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全然順調じゃない!

「ただいま~」


「お帰り、マイシスター」


「お帰り、七香ちゃん」


「ただいま、美嘉さん」


「俺は? お兄ちゃんの俺にただいまは?」


 家に帰ると、いつものように七希と、それから久しぶりに美嘉さんが出迎えてくれた。


 テーブルの上に資料が広がっているので、打ち合わせの途中だったらしい。


「アリアちゃんのほうはなんて言ってた?」


「『一応、ありがとう』と伝言を言付かっております」


「はは、どうやら出しゃばり過ぎちゃったかな。ねえ、黄七先生?」


「ふん、これだから三次元のツンデレは……おいタマブクロ、気が変わった。次のネタはアイドルでいくぞ」


 気に喰わないことはすぐに作品に反映させるのが、黄七先生の特徴である。イライラさせることがあっても、それをSNSなどにぶつけたりはしない。


 その点、作家の鑑だと思う。


「次の新作は百合モノでしょう? 二つ同時進行ならいいですけど」


「オノレは俺を殺す気か」


「大丈夫です、黄七先生のデッドラインは把握済みなんで」


 七希は嫌がっているが、美嘉さんが担当で本当に良かったと思う。変わり者であることは否定しないが、美人だし、面倒見いいし。


「ったく、この殺人編集者め……ところで七香、話は変わるが、今日取った画像のほうはどうする?」


 そう言って、七希は今日の『取材』で撮影した画像の入ったタブレットを私に渡した。


「……うわぁ」


 作品に使う資料のため校内を色々と取材させてほしい、と美嘉さんの出版社を通じて正式に私の高校に依頼した七希は、美嘉さんとともに校内にいたのだ。


 もちろん普通の仕事もこなしてはいたが、一番の目的は、証拠写真の撮影。


 画像には、アリアの制服の中やスカートの中に強引に手を入れようとしているオジサンが、鮮明に移されている。ちょっと顔を拡大すれば、誰なのか容易に判別できるし、スーツの襟についている社章も判別できる。


 ……私でも知っている、有名な会社のものだった。


「アリアちゃんが頑張って相手を上手くノせてくれたから助かったよ。おかげであっさりと降参してくれた。もうしない、ってさ。それぐらいなら、初めからやんなきゃよかったのにね」


「ついでに俺の漫画とイラストも宣伝しておいた。……お仕事の依頼、お待ちしておりますってな」


「……抜け目ないね」


 こういうところを見ると、七希もしっかり大人なのだな、と思う。


「まあ、とりあえず一件落着ってことでよかったんじゃない? 七香ちゃんはアリアちゃんと仲良くなれたし、私は七香ちゃんの同意のもとで個人レッスンが出来た上、黄七先生と早くも新作の打ち合わせが出来ている。win-winだね」


「俺は負けてるぞ。これから半殺しの目にあうぞ」


「七希、これからも仕事頑張ってね」


 机の上にあった新作のキャラデザが、妙に私とアリアにそっくりなのは、とりあえずスルーしておいてあげよう。私なりの今日のことに対するお礼だ。


「さて、と。それじゃあ私はそろそろ夕飯の準備を――」


 その時、ポケットのスマホから着信音が。このメロディーはユズ専用に設定したものだ。


「もしもし、ユズ?」


『うん。カーちゃん、上手くやってるかなって思って。首尾はどう?』


「うん、それはもうばっちり順調に――って、」


 順調に。


 そう順調に友だちを――。あれ?


 いや、待てよ。


 ユズの声に、我を取り戻した私は叫んだ。


「全然順調じゃないっ!!」


 思い出した。


 もう入学して一週間以上経つのに、全然、本来の目的である『男の子と普通の恋愛をする』計画が、ちっとも前に進んでいなかった。


 静原さんとアリア、同性の友だちのほうは順調だが、そろそろ、私自身のことにも着手していかなければ。


『そんなことだろうと思ったよ。……どうする? 僕のほうでも、紹介ぐらいならできると思うけど』


「ぜひお願いします……って言いたいのは山々だけど、いい」


 せっかくだから、もう少し自分でなんとかしてみたい。


 大丈夫。まだ、出会いのきっかけが完全に死んだわけではないから。

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