光射す場所
「ここは……」
そこは暗闇が広がっていた。
暗く閉ざされたその部屋には静寂が広がっている。
ぼんやりとする頭で、とんでもない失態を犯したことを思い出す。
会いに来たリルディに無理矢理に迫り、本心を洗いざらいぶちまけてしまった。
そのうえ、どうやら途中で倒れてしまったらしい。
(最悪だ)
体の節々が痛み、頭が異様に重く朦朧とする。
「このまま、死ぬのかもな……」
「熱が出ただけで死んだりしないわ」
「!?」
まさか答えが返ってくるとは思わず、驚き目を見開く。
姿を現したリルディはカイルが横たわる隣りへと身を寄せる。
「カイルってば異常に熱いし、おかしなことをたくさん口走るし変だと思ったのよね」
「どうして此処に……」
「カイルが目を覚ますまで居させてくださいって、ユーゴさんに頼み込んだの。ていうか、無理矢理籠城しているんだけどね。はぁ。後が怖いわ。カイルも加勢してよね」
「いや、意味が……分からない。あんなことをして、どうしてまだ此処にいるんだ?」
「あれはだって、熱があったからで……」
「違う。あれは全部俺の本心だ」
その言葉に、リルディは真剣な眼差しでカイルを見つめる
「それじゃあ、私がカイルの側にいるべきじゃないっていうのも本心? ずっとそう思っていたの?」
「……お前は光の中にいる方が合っている。こんな、陰気な場所に閉じ込められているよりもずっと」
体が弱っている所為なのか、思っていることがそのまま口を付く。
「……」
その言葉に、リルディは深くため息を付き立ち上がり、カイルから離れる。
そのまま部屋を出て行くのかと思ったが、リルディは入口とは反対側へと歩みを進め、窓にかけられていた分厚カーテンを一気に開け放つ。
「!?」
いつの間にか雨は止んでおり、太陽の光が一気に室内へと降り注ぎ、あまりの眩しさに目が眩む。
「こうすれば、ここにも光が差し込む。陰気な場所なんかじゃないわ」
「……そういうことじゃない。俺とお前は根本的に違うんだ。俺に光の中は相応しくない」
「ああ、本当に仕方のない人だわ。カイルってば、時々すごく鈍感なのね」
「なっ」
よりにもよって、鈍感の最たる人物であるリルディにそんなことを言われるとは。
軽く衝撃を受けるカイル。
「カイルは私がたくさんの人に愛されている。なんて言うけど、イセン国ではカイルの方がよっぽど愛されているんだからね」
茫然とするカイルの顔を覗き込み、心底呆れたように言い放つ。
「は? 何を訳が分からぬことを……」
反論しかけたその時、どこからともなくヒソヒソ声が聞こえてくる。




