今は もう 届かない背中
あの時に戻れたら そう思った
今ならすぐに伝えられる あなたのことが好きと
けれどもう 時は過ぎた
病室の窓から見下ろす中庭が 酷く眩しかった
周りを見下していた 世の中を軽んじていた
全てを後回しにしていた
この気持ちさえも 先送りにして
けれどもう時は過ぎ 君の元へ帰れない
足はもう動かない
私は死を悟る この命を失うことが怖かった
全てを失うことが怖く
この気持ちを失うことが怖い
涙で枕は濡れていた それほど全てが大切だった
もう 何も失えなかった
自分の足で立つことが こんなに苦しかったんだ
汗でタオルが濡れていた
それほどあなたが好きだった いつまでも
でも私の足は動かない これからも
車椅子で中庭を往く あなたが引いてくれていた
遊んでいる子供達も 呆けているお年寄りも
この中庭には二人だけ 風だけが吹いていた
寒くはなかった 想うたびに熱くなる
そんな自分が好きだった
この気持ちをあなたに伝えた──
走れなかった 胸も苦しかった
地面に膝を打つ 車椅子にも乗れなかった
背中が遠い 背中だけが遠い あなたが遠くなる
あなたはいなくなる
もうあの時には戻れない
この気持ちだけを失くしたくなかった
多分詩です。
奥手の女の子が事故をきっかけに、好きな男の子に告白するストーリーです。