お茶会にて
「過労で寝込むとは、軟弱にもほどがあるな」
久しぶりに催されたお茶会の席で、アルテュールは開口一番言い放つ。
「なんでお前が知っている?」
「アランに聞いた。まったく。体調管理も出来んとはな」
「……またあいつか。今度、絶対にシメる」
「閉める?」
「いや、何でもない。まあ、過労で倒れたことは言い訳のしようもないが……」
心が荒んで仕事を詰め込み、挙句、睡眠も食事もほとんどとっていなかった。
「大体、何でもかんでも背負いすぎなんじゃないのか? たまには、放り出すくらいの柔軟さも見せてみろ」
「……」
「悩みがあるなら、俺だって聞いてやらなくもない」
「は?」
「か、勘違いするな! リディの世話になっている相手だから言うんだぞ」
なぜかけんか腰に言い放ち、煽るようにお茶を飲み干す。
「何なのだ?」
「つまりね、困った時は頼れってこと。アルもカイルのことを心配してるんだよ」
戸惑うカイルにリルディがコッソリと耳打ちをする。
あまりにも予想外の言葉に驚く。
「アルはすごく面倒見がいいのよ。仲よくなった相手のことは、すごく大切にするの」
リルディはそう補足してニコリとほほ笑む。
「……」
「な、なんだ?」
無言で自分を見ているカイルをアルテュールは怪訝な顔で見返す。
「そうだな。何かあれば話そう」
「あ、あぁ。まぁ、いいだろう」
「……リルディのことは別問題だがな」
「望むところだ」
二人は顔を見合わせ、挑む様に視線をぶつけながら小さく笑む。
そこには、政治的絡みや利益を交えない、カイルにとっては真新し関係が築かれた瞬間だった。




