始まり
男は家の中にいた。当たり前の日常が過ぎる中、男はぼんやりと自室で本を読んでいる。
本の男「僕は、君のことが好きなんだ!」
本の女「私も同じ気持ちよ!好きなの!!」
実際はこんなに単純な物語ではないのだが、大体はこんな話だと男は思っていた。男女が結ばれて、ハッピーエンドを迎える。男は別にその結末が嫌いでは無かったが、面白いとも思わなかった。
男は自分の人生をふりかえってみた。男にも好きな人はいる。ふりかえれば、いつも頭に思い浮かぶのは、あの人の笑顔と自分は幸せだという想いだ。
そんなことを考えていた時、電話が鳴った。多分、セールスか間違い電話だろう。普段、電話がかかってくることが無いため男はそう考えた。・・・が、考え事をしていたせいか男は電話を取っていた。
「もしもし?私はメリー。忙しいから、もうあなたの後ろにいるの。」
男はふりかえってみた。そこには確かに少女がいた。自分をメリーだと名乗った少女は何も言わず男の後ろに立っていた。
男は何もできなかった。メリーさんには何をしても無駄だと分かっていたからだ。普通の人間である自分が勝てるわけがない。メリーさんに出会った人間は必ず不幸になる。最悪命を落とすことも・・・。
少女は何も話さない。何かを狙っているのか?それともすでに何かしているのか?男は不安な気持ちでいっぱいだった。
「忘れた・・・。」
少女がつぶやいた。
「私・・・、何をするのか忘れちゃった・・・。」




