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04 LP [ Wise Man ]「俺の名は柿本。下の名前は忘れた」

 本編でさんざんネタにされた柿本放浪回の話です……が、なぜかシリアス調の上に無駄に長くなってしまったという。主に本編第18話を踏まえています。

 コン、コン


「んあっ……なんだ、ガキがひとりか。ふわあああ……。おい、ここは国境だぞ? お前だけでどうやってここ(検問所)に来た? っていうか、俺の言ってること、わかるか?」


 すっ


「なんだ、パスポートと……お前、日本人か。それに……渡航同意書ぉ? おいおい、こんな紛争地域に、親が同意しただあ?」

「……金なら、ある」

「へえ、俺らの言葉をずいぶん流暢に話すんだな。……いいぜ、その金置いて通れ。ただし……」


 ぽいっ


「パスポートに、入国スタンプは押さねえ。言いたいこと、わかるな?」

「ああ……助かる」

「ったく、何を好き好んでこんな所に来るかね。行くとこがない俺たちとは、違うだろうが」


 すたすたすた


「……俺たちも、行くところがないんだよ。未来という、行き先がな」


 俺の名は、柿本(かきもと)。下の名前は忘れた。もちろん、冗談だ。ただ、他の言語だと俺の名前は発音しにくいらしいから、日本語圏以外では『カキモト』もしくは『モト』だけで通している。これ自体は、別に珍しいことではない。よくある話だ。


 俺は今、政情不安な諸外国を放浪している。旅行ではない、放浪である。なにしろ、親の金を無断で使ってここまで来た上、必要ないくつかの書類をでっち上げてまでいるのだから、まともな旅であるはずがない。なぜ、そんなことを? さっきつぶやいただろう、『未来がない』からだ。



 高1を何度も繰り返すという現象に、俺たちクラスが巻き込まれてから数周回。4月1日になれば、家族を含めた周囲の人間は、俺を当然のように新入生とみなして入学式の日を示唆する。一字一句、一挙手(いっきょしゅ)一投足(いっとうそく)、寸分の狂いもなく。そんな状況に、俺たちは気が狂いそうになっていた。


 ループを経験しているクラスの生徒全員が協力体制をとることができたなら、あるいは、大きな混乱もなく『毎年の一年間』を過ごせたのかもしれない。だが、俺たちは別に、人生に疲れ切ったような年寄りではない。質素な生活などクソくらえである。大きな混乱、大いに結構。やりたいことをやればいいのだ。どうせまた、リセットするのだから。


 もちろん、次の4月1日にまたリセットするとは限らない。無茶なことをして、そのままタイムリープせずループを抜け出したら、この一年にやったことが、そのまま未来につながる。担任教師(白鳥先生)は、そのことを繰り返し訴えていた。だが、この周回に至り、そんな『枷』も意味を成さなくなるほど、俺たちのほとんどは未来に絶望していた。そして、そんなクラスの状況から逃げ出したいという思いも、一方ではあった。


 そうして俺は、ひとりで旅に出ることにした。目的もあてもない、諸外国放浪の旅に。自暴自棄と逃避願望が見事に組み合わさったのだ。ネットや創作物などで読み漁った、『旅人』の成れの果て。治安は良くないが、様々な抜け道(・・・)もある、政情不安な地域。退廃的な雰囲気に惹かれた俺は、もともと旅行好きだったことも相まって、この周回に入った途端、そのための行動に邁進していた。


 まず、金がなかった。俺の向かう地域は物価が極端に低いから、相応の日本円があれば、最低限の生活をしながら数か月ほど旅を続けることができるのはわかっていた。しかし、そんな地域に行くまでの旅費がない。だから俺は、親のPCとクレジットカードを無断で使い、航空券をネットで購入した。しかし迂闊なことに、飛行機搭乗(単独の旅行や宿泊)に年齢制限があることに後で気がついた。ネットで解決策を漁り、親権者同意書をでっち上げるという、賭けに出た。購入履歴やカード請求額が発覚するまでの、時間の勝負でもあった。


 そしてそれは、成功した。正確には、その地域に到着するまでの行程のみ、であるが。



「まさか、あの航空券が往路のみのものだったとは……」


 格安航空券の知識が完全に不足していた。間抜けもいいところである。


「加えて、スマホも使えないとは……」


 SIMロックの知識が完全に不足していた。本当に、間抜けもいいところだ。


「手持ちの金だけで、なんとか3月31日まで生き延びるしかないか……」


 もちろん、今回もリセットがかかるという保証はどこにもない。逆に、3月31日を迎える前に死んでしまった場合にどうなるかもわからない。後者は、これまでの周回において、クラスの誰も経験していなかったからだ。


 しかし、そんな未熟な知識や甘い見通しがどうでもよくなるほど、今の俺は自暴自棄で、逃避的で、矛盾だらけだった。おそらく、クラスの他の多くの生徒達と同じく。


「もう何度したかわからない後悔はこれくらいにして、今日の寝床を探すか。食い物は……今夜は、バッグに入ってる果物でいいか」


 今朝、出発地の近くで買ったものだから、まだ傷んではいないだろう。一週間ほど前、一日入れっぱなしだったリンゴを食べて腹を下し、安宿でまる二日横たわっていた。あれは、辛かった。



 国境検問所から歩いて着いた集落には、宿というものがなかった。そして、村や町と呼べるほど整ってもいなかった。ボロボロの空き家……いや、倉庫だろうか? そんな建物を見つけ、その中の床に横たわり、一息つく。不法侵入であるが、それを咎める近隣住民の様子は全く見られなかった。


「日本だと、行き場のない者は山奥に逃げ込むのが定番って聞いたな。この辺は、草木さえもほとんど生えていないし、山どころか丘の類すら少ない平野……いや、大地だな」


 地平線が当たり前の場所に来ただけでも、日本とは明らかに違う環境であることを実感した。この地域に来てから既に数週間経っていたが、これまでは、まだ人や建物がそれなりに存在する集落を巡っていたから、ここまで寂れた場所は初めてだった。


「紛争の影響で、多くの人々が脱出したんだろうな……。今朝聞いた話だと、戦闘自体は既に遠のいているようなんだが」


 であれば、ここにもいずれ人々が戻り、集落として機能するようになるのだろう。何日後か、何週間後か、何か月後か。いずれにしても、ここに長居するつもりはない。寝床はともかく、食料が簡単に手に入るとも思えない。それに、俺は放浪の身なのだから。



 コンコン


「ああ、開いているよ」


 かちゃっ


「お父さん、コーヒー持って来たけど、飲む?」

「ああ、ちょうど欲しかったところだよ。ありがとう、菜摘」

「良かった。学校から帰る途中で、いい豆を見つけたんだ」


 こぽこぽ


「ん、確かにこれは、いい香りだ……」

「……どうしたの? 何か、悩み事?」

「ああ、まあ、いつものように、デイトレーディングに関することだよ。ただ、ちょっと、株の値動きが奇妙でね……」

「奇妙? 私にも、わかる話?」

「そうだな……。ある会社の株が、急に売りに出されていてね。これまで以上の成長の見込みがある、文字通りの優良株だったんだが」

「優良?」


 カタカタ


「この地域のインフラ整備に進出している、日本企業だ。儲けはほとんどないけど、紛争で荒れた地域の復興に、大きな貢献をすることになるんだ」

「貢献……国際的な信用と、ブランド力の強化?」

「その通りだよ。ああ、アザレアグループのビジネスモデルに似ているね」

「ってことは、長い目で見た収益と、莫大な資本が前提だよね。そんな会社の株が急落するなんて……」

「それも、昨日・今日の話なんだ。こんな状況は、これまで一度も……うん? 待てよ?」


 カタカタカタ


 かちっ


「この『事件』と、この値動きの関係が、今回のケースにそっくりだな……いや、一連の流れのほんの初期としか一致しないし、偶然ということも……」

「で、でも、この『事件』と同じなら、大変なことじゃない!?」

「ああ。しかし仮にそうだとしても、調べようがないな。こういう場合、たいがい行き先(・・・)は、はっきりさせないものだからな」

「そうかもしれないけど……。ねえ、お母さんに相談してみない? アザレアグループは、難民対策のこともあって、この地域の旅行保険(・・・・)も用意しているんでしょ?」

「……それに賭けてみようか。『事件』が起こるかどうかも含めてね」



 翌朝、目が覚めた俺は、閑散としている集落を歩き回る。人が住んでいるのかどうかさえもよくわからなかったが、わずかに感じる人の気配を頼りに動き続けた。当面の食料の確保のためだったが、もしやはり誰もいないのであれば、急いで次の集落に向かう必要がある。野垂れ死にはやはり避けたい。


「これ……弾痕、か」


 いくつもの壁にわたって数多く残された、弾の跡。この集落が戦場となったことがよくわかる軌跡だった。


 がさごそ


「まだ、バッテリーは残ってるな……」


 パシャッ


 俺は、通信機能が使えないスマートフォンで、おびただしい弾痕が残る壁を撮影した。誰に見せるわけでも、俺自身が見返すわけでもないのかもしれないが、とりあえず、撮影しておきたい気分になったのだ。もし、このまま復興が進めば、これらの壁は撤去され、『なかったこと』になるのかもしれない。俺たちの、過去の周回のように。


「そんなものが、珍しいかい?」

「!? あ、いや……その……」


 いつの間にか、お年寄りの女性……お婆さんが、俺のそばに近づいていた。壁の跡に見入っていて、気づかなかったようだ。


「ふん、戦争の跡を『観光』かね。平和な国の連中はいつもそうだね」

「っ……違う!」

「何がだい? そうやって写真に納める行為の、どこが観光じゃないと?」

「……撮影したのは、俺自身の境遇と、重なったからだ」

「……わからないね。さっぱり」

「すまん。ネイティブほど滑らかには喋れない」

「そういう意味じゃなかったんだけどね……。まあ、いいさ。ウチに来るかい?」

「え?」



 そうして、少し歩いたところの家に連れていかれた俺は、お婆さんから簡単な食事を頂いたり、更に話をしたりした。


「復興はするのかもしれないけどね、さて、いつのことになるやら……」

「そうなのか?」

「電気すら復旧してないんだよ。あんたんとこの国だって、数年前、震災でそうなったって聞いたよ?」

「まだ小さかった頃でよく覚えていないが、電気は2〜3日で使えるようになったはず」

「はー、そんなもんなのかね」

「その代わりというわけではないが、水道は2週間使えなかった」

「は!? それで、どうやって生活できたんだい?」

「給水車だな。ここは……ああ、井戸があるのか」


 人災と天災、国も文化もまるで違う、比較のしようがないことをあれやこれやとやりとりする。その話した内容から、何かが得られたのかといえば、全く、これっぽっちもなかったといえるだろう。


 けれども、何か役に立つことを期待して会話しているわけではない、損得抜きで話を繰り広げている、そんな状況は、悪いこととは思えなかった。むしろ、俺の……俺たちの(・・・・)行き詰まった未来に対する、何かの解答を得たような気にさえなった。気のせいかもしれないが。


「そうだね、少し離れたところにある畑の草を、取ってくれるかい? 今夜のメシと寝床くらいは提供するよ」

「助かる。……ありがとう」


 そして、だだっ広い畑の草取りをし、ほとんどスープしかなかった夕食を平らげた俺は、その夜、用意された寝床にばったりと倒れ込んだ。



 だだだだだっ


「おい、菜摘! お前のカンが的中したぞ! おかしなガキがひとり、あの地域に単身突っ込んでったみたいだ!」

「やっぱり……。それで、お母さん、現地の動きは?」

「いや、それがな。両勢力とも和平に向けて準備中で、前のような様子は見られないんだ」

「けれども、株の動きは……そうか!」


 カタカタカタッ


「うん、売りに出している範囲は、そう広くないね。あまりに多額だったから気づかなかったけど」

「つまり?」

「この国と関わりのあるのは……こっちの勢力の、この部隊だ。辺境に配備されているんだが、独断専行で集落を制圧したり、武器を入手したりしている」

「その武器商人つながりで、株が売られているのか!」

「推測の範疇を越えないけどね」

「私は、菜摘のカンを信じるぞ! これから、両勢力と話をつけてくる!」


 だっ


「ちょ、ちょっと待って、お母さん! そんなことまでできるの!?」

「菜摘、それをお前が言うか? やつら、自国から難民を大量に出して、国際世論でさんざん叩かれてたんだぞ?」

「……つまり?」

「アザレアグループが事実上の難民救済をして、両勢力の面目は一応保たれたってことだ」

「というか、アザレアグループが両勢力に接触したのが、和平の第一歩だったんだけどね。難民となった人々の状況をあえて強調したりして」

「え? ……え?」

「菜摘、それとも、お前があの国に直接行くか? アザレアグループとお前の関係、紛争地帯の一般市民には伝説級の知名度があるからな!」

「ええええ!?」



 俺が、お婆さんの家に厄介になってから、1週間ほど経った頃。


「俺、そろそろ次の集落に行くわ」

「……そうかい。まあ、結構働いてくれたね。向こう1か月は草取りせずに済んだよ」

「ははは……」


 いやもう、マジで腰がどうにかなるかと思ったぜ。あんなのが続くくらいなら、次の集落まで歩き続けた方がマシなくらいだ。……それ以上に、このお婆さんとの交流が、俺のささくれ立っていた気分を和らげてくれたのだが。あと、日持ちのする食料もだいぶ分けてくれた。後者がメインじゃないぞ?


「じゃあ、また、いつか」

「いつかなんて、あるのかい?」

「生きてるうちは、その可能性はゼロではないだろう? 俺たちは『山』じゃないんだから」

「なんだい、そりゃ?」

「ある国の説話さ。『山と山が出会うことはまずないが、人と人は出会える』」

「おかしいね、あんたんとこの国にあるのは『イチゴイチエ』とかいう(ことわざ)じゃなかったのかい?」

「知ってるのか?」

「知り合いに聞いたんだよ。なんでも、この地域の復興を担当する企業が日系らしくてね。そこの社員からの又聞きだけど」

「なるほど。……いや、それも間違いではないな」


 一方がもう一方を否定するわけではない。俺と、このお婆さんとの、境遇のように。



 お婆さんのいた集落が見えなくなるくらい、歩き始めた頃。


 ガガガガガガッ


 キッ


 ザザザザッ


「よし、こいつを捕らえろ!」


 ガシッ


「っ!? は、離せ!」

「お前だな、日本から来たガキというのは」

「何をするんだ! 俺が何をしたって言うんだ!?」


 突然、軍用車らしき車がやってきて止まったと思ったら、兵士が数名降り、いきなり俺を捕まえた。


「そうだな。強いて言うなら、あの集落からなかなか出てこなかった事が、お前の罪だな」

「何を……!?」

「よし、基地に連れて行くぞ!」

「やめろ、離せ……んぐっ!?」


 抵抗もむなしく、後ろから覆面を被せられ、車に無理矢理押し込められた。


 バタンッ


 ブロロロロロロッ……



「よし、覆面を取れ」


 バッ


「ぷはっ……一体、俺を……えっ、あんたは!?」

「よう。また会ったな」


 そこにいたのは、この国に入る時に会った、入国審査官だった。


「なんで、あんたが……」

「俺の副業が、この辺に配備された部隊の隊員でな」

「部隊? あんた、兵士だったのか!?」

「不思議じゃないだろ? どっちも、公務員だ」


 かちゃかちゃ


「なぜ、手錠をかける!?」

「それはな、これからお前には『見せしめ』のために死んでもらうためさ」

「……見せしめ? 死ぬ!?」

「敵対勢力に加担した日本を、糾弾するためにな」


 糾弾? 日本を?


「なぜだ! 紛争は収まってきているはずだ! それに、日本企業がこの地域の復興を……」

「それだよ。それこそが、俺たちにとっては困るんだ」

「困る?」

「紛争は、続かなきゃならない。まだまだ制圧が必要な集落はたくさんあるんだよ。それに、日本企業が進出すると、俺たちの商売相手が不利益を(こうむ)る」

「そんな……」


 手錠で椅子に固定された俺の近くに、ビデオカメラが設置されている。それを見た時、俺は、数年前に報道された『事件』を思い出した。別の国ではあるが、危険地帯と知りながらも渡航して現地テロ組織に捕まり、紛争介入から手を引くことを日本政府に要求するため利用された、とある日本人。結末は、最悪なものだった。その人物は帰らぬ人となり、紛争は今も継続している。


「さて、せいぜい悲惨な顔で泣き叫んでくれよ? でないと、意味がないからな」

「……」

「なんだ、もう観念したのか? まあ、いい。死ぬ瞬間さえ撮影できれば、あとは編集でどうとでもなる。しばらく生きているかのように見せることもな」


 観念したわけではない。俺の、一連の行動が、ここまで事態を大きくしたことに、想いを馳せていたのだ。


 なんだ、結構『変動』するじゃないか。


 不謹慎だが、非常に不謹慎ではあるが、そんな想いが頭と心を満たしていた。やれば、できる。出会えれば、何かが変わる。そんな期待は、陳腐で甘い考えだと思っていた。


 でも、そんなのは、今年を一度しか(・・・・)経験できない、普通の人間の範疇のことでしかなかった。俺は、俺たちは、そんな普通の人間じゃない。そうだろう?


 カチャッ


 さあ、撃てよ。きっと次は、もっとうまくやる。この一年の、あらゆる時期、あらゆる場所の出来事を、知識として、もっともっと蓄えてやる。そうして、いつか、この世界全体を、思いのままに動かせるようになってやる。


 もちろん、このまま死んで、ジ・エンド、の可能性もある。でも、それはそれで、後悔はない。そこまで思えるほどに、俺は悟りきって(・・・・・)いた。それはまるで、(いにしえ)から学者や魔術師、魔法使いと同義ともされていたという―――


 バリバリバリバリバリバリ


「なんだ!? どうした!」

「わかりません! ですがこれは、ヘリコプターの……!」


 ブロロロロロロッ


 ガシャンッ!


『お前たちは完全に包囲されている! 全員武装解除し、大人しく投降しろ!』



 12回ループ中の、ある日。


「……というわけで、俺はアザレアグループの凄さに心粋したわけよ」

「いやあんた、悟ったんじゃなかったの?」

「悟ったさ。世の中には、何度ループしようとも敵わない、とんでもない天才がいるってな!」

「そして、『賢者モード』となったと」

「まあな。勇者や騎士よりも、よほど現実的な自己表現だろ?」

「賢者モード……ヤることをヤって、冷静に……なった、状態」

「あら、その定義でも間違いないわねえ」

「間違いだらけだよ! いや、経緯はそっくりだが」

「じゃあ、こうしようか。僕らの間では、ループの果てに未来を冷静に見据えるようになった状態を『賢者モード』と呼ぶことにしよう」

「隠語扱いだけど、まあ、クラスメート達の他に説明する機会はないだろうしね」

「「「「意義なーし」」」」

「じゃあ、今日のHRはこれで終了」


 ざわざわ


「……安藤くんから聞いたあの言葉、こうやって決まったのかあ。それにしても、あの周回は大変だったよ。自分自身にコーヒー豆を売るためだけに、あの国に行くことになったんだから……」

そして、しれっとタイトル回収。

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