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経済の話

できるだけ分かり易く量的緩和政策について説明をしてみました

日銀の「量的緩和政策」の追加に、少しばかり驚いてしまったので、思わず書いてしまいました。

 2014年10月31日。

 日本銀行が、量的緩和政策の追加緩和の決定を発表しました。以前から多少の噂はあったものの、これは少しばかり驚くべき出来事で、正直に言うのなら僕は驚きました。

 当時、僕はネットで軽く検索してみたのですが、「ハイパーインフレ(急激な物価上昇)になる」だとか、「スタグフレーション(経済が停滞したまま起こる物価上昇)が悪化する」だとか、様々に主張されていて、某巨大掲示板では、軽くお祭り騒ぎになっていました。株価も敏感に反応し、日経平均株価は700円以上も値上がりしました。

 当然、これはテレビのニュース番組でも大きく報道され、それに関して様々な意見が述べられもしました。

 しかし、ですね。

 そもそも、この「量的緩和政策」とは、一体、何なのでしょう?

 そこが分からないと、どうして追加緩和がここまで大騒ぎになっているのか分からないと思いますし、実際、そういう人も多いのじゃないかと僕は思ったりなんかした訳です。

 そこで、今回は、追加緩和の意味とその危険性を理解してもらう為に、できるだけ分かり易くこの「量的緩和政策」について説明してみたいと思います。

 

 簡単に言うのなら、「量的緩和政策」とは、“お金を市場にばら撒く事”です。つまりは通貨供給ですね。お金がたくさんあれば、お金を使うだろう。なら、それで経済は回復するはずだ。というのが、その発想の根本になります。

 お金…… 通貨なんてものは、本来、ただの紙切れ… いえ、今は徐々に紙切れですらない電子情報になりつつありますが、だから人間の判断でいくらでも増やす事が可能なのですね。

 ここで、「こんな方法、本当に上手くいくの?」と疑問に思った人は、鋭い勘を持っているのじゃないかと思います。

 そうですね。

 もし、そんな方法で経済が簡単に回復するというのなら、何処の国でも行われているはずです。そして、実際にそれほど行われてはいません。行われている場合でも、制限を設けている場合が普通です。

 どうしてなのでしょう?

 それを理解する為に、まず普通はどんな条件で、通貨が供給できるのかを考え、それを説明したいと思います。

 

 通貨というのは循環しているものです。もちろん、それは商品、つまり生産物について循環しているのです。例えば、車だとか、パソコンだとか、お米だとか、それらについて“通貨の循環”があります。

 当たり前ですが、あなたがその生産物を買う為にお金を支払えば、そのお金がお店や運搬する運転手や製造している労働者達の手に渡り、そしてそれら人々が、その手に入れたお金で何かを買って、それがあなたの元に再び戻ってきます。

 もちろん現実社会では、それが途方もない経緯、規模で行われているのですが、それでも根本は変わりません。

 通貨の循環場所が、その生産物に対して発生している。

 ならば、直感的にこういう結論になるはずですね。

 通貨は、「通貨の循環場所である生産物が増える場合にこそ増やせる」です。

 

 はい。

 これは逆を言えば、もしも、生産物が増えていなければ、通貨は増やせない…… 供給できないという事になります。

 しかし、もし、仮に、それでも強引に通貨を増やしてしまったなら、何が起こるでしょうか?

 実は物価上昇が起こるのです。

 これはとても単純な理屈ですが、商品が増えていないのに、通貨を二倍に増やすのだから、当然、その商品を循環する通貨量は二倍になってしまうのですね。因みに、普通、経済学ではこの状態を通貨価値が下落したと表現しています。

 過剰にこれをやり過ぎれば、当然、社会はとんでもない事態に陥ります。

 有名な事例は、第一次世界大戦後のドイツでしょうか。あまりに物価が上がってしまった為に、コーヒーを飲むのにトランク一杯分の紙幣が必要で、いちいち数えていられないので重さで紙幣が取引されていたとか、今なら冗談のような実話があります。最近の事例として有名なのは、アフリカのジンバブエ・ドルでしょうか。あまりに通貨価値が下落してしまったが為に、今は無価値になっています。

 通貨の増刷によって通貨価値が下落すれば、当然、貯金の価値も大幅に減ってしまいます。貯金に頼って生活している人は、だから生活が困窮状態に陥ります。

 (一応、断っておくと、この状態は財政破綻状態と言えます。偶に、ジンバブエは財政破綻していないと主張していたりする人がいますが、勘違いなので注意してください)

 そして、先にも述べましたが、「量的緩和政策」では、これと似たような事をやってしまっているのです。つまり、生産物がそれほど増えていないのに通貨を増やしている。だからこそ、「ハイパーインフレ(急激な物価上昇)になる」などと主張している人がいるのですね。

 つまり、とっても危険なのです。

 多くの人が、不安に感じている意味も分かるのじゃないでしょうか。

 (書き切れませんが、その他、様々な副作用の恐れもあります)

 

 でも、ですね。

 経済の専門家などがブレーンとして存在している政治家が、こんな経済の初歩的な知識を持っていないはずがないのです(いえ、政治家本人は持っていないかもしれませんが)。日本銀行もまた同じですね。彼らは経済の専門家です。その危険性も理解しているはずです。では、どうして、こんな手段を執ってしまっているのでしょうか?

 その理由は簡単です。確かに、生産物は増えていませんが、まだ、今(2014年11月現在)の日本には生産物を増やせる能力があるからです。言い換えるのなら、供給能力がある。

 だから、例えば誰かが太陽電池を買いたいと思えば買う事ができるし、同じ様に車だってパソコンだって果物だって野菜だって牛丼だって買えます。要するに「生産物が作れないから、売る事ができない」なんて事態には、まだ陥っていないのです。

 つまり、皆を“買う気”にさえさせる事ができたなら、生産物は増えるのです。で、もっと言ってしまうと、もし、そうなれば、それで経済は回復をするのです。

 そして、誰かにお金を使わせる為には、お金を渡すのが手っ取り早い。

 誤解を覚悟で、非常に簡単に説明してしまうと、政府及びに日本銀行が狙っている効果はこのようなものです。

 つまり、生産物が増えたから、通貨を供給するのではなく、通貨を供給することで、生産物を増やそうとしている。

 ただ、これは確実性のない方法でもあるのです。お金を貰っても、何も欲しくなかったら、何も買いませんよね?

 だから、ギャンブル的要素が大きい政策なんです。そして、今のところ、これは失敗してしまっていると捉えるべきだと思います。

 

 はい。

 ここで少し視点を変えます。

 ここまでを読んで、こんな疑問を覚えた人もいるかもしれません。

 「日銀がお金を渡している? 嘘だ。俺には日銀はお金をくれないぞ? くれたら使ってやるが、くれないから使えない。一体、何処の誰がお金を貰っているんだ?」

 ま、そう思うのも当然でしょう。実際には、消費税が増えて、むしろ国民からお金は奪われてしまっているのですから。

 日銀がお金を渡しているのは、金融機関であり、金融市場です。そこに供給されたお金が、銀行などの金融機関を介して企業に渡り、その企業が投資を行い、その投資を行った先の産業が活性化すれば、それでようやく経済成長成功となる訳ですが(投資の時点で経済成長は起こりますが、その投資が失敗する可能性もあるので、まだ成功とは言えない)、そのプロセスが起こっていないので、一般の国民の手にお金が回っていないのですね。

 そして、企業の投資を促すような試みを、国は充分に執っていないのです。説明は割愛しますが、執っていないどころか、規制によって企業を縛って成長の芽を摘んですらいる。これまでの政権もずっとそうでしたが、安倍政権でもやはり同様です。口では、促すような事を言っていますが、充分ではない。

 更に、国は公共事業を行う事で、民間から資源を奪ってもいます。どれだけ通貨を供給しようが、資源がなければ投資は行う事はできません。ならば、当然、上記のようなプロセスは起こりません。

 だから、量的緩和政策の失敗は、自業自得だとも言えるのです。

 

 さて。

 以上の説明は、「量的緩和政策」の需要を促す側面ですが、「量的緩和政策」には、そればかりがある訳ではありません。もう一つ、とても重要な効果があります。もっとも、その効果も“諸刃の剣”なのですが。

 その効果とは“円安”です。

 冒頭で、追加の「量的緩和政策」で、株価が上昇したと説明しましたが、その要因には円安もあるはずです(もっとも、通貨が金融機関に投入される事で、その通貨が株に回り易くなると予想できるから、という要因が最大かもしれませんが)。具体的な説明は割愛しますが、円安になると輸出企業が有利になるのですね。すると、輸出企業関連の株が買われ易くなる事になります。

 2014年10月31日に日本銀行が、追加緩和を決定したのは、むしろこちらの効果を期待したからなのかもしれません。実際、更に円安にもなりましたし、だとすれば、期待通りと言えるのかもしれません。

 ですが、ならばこの事実を素直に喜んで受け止められるかというと、そんな事はありません。株価は上昇しましたが、はっきり言って実体経済からはかけ離れたマネーゲームとしか思えませんし、円安にはデメリットもあります。輸入品が高くなってしまうのですね。このままでは、更にコストプッシュの物価上昇が進む恐れがあります(今現在は、原油価格が下がっているので、影響はそれほどでもないそうですが)。

 

 アベノミクス関連で、「量的緩和政策」をよく耳にするようになったので、最近になって初めて実施されたと思っている人もいるかもしれませんが、実は過去にも日本は「量的緩和政策」を執っています。

 不景気を乗り越える為に「ゼロ金利政策」を行いましたが、それでもまだ効果が充分ではなかったので、「量的緩和政策」に踏み切り、そして、一応はその政策は、当時の日本の経済の下支えをした可能性はあるのです。

 ただし、今の日本の現状を観れば明らかですが、経済が復活するまでには至りませんでした。

 そして、国はアベノミクスでこの「量的緩和政策」を復活させたのです。しかし、過去の「量的緩和政策」とアベノミクスで行われている「量的緩和政策」では、その規模が違っています。

 アベノミクスの方が遥かに大規模なのですね。しかも、今までも規模が大きかったのに、今回、追加緩和を決定してしまった。それにより、なんと年間80兆円の資金を市場に投入する事になりました。これは国家予算の一般会計規模の額です。

 量的緩和政策では、市場から日銀が債券を買い入れる事で、資金を供給しているのですが、この中には国の借金の為に発行する長期国債も含まれています。

 長期国債は、国の借金の主役だと思ってくれれば良いのですが、これを日銀が買い入れるとは、つまりは「借金を踏み倒している」ようなものなのです。変な表現ですが、徐々に財政破綻させているのですね。

 もっとも、財政破綻だろうがなんだろうが、結果的にそれで日本経済が良くなり、国民の生活が楽になるというのなら、それは評価すべき政策です。

 そして、規模が小さければ、そうなる可能性もあるのです。効果的に働き、経済が良くなるかもしれない。

 ですが、その規模を大きくしていけば、「ハイパーインフレ(急激な物価上昇)になる」という不安の声が現実になりかねません。

 今までの説明で充分に分かったと思いますが、量的緩和政策が、各国で慎重に行われているのは、この懸念を考慮に入れているからです。だから、財政規律を遵守する態度を崩してはいけない。

 しかし、今、日本ではこの財政規律が崩れ始めています。

 正直に告白するのなら、アベノミクスにおける「量的緩和政策」の規模拡大は、前回でそれほど効果がなかったので、「なら、もっと規模を大きくしてやれ」というくらいの大して分析もしていない安易な発想のように僕には感じられます。

 そして、2014年10月31日に行われた追加緩和。

 (注記しておくと、日銀は経済政策が成功しているかのように発表しているので、この対応は矛盾しているようにも思えます)

 これも同じ様な安易な発想で、効果が薄かった、或いは失敗してしまったから、「もっと、規模を増やそう」というくらいのものという印象を受けます。

 もし、仮にその通りだとするのなら、既に泥沼状態に入っている可能性があります。何も策がないから、滅茶苦茶をやり始めただけかもしれません。これで更に失敗をしたら、この先は何をするのでしょう? やはり、追加緩和をするようなら、いよいよ日本国民は危機を覚悟しなくてはならないかもしれません。

 という事は、危機対策をするべきだという話に当然、なりますね。

 どれだけの危機が迫っているかは、各個人の判断に任せますが、この先、物価上昇懸念が強い事だけは確実です。貯金で資産を持っている人は、それを護る為に、それを家や土地や太陽電池などの資産に変えておく事を僕は勧めておきます(ローンを利用するのなら、僕は固定金利の方が良いと思っていますが、タイミングによっては、それでは損してしまうかもしれないので、慎重に考えて判断してください)。貯金生活者の方は、貯金以外の収入源を早く見つけるべきでしょう。

 少し説明を補足します。太陽電池は維持費が安価という特性があるので、物価が安い内に買っておけば、物価上昇後に利回りが大変良くなります。

 何故か、太陽電池の利益計算では、物価変動が考慮されていない場合がとても多いので、特別に書いておきました。

 

 最後に、いつも通りに「通貨の循環場所を増やす」という発想で、ほぼ確実に経済成長を起こせる方法を説明します。

 今回は「量的緩和政策」の説明をしたので、その延長で語りましょうか。

 量的緩和政策は、通貨を供給する事で、生産物を増やそうとする試みだと説明しました。これは間接的に実体経済に影響を与える方法ですね。だからこそ、成功するかどうかは“賭け”になってしまうのです。

 しかしなら、もっと直接的な方法を執れば、賭けではなく、経済を成長させる事がほぼ確実になるとは思いませんか?

 具体的には、例えば、太陽電池を買う為に公共料金(もちろん、税金でも良い)を徴収し、それで太陽電池を買えば、そこに通貨の循環が発生し、経済成長を起こせます。

 原理としては、公務員制度や電気や水道などで執られている方法と同じになります。

 そして、量的緩和政策で、通貨を供給しているように、ここでも太陽電池について通貨を供給する事が可能です。

 つまり、初めの一回分に関しては、この料金を支払う必要はありません。国からの通貨供給でそれを行えます。

 

 もちろん、これは新たな試みなので、何かしら問題が発生する可能性はあります。ですが、それが致命的な問題でない限り、乗り越える事は可能でしょうし、これに成功した場合の人間社会のメリットは非常に大きい。

 少なくとも僕は、チャレンジしてみるべきだと思います。まずは小規模で、試験的にやってみるという方法もありますし。

 

 既に徐々に日本は労働力不足の影響を受け始めています。そして、先に述べた方法は、労働力が本当になくなってしまった状況下では使えません。そして、その時までに、太陽電池のように資源を節約できる設備や体制を整えなければ、日本社会は悲惨な状況に陥ります。

 だから時間がない。

 カジノを日本で開くなどと議論されていますが、そんな役に立たないどころか害になる物を造っている状況では今はないでしょう。

 賢明な判断を望みます。

 

 以上、2014年11月現在。

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― 新着の感想 ―
[一言] はい。ありがとうございました。本気を出して、がんばってくださいましたね。 私からは以上です。 これまでの誠意あるご返答、感謝します
2014/12/05 01:28 退会済み
管理
[一言] 結局、住民たちが発電で得た利益を通貨として保持し続けちゃった場合は、今と同じように不景気になると。
2014/12/04 23:03 退会済み
管理
[一言] 貯蓄ではなく死蔵ですね。あと、物価が上がると、電気料金も上がっちゃうんじゃないですか?
2014/12/04 10:34 退会済み
管理
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