*過去 と 現在*
最終回になります。
ある日を境に、レイは公園に来なくなった。
始めは風邪かとおもってた。でも半年が経ち、一年が経っても、レイは来なかった。
またか。
そう思った。やはりレイも俺を拒んだんだ。だからもう、ここには来ないんだ。
あの時の言葉は嘘だったのか。
裏切られた。
怒りが溢れ出してきているのに、涙が止まらなかった。わずかな時でも大事だった。1番だった。もうそれは訪れない。
でも、レイを恨むことはなかった。
むしろ恨んだのは自分の家。
そして俺は、中学入学とともに荒れた。
*** *** ***
進学したのは、あまり評判がよくない中学だった。地元の中学何か行きたくなくて隣の地区の中学へわざわざ入学した。そこは不良なんか当たり前のようにいる。しかも各学年ごと集団となり、それぞれトップを据えている。
夏休み前になるころ、俺は一年のトップになっていた。
喧嘩が強いのは家があれだから仕方が無い。おまけに誰ともつるみたくなかったから、一匹狼状態。
それが何故かほかの一年不良に気に入られた。
でも、そんな一年たちと俺がつるむわけなかったから、あいつらは勝手に俺をトップとしてあがめているだけだった。それが噂となり、街を歩けばおびえられるか、喧嘩を売られることが多くなった。こっちとしては迷惑以外の何物でもない。
もうひとつ、違う地区の中学に行った理由がある。
ほかならぬレイの事だ。小学校が違うことはわかっていた。だがあの公園に徒歩で来ていたということは、それほど離れた小学校ではなかったはず。すると自然に絞り込める。
レイは年下だ。だから早くても俺が中学2年以上にならないとレイは入学してこない。俺は地道に待った。
だがレイは姿を現さなかった。
ほかの中学に入ったのかもしれないが、ある日のニュースが頭から離れないでいた。
そして、中学3年のある日俺はレイはもうこの世にいないのだと結論した。
何であの日、遊ぶ約束をしてしまったんだろう。
何でおれは、助けてあげられなかったんだろう。
何で、こんなに悲しいんだろう。
初めて誰かを失った悲しみを味わった。
出かけ先で両親が揃って目の前で車に轢き殺されたとき以上に悲しいと言ったら、怒られるだろうか。あのときも それなりに悲しかった。優しい両親だったからなおさらだ。
でもレイはそれ以上だった。
黒歴史ともいえる中学時代を終え、祖父が進めた黎暁学園に入学して幾年月……
俺は再び巡り合った。いや、再会した。
ただ一人愛した人に……
*** *** ***
いくらなんでも、俺もこればかりはどうしようもないこともあるわけだ。というか、これは俺は口出しできない。できるものならやってみろ。
「ぐすっ……うっ……ひっぐ……」
布団を身にまとい、そして俺が持つキャリーケースにしがみつく、18になった男。もとい澪。泣きはらした赤い目でこっちを睨みつけながら、治まらなくなった嗚咽をあげている。
「俺に抗議しても仕方ないだろう」
「でもっ……やだっ!!」
「たかが一年だろう。お前が高校卒業するまでには帰ってくるといってただろう?」
「やだぁ!!」
「そろそろ空港に行かないといけない時間だし。あまり待たせるわけにもいかないだろう?それに、澪も今日から学校が……」
「なんで?良はそれでもいいの?そんなに僕と離れたいの?」
「仕方ないだろ」
それに、もとはといえば澪の両親が原因じゃないか。
「お父さん達なんか大嫌いだぁ!!」
近所迷惑なんか考えてるんだか。もうどうにもならないんだし、いい加減泣き止んで欲しいものだ。
「……別にもう二度と会えなくなるわけじゃないだろ」
「……飛行機墜ちちゃうかも」
「嫌なことを言うな。大体墜落事故なんか交通事故より確率低いぞ」
「……僕また轢かれるかも」
「なんなら、学園に閉じ込めるか」
「良ならなんかできそう……」
そういうと、もぞもぞと動いてキャリーケースから離れた。そして包まっていた布団にすっぽり隠れてしまった。
正直、澪が運動神経あることを忘れていた。
「カエル並だな」
「これで最後にするから……」
当たり前だ。すでに予定から2分過ぎてる。
あと、歳を考えろ。抱っこできる限界があるぞ。まぁ軽いんだけども。これが町を歩けばスカウトされまくる噂の美人高校生だとか、信じたくない。
断るのを俺に押し付けるな。飛び火がくるんだ。
「でっかいぬいぐるみ買ってきてね」
「この前買っただろ」
「一年間待つんだからお土産!!」
買うこっちのみになれ。
「浮気したら許さないから」
「俺より澪のほうがしそうだけどな」
「良……いってらっしゃい……」
「あぁ、行ってくる」
行ってくるが、その前に……
いい加減、服を着ろ!!
やっと終わりました!!
どこまでぐだぐだ続くか……
とりあえず完結です。
3作品とも終わっちゃいました。
でも書いてて楽しかったです。
皆さんはいかがでしたか?
少しでも楽しんで頂けてたら嬉しいです。
澪と良介は絶対遠距離でも連絡はばんばんとるんじゃないですかね。
お互い心配しあっちゃって。
最後になりますがこれまでお読みくださり、誠にありがとうございました。
また別の作品もよろしくお願いいたします。




