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募る想い

 建国祭が終わって数日。

 部屋のテラスから、リルディはぼんやりと外を見ている。

 ここ最近は雨が多い。

 雨が降ることさえ滅多にない大陸で、こうも雨が続くのは異常事態だ。


「今日もお茶会は出来ないね」


 一向にやむ気配のない雨を恨めし気に見ながら呟く。


「ううん。出来てもきっとカイルは……」

「姫様」


 泣き出しそうなリルディの姿に、ラウラも落ち込み長い黒耳を垂れる。


「あれから一回も会いに来ないなんて、どういうつもりなのかしら!」


 苛立たしげに言いながら、ネリーはリルディの顔を覗き込む。


「カイル様が姿を見せない理由、本当に心当たりがないの?」


 ネリーの問いにコクリと頷く。


「あの日から会ってないもの」


 建国祭での騒ぎの後、カイルは式典に参加するために、すぐにユーゴに連れていかれてしまった。

 それからまったく訪れがなく、数日に一度催されていたお茶会も雨でことごとく中止。

 あれから顔を合わさない日が続いている。


「騒ぎばかり起こす私に愛想を尽かしたのかな……」

「いやいや、今更でしょ」


 今までリルディの周りで起こってきた騒ぎは、この前の比ではない。

 今更愛想を尽かすくらいならば、城に引き留めたりなどしないだろう。


「きっとお忙しいのだと思うのです」

「うん。忙しいんだよね」


 それでも、今までカイルはどんなに忙しくても、会いに来てくれていた。

 こんな風にまったく姿を見せないことなど、城に来てから一度もなかった。

 だからこそ、不安でたまらなくなる。

 どうしようもなく寂しい。

 鬱々と降り続く雨につられてか、リルディの気持ちもふさぎ込む一方だ。


「こうなったら、ユーゴに直訴してやるわ。いくら忙しくたって、こんなのひどすぎるもの」

「あー、それは意味ねーと思うぜ? ここに来ないのは王様の意志だし」


 憤慨するネリーに、いつの間に入り込んだのか、現れたアランが事もなげに言い放つ。


「カイルの意志って……。どういうこと?」

「さぁな。理由は知らねーけど、無理矢理仕事を詰め込んで、周りが何を言っても、執務室から出てこねーの。ったく、あんなんじゃ、そのうちぶっ倒れちまうな」

「そんな! どうして?」


 カイルが多忙なのはいつものことだ。

 けれど、自分でそれを詰め込むなどカイルらしくない。


(私に会わないための口実?)


 その結論に行き着き、胸の奥がズキリと痛む。

 けれど、どうしてこんなにもカイルに嫌われてしまったのか、その理由すら分からない。


「王様に会いたいか?」

「会いたい。すごく会いたいよ」


 たとえ、嫌われてしまったのだとしても会いたいと思ってしまう。

 どんな言葉でもいいから、声を聞きたい。


「なら、会いに行けばいいじゃん」

「それが出来るなら、とっくにそうしているよ」


 あくまで他国からの客人扱いである自分。

 臣下たちの手前、王の元へ気軽に会いに行くことなど出来ない。

 もしそう願い出たとしても、多忙な王務がある中、リルディの願いなど、いつ聞き届けられるか分からない。


「でもそうだよね。ここでクヨクヨしていてもしかたないし。お願いするだけ、お願いしてみて……」

「んな、まどろっこしい。正直、今回ばかりは俺達でもお手上げだ。姫さんしか、あのへそ曲がりを何とか出来ねーんだわ。つーことで、久々にアレやっちゃえよ」

「へ?」

「あぁ。なるほど。アレね」

「アレなのです」


 アランに同調して大きく頷くネリーとラウラに、リルディはただ目を瞬かせるのだった。


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