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5話 第一村人との出会い

 教会は村外れの丘の上に建てられている。 建物を囲うように外壁と同じ材質の塀があり高さは3m位あるだろう。 門扉は鉄製で塀と同じ高さであった。

 僕達は食後の休憩を取った後、村へと向かう。 玄関前に集合した後メルさんが前を歩き、その少し後ろを僕が着いていく。


「教会って結構堅固な造りをしてますね」


 石造りの外壁をくぐり抜ける際に僕が問いかける。


「教会は何処の支部でも同じ造りで建てられていますね。 この村は安全ですが、場所によっては盗賊に街や村が襲われたり、隣国との国境付近では、いつ戦争になるか分かりませんから。 その様な有事の際に近くの人達を匿える様になっています」


 なる程、この世界は日本の様に安全では無いらしい。

 僕はメルさんの話しを聞きながら何度も頷きそう思った。


 今は村へと続く道を歩いている。 道の両側には綺麗に高さの揃った芝が遠くに見える村まで生え茂っていた。 歩く道は硬く締め固められており人が歩き続けると出来るはずの不陸なども見受けられなかった。 眼下に映る風景が美しく感動してしまう。


 「凄い…… 本当に綺麗だ……」


 目前の風景を見て自然と感想が出てくる。


「え? 突然何を言うのですか! 照れるじゃないですか」


 僕の言葉を聞いたメルさんが、こちらに振り向き頬に手を当て身体を揺らしながらテレていた。


「あっ! 紛らわしい事を言ってすみません。 余りに美しい風景だったので……」


 僕はすかさず訂正を加える。

 メルさんは僕の言葉を聞くと先程までの嬉し恥ずかしそうな表情が消え、またしても能面のような表情となった。


「夢男さんは、上げてから落とす。碌でもない人だったのですね」


 ブツブツと文句を言ってくる。 (何でこうなる?)

 チクチクとメルさんから口撃を受けている間に村へとたどり着いた。

 村に入ると先ずはレンガ造の家屋が数件程目に入る。 レンガをセメントで積み上げた感じで重量感があった。

 その後、村の奥へ進んで行くと第一村人を発見する。 少し体型がぽっちゃりとした女性の方で、年齢は20代後半から30代前半といった所だろう、彼女はメルさんに気付くと手を上げて近づきながら声を掛けてきた。


「メルじゃないか! 久しぶりだねぇ。今日は仕入れの日だったかい?」


「マチルダさん、こんにちは。 今日は知人の方に村を案内する為に来ました」


 二人は仲が良いのであろう。 リラックスした感じで笑顔を絶やすこと無く会話している。

 そして突然マチルダさんが僕に近づいてくる。 近くで彼女を見ると肌に艶もあり、褐色の肌が良く似合って元気そうな女性だ。 だが僕が一番驚いたのは、頭にはねこの様な耳とお尻付近からは1m程度の尻尾が生えている事であった。  そんな彼女に好奇心を擽られていたが、まずは頭を下げ挨拶を行った。


 「はじめまして、海原夢男と言います」


 マチルダさんは両手を腰に当てた姿勢で、僕を足から頭の先まで舐める様に見ていた。


「私はマチルダだよ。 貴方がメルの知人ねぇ~。 教会関係者かい? こんな村を見学してどうする訳だい?」


「僕は世間知らずで、メルさんが色々と教えてくれています」


「ふ~ん。 まぁいいけど。 もしメルみたいな良い子を泣かせる様な事をしたら私が許さないよ」


 そして右手を僕に差し出してきた。 握手をしたいのだろう。 

 僕はマチルダさんの手を握り返す。 マチルダさんは少しづつ手に力を込めて行くが、ロストで肉体強化された僕には殆ど効果は無く、マチルダの売り言葉を聞きながら、今朝のエロ本の内容を思い出していた。 


(この人は女性だし大丈夫だろう)

 

 マチルダさんはメルさんの事を本当に大事に思っていると感じた。 僕は再度、心に決めた想いを思い出す。 


(僕がメルさんを暴漢から僕が守らなくては……)


「解っています。 メルさんは僕が守ります」


「えっ! 夢男さん! それはどう言う意味で……」

 

「ほぉ~ 結構な啖呵をきるじゃないか。 しかも私の握手を眉一つ動かさずに返すとは、これなら安心できるねぇ」


 メルさんとマチルダさんの声が重なった。 マチルダさんは僕の両肩に手をのせる。


「じゃあ、メルの事は頼んだよ」


 そう言いながら、元居た場所へと帰って行った。

 

「マチルダさんって良い人ですね」


 僕がそう言いながらメルさんの方を向くと彼女の顔はゆで蛸の様に赤くなっていた。

 その後、村長へ挨拶を行いに向かっている最中は何を聞いてもメルさんの返事は全て「ひゃぁい!」となっていた。


 そんな僕達を遠くにある民家の角から見つめる数名の男性に僕は気付く。 遠くて顔の表情や言葉は理解出来なかったが、その視線が攻撃的と感じて僕は彼等に警戒を払った。

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