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さてこちらも修学旅行ですが……
澪君やる気がないというか、それじゃあ話進まないようなキャラ。
気持ちの良い布団に包まって寝ていたのに、揺さぶられて起こされる。でも起きるの嫌だったし、めんどくさいから無視。でも相手もしつこく、最終的に掛け布団を引っぱがした。そこでようやくそこにいたのがクラスの委員長だと知る。
「委員長?」
「とっくに授業始まってるぞ?」
「委員長サボり」
「今は修学旅行の計画立ててるんだよ。班決まってないの、あと檜山だけだぞ」
「僕行く気無いからカウントしなくていいよ」
「はぁ!?」
今年の行き先はフランス。僕もう行き飽きたから。言ったことなかったかもしれないけど、僕はフランスで生まれたらしい。で、10歳くらいまでフランスで育ったの。だから、もう飽きたの。見るとこないし。行っても暇。ホテルから一歩も出ないよりは日本にいた方がいいってもんでしょ?
とにかく行く気がないことを示さんとばかりに、僕は布団を奪還して包まった。
「勝手に班組むからな。ちなみに俺とおんなじだから」
「んーいいよ」
「全く」
ドアが開閉した音がして委員長がクラスに戻ったんだとわかり、僕はひょっこり布団から顔を出した。一瞬固まったのち、僕は自分に似合わないと思える絶叫を上げた。
「此処は保健室です。そんなに騒がないでください」
「な……んで良がいる?」
待って待って。今は授業中のはずで、まじめな良がさぼってるなんてありえない。しかも何でここにいるのかが理解できない。というか、いつの間に?何しに来たの?
「あなたがなにを疑問に思ってるかは大体わかります。俺は一応副会長です。今は修学旅行の準備に忙しく会長と俺は授業免除が許可されてるわけです」
「ずるい……」
「ずるくありません。私情でさぼってるわけじゃなのですから。いつ来たか。それはたった今です。あなたのクラスの委員長とすれ違いでね。あまり彼を困らせるんじゃないですよ?」
「いーもん。行きたくないからそういっただけ。良には関係ない」
「あります。いいですか、修学旅行には絶対に行ってもらいますから」
「なんで?」
「俺がいない間にあなたになにがあっても不思議じゃありません。この学園内にいるとしても、絶対の安全があるとは言い切れません」
「良のせいじゃん」
「あなたが関わってきたのでしょう?」
「……ほんとは僕のことなんかどうだっていいくせに」
ほら、その眼鏡の奥の瞳は、今日も冷ややかに日常を映してる。いつも平常心なその瞳。いつもにこやかなその裏で、いつも誰かのことを思いやってるような優しい口調で、一番この日常を憎んでる。僕も憎まれてるだろうね。新たな問題が現れちゃったんだからさ。でも、だからこそ僕は、あなたに興味を持ったんだよ。
「ね、まだ僕のこと好きじゃないの?」
保健室から立ち去っていく彼の背中にこう訊ねた。すると彼は振り向いて、笑いながらこう言った。
「あなたのことなど、大嫌いです」
「あっそ」
それ、すっごく卑怯だよ。静かな保健室で、僕は欲しい何かにすがるように枕を抱きしめて再び眠りに付いた。
この話で榊原先輩の素顔が明らかになっていきますね。
夕日~のほうだと優しい副会長ですが、こっちじゃ腹黒いわ、なんか怖くもありますね。
あっちとのギャップあり過ぎなの嫌だとか……言わないでくださいね。
こっちがほんとの榊原良介です。
ていうか、保健室に何しに来たんだ良。