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貴方だけに恋捧ぐ  作者: 朝比奈 黎兎
第一章 
5/40

*4*

 修学旅行ってテンションあがるとかいうやつがいるけど、僕はそんなことない。これがフランスとかじゃなきゃテンションも上がっただろうけど。いや、テンションあがるとまでは言わないけどね。観光するくらいは思ったと思うよ。で、僕は今ホテルに居る。それも初日から。今日はちなみに二日目。具合悪いと仮病を使って、ホテルのベットの中に潜んでいる。もちろん良から隠れるためだ。だけど、暇だ。のっそりとベットから抜け出し、カーテンの隙間から外を見る。天気はものすごくいい。なんて考えてたらいきなり部屋のドアが開いた。


「やはり、仮病使いましたね?」

「りょ……良?」

「学生はしっかり学園の行事にも参加しなさい。これ、副会長命令です。さぁ、行きますよ」

「は?良、生徒会の仕事……」

「今日は二日目個人行動許可日です!」

「あ……そう……って、どこ行くの?」

「観光のほかに何か?」


 それはそうかもしれないけど。ていうか、鍵オートロックでしまってたよね。どうやって入って……。あ、フロントで合いかぎもらったんだ。その手に持ってるのがそうだよね。うー、これなら班と一緒に出かければよかった。まだ委員長のほうがまし……。だけど、手握って引っ張っててくれるのは嬉しい。久しぶりに良に触れた。そう考えたら顔が熱くなった。何考えてんの。違うから。そんなこと考えてる場合じゃない。


「これって……デート?」

「観光だと言ってるでしょう」

「そ……ですね……」


 デートじゃないんだ。少なくとも良はそう思ってるらしい。でも、なら僕はデートだと思って楽しめばいい。そう思うと、ようやくこの修学旅行も悪いものではないと思えてきた。

 

「……」

「……」


 か、会話が続かない。もともと僕はそれほど口数が多いわけじゃない。それに良と共通の会話が思いつかない。良と話すと余計なことまで口走りそうでそれがすごく怖い。寮の秘密は絶対に口に出してはいけない禁句タブーだし。もし口に出そうものならきっと恐ろしいことになるに違いないんだ。


「フランス嫌いなんですか?」

「へ?え……嫌いっていうか、もう飽きた」

「飽きた?何回も来たことあるんですか」

「僕、13歳くらいまでフランスに住んでたの。だから」

「帰国子女だったんですか」

「……良はどこか行きたいところとかないの?」

「俺は別に、こうしてゆっくりできるほうがいいです。日本にいるとこうも行かないですから」

「……」


 なら、ホテルで寝てればいいじゃん。そういう問題じゃないの?ゆっくりしたいなら寝るのが一番だって、前に会長が言ってたし。それに……。


「僕の事嫌いなら、僕のとこ来ないでよ」

「そういうわけにはいきません」

「副会長の義務?」

「そうですね」


 そこは、君のためですとかさ。嘘でも言ってほしい。あぁ、青葉は今日恋人の先輩といちゃいちゃするのかな。いいな。僕もギュってされたいな。ただ手をつないでくれるだけでもいいのに。頭をなでてくれるだけでもいいのに。さびしいなんて、かなしいよね。大好きな人がこんなにもそばにいるのに。手をつないでたのもホテルでの数分だけ。この十センチが嫌に遠い。ほんとは、今だって飛びつきたいし。手をつないで観光して、夜は一緒に寝てほしい。ただそれだけでもいい。なのに、それはかなわない。そんなのわかってるけど。


「っ……」


 そんなことを考えている僕の視界に、突如入り込んできた一軒の店のショーウィンドウ。思わず目がくぎつけになる。ガラスに両手をくっつけて、おでこすらくっつきそうなほど、その店にくぎつけになった。


「いきなり消えないでくださいよ。どこに行ったかと思ったら……高2にもなってぬいぐるみですか?」

「欲しぃ!あの、ひよこの!」

「かなり大きいですけど」

「でもほしい。ね、良買って?」

「だめです」

「えー。買ってくれたら、僕うるさく好きとか言わないから……たぶん」

「たぶんって聞こえましたけど……。はぁ……お金上げますから自分で買ってくるんですよ?俺が買うとか洒落にもなりません」


 そういって、財布から紙幣を取り出し、僕に渡した。ほんとは良が買って、「はい」って渡されたかったんだけどな。ま、いいか。

 僕の腕の中には、さっき買ったひよこのぬいぐるみがある。両手で抱えないと持てないほどのそれはまん丸でふわふわの僕の好みを具現化したようなものだった。思わず笑みがこぼれても仕方ないと思う。そんな僕を、良はさっきからチラチラ見てくる。


「なに?」

「いえ……それどうするんですか?」

「寮の部屋のベットにおいて寝る」

「その歳でぬいぐるみと……」

「いいじゃん!何かにギュっしてないと寝れないんだもん」

「そうですか」


 それきり、良は黙ってしまった。少しさびしくて、僕はひよこを強く抱きしめた。


良はきっと赤面してひよこ買うだろうと思ってやめました。

むしろ買えって感じですが。

澪が抱っこして寝てるぬいぐるみコレクションは全部で五体あります。

くま・ウサギ×2・猫・ひよこです。

ウサギは白黒で持ってるといいなって思う。


良が澪のとこきたのが決して副会長権限じゃないと信じたい。

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