていた。
ひによっておちているものはかわっている。
これはだれのおくりものなんだろう?
ここだけのはなし。じつはボクは、しっている。