3話 先代ロストの功績と僕の力
あの後、メルさんはこの世界について色々と教えてくれた。 通貨の事や暦の事など項目も多岐に渡る。
「それでは次の郵便でロスト安全保障事務局へ手紙を送りますので、それまで此処でゆっくりとしていて下さい。 調査官がこの村に到着するまで、それなりに時間が掛かると思いますから、近くの村を案内しますね」
メルさんはそう言って笑顔を向けてくれた。
スピアでは5日に1度、手紙を届けてくれる役人が来てくれる。 この郵便制度は以前居たロストが提案し、王宮が管理・運営を行っている様だ。 もう何十年も前からあると教えて貰った。
僕はロストの功績の大きさを感じて、この世界の生活水準がどの位か気になりメルさんに教えてもらう事にした。
「では、最初にこの建物内を案内して貰えませんか? 色々見てみたいので」
変なお願いで嫌がられるかと思っていたがメルさんは快く案内してくれた。
「ここが台所です。 食材はいつも水に漬けて鮮度を保っています」
まず最初に驚いたのは、なんとこの世界には水道がある事だ。 台所には壁からパイプが突き出ており、パイプの途中にレバーが一つ付いている。 それを90度回す事によって、パイプの先から水がジャバジャバと流れ出てきている。 水圧自体は高く無いが、水質は飲料水として十分使用できるレベルであった。
(水道が在るという事は…… もしかして)
「すいません、トイレに案内して貰えませんか?」
トイレが通じるかどうかは解らなかったが、この世界でもトイレと言うらしい。 意味が通じて良かったが、僕が気にしていたのはそんな事では無い。
案内されたトイレは予想していた通り洋式タイプの水洗式であった。 この時僕はそっと胸に手をやり、心の中で先代のロストに感謝を述べる。
その後色々と部屋や教会施設を見学させて貰った。 因みにどの部屋を廻って見ても電気は見付からなかった。
「水道は在るのに、電気は無いですね。 夜は蝋燭ですか?」
「電気とは何か分かりませんけど、王都の周りでは魔法石と呼ばれる発光する鉱石を使用しています。 ですがこの村の様な僻地では余り商行の方も来られず。 商品が入荷しても高価なのでこの教会では今でも蝋燭を使用しています」
「もしかして、この世界には魔法があるのですか?」
「ええ、魔法は普通にありますよ。 魔法に興味がありますか? 私で良ければ、簡単に説明しましょうか?」
「はい、是非お願いします」
それから魔法について聞いてみると、スピアでは半数位の人が魔法が使える様だ。 だが全ての人が全ての魔法を使える訳では無く魔力を持っている人が自分の適正がある魔法のみを使える様で同じ魔法でも威力は人によって違う様だ。
メルさんは癒しの魔法を使えるが、今は大きな怪我は治せないとの事。 また癒しの魔法は病気には効果が無く薬などで治療している。 魔法適正が高い人種は冒険者や教会、王宮など引く手数多で活躍出来るらしい。
「なるほど、では僕も魔法が使える様になるのかな?」
「いえ、ロストである夢男さんには魔法を使う事が難しいと思います。 それは魔力が無いからだと聞いています。 今までもロストで魔法を使ったと聞いた事がありませんし…… 多分本当の事でしょう。 ですがロストの方は魔法以上に有用なスキルと肉体があるので、そう悲観する事も無いかと思いますよ」
メルさんの回答にガッカリしている様子の僕を不憫に思ってくれたのか? メルさんの表情も曇っていた。 色々と助けて貰っているメルさんを困らせるのも忍びないので、僕は自分の能力を伸ばす事を考える。
(でも僕のスキルってエロ本を召還する事? それで一体何が出来るのか……)
前途多難ではあるが、今から調査官が来るまでの間に、少しでも自分の力を見極める必要がある。 僕はそんな気がしていた。
メルさんの説明を聞き終え夕食までの間、僕は部屋に戻ってきていた。 ベットに腰を下ろし今後の事を思いふける。
まずは自分と同じ様にスピアに飛ばされて来た人に話を聞かない事には、今の状況が良いのか? 悪いのか? それさえ解らない。 その為にも今自分にできる事を把握する必要があった。
(僕の能力は一体……)
そう考えながら僕は目線を前に向けた。 ベットの前には僕が能力で出したエロホンが山の様に出し積み上がっている。 そして何となく一番上に置かれている本を僕は手に取る。
表紙は勿論メルさんで青いビキニを着込み、海辺の砂浜で四つん這いの姿勢で下から見上げているアングルだ。
(実に色っぽい)
今にして思えば、本屋でもスピアに着てからも表紙以外はまだ見ていない事に気付く。 周りには誰も居ない今がチャンスに思えた。 生唾を飲み込み、一息付いてから僕は1ページ目をめくった。
そこにはタオルを体に巻きつけた風呂上り状態のメルさんが写っていた。 後姿であったが髪から滴り落ちる水がうなじを流れており、豊満な胸の上10cm辺りでタオルを巻いている状態だ。 タオルの丈が短くて、丁度いい感じにセクシーな超ミニのワンピースの様であった。
「うむ、実にけしからん!」
そう言いながら、鼻息荒く何度も頷くが目線が写真から離れる事は一度も無かった。
だが一つ気になった事がある。 それはメルさんの表情であった。 歯磨き中で少しビックリしている様に思えた。 だがそれが激写風な感じとなっていて良い仕上がりと言える。
そして見開きの右側である2ページ目は、タオル姿で床に尻餅ついている写真であった。 上から見下ろす感じで谷間が強調され、凄まじい破壊力をもっていた。 両膝は外側に折れ女の子座りである。 歯ブラシを咥えたまま、右手で後頭部を摩ってるポーズが何とも可愛らしい。 さらに極悪なのは尻餅を付いた際にタオルがはだけたのか? 胸の頂上のみで何とかタオルが引っかかっている状態であるという事であった。
僕のボルテージはどんどん上がって行く。 次のページを早く見たくて3ページ目をめくる。
「ん……?」
3・4ページ目は白紙であった。 次のページである5ページ目も白紙だ。 何ページめくってもそれ以降メルさんを拝む事は叶わなかった。
「うそだろ、何故、白紙?」
そう言いながら他の本を手にとって見てみたが、今度の本も表紙はメルさんであったが、次のページから全て白紙であった。 それから数冊見てみたがどれも同じであり、最初に手にした本のみ1・2ページが載っている状態である事が解った。
そうしてる内に日は傾き辺りが薄暗くなって行く。 僕は肩の力を抜き辺りを見渡した。 今探しているのは蝋燭とマッチでだが、結局見つける事が出来ず僕はメルさんに置き場所を教えて貰う為立ち上がった。
「メルさん何処ですか~?」
大きな声を出しながらメルさんを探して行くが台所へ行っても、他の部屋へ行ってもメルさんを見つける事が出来なかった。
「何処かへ出掛けているのか? なら仕方ない…… 部屋に戻って待つほか無いか……」
僕が元居た部屋へ身体を返した時、後ろで小さな物音が聞こえてきた。
「ん? 何だ今の音?」
音が聞こえた方向へ僕は歩いていく、廊下を突き進み突き当たりの部屋の中でもう一度音が聞こえてきた。
そう言えばこの部屋はまだ見てなかった。 メルさんに色々と見学させて貰ったが、この部屋がどういう部屋なのか解らずに、僕はドアノブを回し声を掛けながら中へと入って行った。
「ギギィィー」 小気味より音を立てながらドアが開いていく。
「メルさん、いますか~?」
「ん~んん~ん!」
「え?」
メルさんはそこに居た。 だがその部屋は脱衣場であり、タオル姿一枚のメルさんが立っていた。
「わーーーっ」
僕はメルさんの姿を見て頭に血が回り、呆然となっていた。
メルさんは風呂上りに歯を磨いて、僕が入ってきた事に驚いていた。 歯ブラシを咥えたまま、両手を身体の前に突き出しイヤ・イヤって感じでブルブルと振っている。 身体は後ろに下がりながら動揺しているのだろう、フラフラしていた。 そして後退しながら風呂場の入口に当たるドア縁で後頭部をぶつけて尻餅を付いた。 その姿を見た瞬間に僕はデジャブに陥っていく。
この後景を僕は見た事がある…… そう考え、答えが出るまで然程時間は掛からなかった。
そう僕は同じ後景をエロ本で見ていた。
「あの本はもしかして、未来が見える本なのか?」
そう呟きながらアタフタするメルさんを他所に僕は深く考え込んでいた。
「もぅ~ 見ないでぇ~~え」
泣き叫ぶメルさんの声が響き渡っていた。